MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2418 「中年独身大国」日本

2023年06月02日 | 社会・経済

 直近(2020年)の国勢調査によれば、日本の15歳以上における独身人口は約4930万人とのこと。大人の人口の実に約半数が独身暮らしをしているという日本社会の現状が見て取れます。人口減少・少子化の原因が若者の晩婚化・未婚化にあると指摘される昨今ですが、この実態を見る限り、日本の独身大国化は確実に進んでいるようです。

 コラムニストの荒川和久氏は、4月25日のYahoo newsへの寄稿(「日本はすでに中年独身大国であり、100年前の大正時代より母親の数が減った」)において、「人口減少は最近の少子化のせいだと勘違いしている人は多いが、こんなことは一朝一夕に起こるものではない」と話しています。

 そもそも、生涯未婚率とは50歳時点での未婚もの割合であって、未婚率が上がり始めた1990年に50歳だった対象者が結婚最頻年齢値である20代後半だったのは、1970年代のこと。まさに、第二次ベビーブームの真っ最中、既に今の未婚化の芽は作られていたと氏は言います。

 実際、バブル経済が膨らみ始め、恋愛至上主義(の到来)と言われた1985年に25歳だった独身男性が、2010年に史上はじめて生涯未婚率20%を突破した層(今の丁度還暦世代)とのこと。そして、その後の世代も順調に未婚率を伸ばしているということです。

 「独身人口が増えている」というと勘違いしやすいのだが、若い独身男女の人口が増えているのではない。もはや、若い独身者より中年独身の方が人口で上回っていると氏は説明しています。独身大国というが、日本は既に「中年独身大国」となっているわけで、決して「最近の若いのは結婚もしないのか」という(上から目線の)話ではないというのが氏の認識です。

 (残念な言い方だが)これはかつて若者だった人たちが結婚しなかった(できなかった)がゆえの「中年独身大国」化であり、やがて間違いなくこの国は「老人独身大国」へと移行していく。日本の独身人口の長期推移を見れば、それは明らかだということです。

 20-34歳のいわゆる「若者」の独身人口がもっとも多かったのは、1990~2005年あたりのこと。彼らが齢を重ねるにつれ、2010年ごろには若者より中年独身の方が多くなった。そして、2020年には若者独身人口と65歳以上の高齢独身人口が、ほぼ同じになっていると氏はしています。

 このペースで推移すれば、2030年頃には中年独身人口を老人独身人口が追い抜くことは確実で、(因みに)その大部分を占めるのは、かつて既婚者であった夫と死別した高齢女性だということです。

 一方、その間に若者独身人口はどんどん減り続ける。出生数が減り続けているのだから当然で、今更出生数云々いったところで既に手の打ちようがない。人口の構造変化は何十年もかかるのものだと氏は指摘しています。

 思い返せば、若者の独身人口がマックスだったのは、20年前の2000年頃。就職氷河期で結婚どころか仕事を見つけるのも大変だった時期で、そうした雇用環境の影響が大きかった点は否めないということです。しかし、「たられば」で2000年当時に何かやっていたら、今の未婚化や少子化は起きなかったか?と言えば状況はそんなに簡単ではないと氏は言います。

 実際、日本でもっとも婚姻が多かった1970年代前半の直後から、若者は既に結婚しなくなり始めていた。1990年代後半から2000年代前半にかけて、理論上は第二次ベビーブームで生まれた子どもたちが結婚・出産をする第三次ベビーブームが起きるはずだったということです。

 しかし、結果としてそれは到来しなかった。そこで、独身人口だけが大きく膨らむ山が造られ、この山が20年を経て、今の「中年独身人口」増につながっているというのが氏の解説するところです。

 因みに、氏によれば、若者の恋愛率がもっとも高かったのは2000-2005年の時期とのこと。若い独身人口が最も多かったこの頃、若者は恋愛をまさに謳歌していたと氏はこの論考の最後に指摘しています。

 さて、最も恋愛率が高かった世代が、(結果)もっとも未婚率が高い世代になるとはなんという皮肉でしょうか。恋愛と結婚はストレートに結びつくものではない。さらに言えば、過去の様々な恋愛の経験が結婚の足を引っ張ることすらあるのだろうと考える荒川氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。



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