つなぎの英語 ~NY NY 10016~

旅するように生活したニューヨーク。このまちで使い慣れた英語表現を紹介しながら、「NY的なるもの」への熱い想いを綴ります。

ニューヨーク・スタイル「つなぎの英語」NO. 56

2006-05-21 21:56:14 | ニューヨーク
 今回はニューヨークで、なるほどこっちだとこうだ……と納得した表現をいくつかご紹介します。

●direction/directory

 ニューヨークの街中でよく道を聞かれました。ニューヨークにはいろんな人種がいますから、こっちが日本人だろうがなんだろうがお構いなし。なかには Could you show me the direction?「道順を教えてくれない?」と聞いてくる人もいます。この場合は簡単な地図を描いてあげるとか、相手が持っている地図を指でたどって教えることになります。direction は「行き方」ということになります。
 オフィスビルの案内は directory です。1階ロビーにテナントとして入っている会社のリストがアルファベット順 alphabetically で掲げてあり、これが directory です。エンパイアステートビルですとたしか1千社近い会社が入居しています。大会社ともなると役員の部屋もちゃんと名前付きで載っているのです。

●short notice

 I'm sorry for a short notice, I can't attend the party.「直前で申し訳ない、パーティに出席できません」。notice は「通知、お知らせ」で short notice は「直前のご連絡」。absence without notice は「無断欠席」、つまりは“ノーショー”ですね。without previous notice は「事前通告なしに」となります。Cancellation without previous notice? No way!「いきなりキャンセルだって? そりゃないよ!」

●fire station/police station/nuclear power station/TV station

 station はふつうは「駅」ですが「公益事業所」の意味も含んでいます。fire station「消防署」、police station「警察署」、nuclear power station「原子力発電所」などの例ですね。また TV station「テレビ局」とも言いますね。gas station「給油所」という言い方は日本でもおなじみです。

●job interview

 I feel nervous about a job interview of tomorrow.「明日の就職面接に緊張してるよ」。インタビューは、記者の取材だけではなく「面接」の意味もあり、job interview は「就職面接」になります。
 ついでにここで、アメリカの履歴書 resume(発音はレジュメイ。resume はリポートなどの摘要のことも言います)と日本の履歴書の違いをご紹介しておきましょう。

 アメリカには市販の履歴書はなく、自分でタイプアップします(手書きはあり得ません)。履歴書に年齢や性別の記載や、写真貼付の必要もありません。もちろん既婚未婚とか人種、宗教、家族、信条なども問われません。採用側がこれらの記載や顔写真を求めることは違法になります。多民族国家で人権を尊重するアメリカならではの、人種、性、年齢、信条差別への配慮です。
 resume には志望職種のほか、職歴・学歴を“新しいものから遡って”書きます。ほかにボランティアとか社会的活動の実績、仕事上のスキル(コンピュータ、語学、資格など)の記載がチェックポイントになります。最後に、reference「照会先」(前職や最終学歴校などへの信用照会用)を記入します。
 この resume に cover letter「応募趣旨」を添付して応募することになります。この cover letter で、自己紹介・自己PR、志望動機などをアピールするのです。書類選考の際、採用側はこの cover letter を重視して面接するかどうかを決定します。

 いかがですか? アメリカの履歴書は、本人の能力・ポテンシャル(潜在能力)にのみ焦点を当てて評価するわけです。日本の履歴書と比べるとはるかに実質的・合理的だと思いませんか。手書きの字がていねいかどうかとか、写真は正面向いて笑いすぎていないかどうかとか、現在のことは後にして過去の経歴から書かせる日本の履歴書……ビジネス文書を手書きする時代でもないのに、履歴書の最後の仕上げで書き損じてため息をついている応募者がお気の毒に思います。履歴書も“構造改革”が必要じゃないのかな?……




ニューヨーク・スタイル「つなぎの英語」NO. 55

2006-05-14 18:04:50 | ニューヨーク
 「つなぎの英語」は、間をつくる、あるいは間をもたせることで会話を生き生きさせようという英語表現。私たちの会話は、きっかけが、元気?と相手の近況を聞くことやお天気の話でつながっていくことがよくあります。挨拶代わりの話題ですね。答えるほうも気まじめに答えることもないわけで、適当にはぐらかしていいのです。

