MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2309 日本の給与水準はなぜ低下してきたのか

2022年12月06日 | 社会・経済

 9月の毎月勤労統計調査(速報値:従業員5人以上)によれば、物価変動を考慮した雇用者1人当たりの実質賃金は前年同月比1.3%減少。6カ月連続のマイナスで、原油高や円安で加速する物価上昇に賃金の伸びが追いついていない状況が見て取れます。

 持ち家の家賃換算分を除く総合指数上昇率は既に3.5%に達しており、足元の名目賃金は緩やかに増えているもののそれ以上にインフレが進んでいるため、実質賃金が減る構図が見えてきます。

 因みに、給与額を就業形態別にみると、正社員など一般労働者は2.4%増、パートタイム労働者は3.4%増と、パート、アルバイトの賃金の伸びが立ち上がってきていることが判ります。また、経済活動の再開とともに残業代などの所定外給与は6.7%増と大きく伸びており、1人当たりの総実労働時間は1.3%増の136.9時間となったとされています。

 「伸び悩み」と言われながらも、人手不足と物価高に押される形でようやく動き出した観のある日本の賃金ですが、他人の給料袋の中身まではなかなかわからないもの。高齢者や女性の雇用者が増え、働き方も(いろいろと)多様化する中で、低いと言われる日本人の給料は実際どのくらいなのか。

 11月15日の経済情報サイト「FINANCIAL FIELD」に『日本の給与水準は「変わってない」? 年収中央値の推移は?』と題する記事が掲載されていたので参考までに紹介しておきたいと思います。

 厚生労働省が3年に一度実施する「国民生活基礎調査」。この調査では、国民の所得金額についても調査され、年収の平均値と中央値のデータが公表されているということです。

 2021年に実施された同調査のデータによれば、所得金額の平均値は564万3000円。これに対し、年収の中央値は440万円と、平均値と中央値の間に100万円程度の誤差があることが判ると記事はしています。

 その差が意味するのは、やはり一部の高額所得者の存在によって平均値が引き上げられているということ。年収中央値を一般的な水準と考えると、2021年における日本国民の給与水準はおよそ440万円と見てよいということです。

 それでは、1995年に始まった同調査を振り返って、年収中央値の3年ごとの推移を見ていくこととする。結果、驚くことに、1995年の年収中央値は545万円、1998年は536万円、2001年は500万円、2004年は476万円、2007年は451万円、2010年は438万円、2013年は432万円、2016年は427万円、2019年は437万円と、この26年間で年収中央値は100万円ほど少なくなっていることがわかると記事はしています。

 もちろん、ここには物価の変動などは反映されておらず、この給与水準の変化が国民の生活にどこまで直接的な影響を与えているのかまでは分からない。しかし、日本の給与水準が1990年代に比べて変わっていないどころか、むしろ大幅に下がっていることは確かだというのが記事の指摘するところです。

 年収中央値のデータを見ると、日本の給与水準は経済低迷の影響で1990年代以降、低下傾向が続いている。特に2000年代の最初は下がり幅が顕著で、この時代に大幅に給与水準が停滞していることが分かりると記事はしています。

 一方、2019年、2021年はわずかながら金額が上向いているのも事実であり、新型コロナウイルス流行による経済停滞を乗り越えて年収中央値がどう推移するのか、今後の動きから目が離せない状況だということです。

 さて、日本の給与水準の低迷が指摘されるようになって久しい昨今ですが、落ち着いて考えれば、給料の高かった団塊の世代の定年退職や引退が始まった2000年前後から平均給与が落ち始めているのは、(見方を考えれば)当たり前のこと。実際、一時は(窓際も含めて)役付きのおじさんばかりだったオフィスも、今では(給料の安い)若手が大きく幅を利かせています。

 さらに、退職後の第2・第3の職場としてのんびり働くシニアや子育てが終わって再就職した派遣の女性なども増え、昔のように(一家の大黒柱を背負って)皆がみっちり、そしてガツガツと働く時代ではなくってきているのも事実です。

 ある意味、社会の転換点は労働・雇用の転換点。そして、それぞれの職場の転換点でもあるということを、しっかり受け止める必要がありそうです。

 なぜ、サラリーマンの給料(の平均値・中央値)は下がっているのか。従来のままの統計数字の比較だけでは見えてこないものもあるのではないかと、改めて感じている次第です。

 



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