 以下、さしさわりのない会話がつながっていく例(ドンデン返しあり)。ニューヨーク公立図書館 New York Public Library の裏手に、夏季には野外無料映画会場にもなるブライアントパーク Bryant Park という芝のきれいな公園があります。お天気のいい初夏の昼下がり、一服している私にバックパックの若いかわいい白人女性が話しかけてきた、というミニストーリーをつくってみます。

 ときどきこうやって英語書き下ろしで創作するのもおもしろい。ちょっとした短編ができたりします。簡単な英語で十分、あなたもやってみませんか?(●=若い女性、○=私)

● Hi, how you doing?「ハーイ、どう?」
○ I'm doing fine, and you?「元気だよ、きみは?」
● Pretty well, thank you. Nice day, isn't it?「ありがと、しごく元気。いい天気ですね」
○ Yeah, it really is. That's why I feel fine today.「ほんとにいい天気。だから気分いいんだけど」
● Good for you! I love sunshine, too. It's warm.「いいわね! 私もお日様大好き。あったかいし」
○ It's rather hot today.「暑いくらいだけど」
● Hmmm, I enjoy to be here. Beautiful park!「フーム、ほんと心地いい。きれいな公園ね!」
○ It is beautiful. Are you a tourist?「きれいだね。きみ、旅行者?」
● Not really. I'm a highschool student from Yonkers.「ん~ん、でもないわ。私、ヨンカースの高校生なんです」(*Yonkers=近郊の郡)
○ Oh, yeah? So, you came to the city for fun?「あ、そう? じゃあ、街に遊びに来たの?」(the city=New York City。近郊から見たマンハッタンのこと。for fun=遊びで)
● Yes, and I got a trouble. I've my pocket picked ...「そうなんです。でもトラブっちゃってる。スリにあったの」(*pickpocket=スリ)
○ Oh my! That's too bad. Are you OK?「そりゃひどい。大丈夫かい?」
● Sir? I know I shouldn't do it, I have no way but to ask you to lend me $50 to return to my home.「サー(日本語訳不能)? こんなことお願いしてはいけないんですけど、ほかに方法がないんです。家に帰るだけの50ドル、お借りできませんか?」(*no way but to ...=……するしか方法がない)
○ But ... you'd be better go to the police.「で、でも……警察に行ったほうがいいよ」(*You'd=You would/You would be better ...=……したほうがいい)
● No, I can't do that because my parents don't know I'm in the city.「できないの。親に内緒だから」
○ Hummmm ...
● Here's my ID, you can check it. If you give me your business card, I'll send you back $50 as soon as I'm back.「私の学生証、見てください。名刺をいただけたら帰り次第 50ドルをお送りしますから」
○ Hmmmmmmm ...
● Please! Help me. I would be back to thank you if you want to see me again ...「お願い、助けて。もしなんでしたら、お礼を言わせてもらいにまた来ますから」

 さて、私はどうしたと思いますか?
 実はこの話、ひと頃ニューヨークの日本人駐在員がよくひっかかった寸借詐欺なのです。若いいたいけな女の子がみごとな演技力でこれをやるんですね。さりげなく楽しい会話をして気持ちが通ったあとで寸借の頼み、それが50ドルという微妙な額、しかもヒトのいい日本人駐在員を狙うところがミソです。当地での生活感覚では 50ドルは必ずしも小額でもないのですが、だまされたお金持ち日本人は50ドルくらいならまぁいいか、という感覚だったんですね。それに、名刺渡して連絡してね、とか、スケベ心も否定できなかったんじゃないでしょうか。

 私?……私はもちろん警察に相談しなさいと“補導”しました……ははは、信用しませんか? 困ったなぁ。実は 50ドルもの大金(キャッシュ)の持ち合わせは、もともと私にはなかったのでした(一般のニューヨーカーはだいたい30ドル以上の買い物とかはクレジットカードでしますから、キャッシュの手持ちはせいぜい40ドル程度までなんです。日本の観光客がニューヨークで札束を切るのをヨコで見ているとヒヤヒヤ、ハラハラものですよ)。




ニューヨーク・スタイル「つなぎの英語」NO. 54

2006-05-07 18:38:05 | ニューヨーク
 2回にわたって、私が英語を好きになったきっかけをお話ししました。中学時代、なぜかスウェーデンの女の子とペンフレンドになりました。少年雑誌のペンパル募集に応募したのです。でも、当時は、男の子は女の子を無視するのがカッコいいという時代でしたので、田舎の思春期の悪ガキどもにさんざんからかわれて続きませんでした。両親や兄弟は外国から手紙が来たというだけで、近所に自慢話してましたけど。

 いま私が中高生でしたら、E-Mail で世界中に友だちをつくってますね。楽しいでしょうね。この時代、子どもも大人も、外国の人とメル友になるといいと思います。思いもよらない国、町の人と交流して、いつかその人に会うために旅の準備をする……あるいはその人の日本旅行を待つ……胸が躍ります。もちろん、英語力アップに役立ちますし、日本を紹介しなければいけないでしょうから、日本についてもいろいろ勉強にもなるはずです。
 英語を学ぶこと、そして国際感覚というのは、日本を外国との相対的な視点から見る、つまり日本のしがらみからいったん離れて日本のことを考えることだと私は思っているんです。

 ついでですが、なぜニューヨークに憧れたかと言うと、私が育った町がニューヨークとおおよそ同緯度にあり、通った高台の中学校校庭から太平洋が望め、この海のずぅっと先にアメリカ大陸があってその東端に世界の中心都市ニューヨークがあることを知ったからでした。当時からヤンキースの噂も聞いてました(野球少年でした)。「ワ(ぼく)だば、ニューヨークさ行ぐ!」と子ども心に決意したことを覚えています。

●New York, New York

 ♪Start spreading the news ... フランク・シナトラやライザ・ミネリが歌う New York New York の出だしは、こう始まります。John Kander 作曲、Fred Ebb 作詞。このコンビはブロードウェイ・ミュージカルでも幾多のヒット曲があります。この歌で私が好きだった歌詞は、If I can make it there, I'd make it anywhere, it's up to you, New York New York. という部分です。「あそこで(ニューヨークで)でやっていけたら、世界中どこでもやっていけるさ、ニューヨークはそういう街……」。

●from rags to riches/rich & famous/celeb/beautiful people/people watching/super rich

 ニューヨークのメディア(新聞、テレビ、ラジオなど)でよく見聞きするフレーズをいくつか紹介してみましょう。ニューヨークは American Dream にもっとも近い街。メディアのトップを飾る言葉に、from rags to riches「赤貧から大金持ちへ」があります。rags はぼろ服のことで、一夜にして大金持ちに……そういうチャンスに満ちた都市がニューヨークです。いったん成功すると、rich & famous「金持ちで有名人」の仲間入り。

 こうした人々は、celeb (celebrity=セレブ=名士) ともてはやされます。有名レストランやナイトクラブはこうした客、beautiful people をお得意さんとすることで名声を高め、people watching(有名人の追っかけ)客を集めます。

 ではどういう分野で super rich「大富豪」が生まれるか……ニューヨークですとまずは Show Biz(ショービジネス)……ブロードウェイ・ミュージカル、パフォーマンス、映画・テレビ周辺、ファッション(デザイナー、モデル)、さらにアーティスト(芸術・商業・インテリアデザイナー、ミュージシャンなど)、もちろん株投資家、エンジェル(ブロードウェイ・ミュージカルへの投資家)、ニュービジネス起業家、外食・ホテル起業家、不動産開発業者から弁護士(有名訴訟担当)などなど……やはり一匹狼的な人たちに成功のチャンスがありそう。ニューヨークでは大企業に勤めている人は肩身が狭い、と聞きました。

●Resilient/Champagne wishes & Cavia dreams

 9.11テロ事件は、私にとっても深い傷となりました。ワールドトレードセンターのツインビルが、ニューヨークのスカイラインから消えてしまったことがどうしても信じられません。私の心にはしっかりとニューヨークの残像として残っています。
 しかし、ニューヨークは決してめげないでしょうね。「めげない」という英語に、resilient(発音はリズィリエント)があります。9.11のころ、現地のリポーターはさかんにこの単語を使っていました。私の好きなことばです。

 また、この街には常に Champagne wishes & Cavia dreams という言葉があります。「シャンペン願望とキャビアへの夢」……成金願望ですけど、まさに成金を夢とし誇りとするところがニューヨークらしい。そういうチャンスが誰にも公平に与えられているとニューヨーカーは信じています。だから、他人の成功を一緒に喜べるみたいです(ニューヨークの悲運もまた、彼らはともに深く悲しんだのでしょう)。
 そういう街の、空気と気持ちの張りが、私にも心地よかったのです。