MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2017 突然ですが、あなたは占いを信じますか?

2021年11月15日 | テレビ番組


 今、巷では「突占(とつうら)」が話題になっているという話を聞きました。

 「突占」とは、フジテレビ系列の地上波で放送されている『突然ですが占ってもいいですか?』という、占いをテーマとしたバラエティ番組のこと。その世界では有名な占い師の面々が、街行く人に突然占いを持ちかけたり、芸能人の過去をズバズバと言い当てたりして、視聴者はそのリアクションを楽しむという(これまでになかった)企画です。

 居酒屋で占い師に真実を言い当てられて泣き出す人がいたり、有名芸能人が「嘘、当たってる!」と仰天する反応を見ていると、たまにチャンネルを合わせるだけの(占いに興味のない)私のような人間でさえ、思わず引き込まれてしまう時があります。

 夜10時からという遅い時間帯にもかかわらず世帯視聴率は好調で、この夏のオリンピックの開催期間中でも7%台をキープしていたのは立派と言えば立派です。特にこの番組に関しては、F1,F2と呼ばれる比較的若い年代の女性の視聴者が(固定層として)付いているということですので、そうしたベースが安定した視聴率につながっているのかもしれません。

 もっとも、このようなテレビ番組ばかりでなく、ブログやYouTubeといったネットコンテンツから占いやスピリチュアル界のスターが生まれるなど、スピリチュアルビジネスは、アンダーコロナの一大成長産業だという指摘もあると聞きます。

 誰もがスマホを持つようになり、「今日のお天気」のように「今日の運勢」を覗く人が増えている。毎日のラッキーカラーや、ラッキーアイテムを気にする若い女性も多いということです。

 こうした「占いブーム」の背景には、昨今の社会情勢などの影響もあるのでしょう。新型コロナの感染拡大による自粛生活の長期化が人々からコミュニケーションの機会を奪い、心理状態を内省的にさせている可能性もあります。

 将来の見えない不透明な社会状況が人の心を不安にさせ、すがるものへのニーズが高まっているという状況もあるでしょう。(「親ガチャ」などという言葉に代表される)所得格差の拡大と階層の固定化なども、運命論としての「占い」の普及に一役買っているかもしれません。

 いずれにしても、社会の不安が「人知を超えた存在」を誘うのは世の常というもの。運の良し悪しともかくとして、経験を積んだ第三者のアドヴァイスは、(それなりに)ポジティブに受け止めたいと思うころです。

 昨今のこうした占いブームについて、10月7日のYahoo newsに博報堂「キャリジョ研」代表の松井博代氏が、「占いブームから垣間見える 若年女性たちの自己分析欲求」と題するレポートを寄せているので、参考までに(この機会に)紹介しておきたいと思います。

 データで見る限り、「占い・おみくじを信じる」人はここ6年くらいでずっと増加傾向にあると、松井氏はこのレポートに記しています。

 中でも20代女性は常にスコアが高く、2018年から2020年での高まりが他の性別・年代の方よりも顕著となっている。ここには、特に何か理由があるのではないかと氏はしています。

 氏によれば、女性の20代は、ライフコースや働き方が分岐しやすいという特徴があるということです。確かに多くの若い女性にとって、20代は、就職、結婚、出産など、大きく生活の様子が変わる(怒涛のような)時期と言えるでしょう。

 この時期は、以前から付き合いのある友達でも環境や状況が変わることで相談しづらくなってくることも多い。(そんな彼女たちが)新たな相談相手を求める気持ちが高まりやすい年代でもあるということです。

 そうした中、近年増えてきた「前向きに寄り添い、自分を肯定してくれる占い師」は、相談相手が身近にいない彼女たちにとって、(ある意味)心強い存在に映るのかもしれないと松井氏は指摘しています。

 SNSは、20代女性の目を、身近なコミュニティから世界へと向けさせた。比較や参考の対象が友達だけでなく、インフルエンサーや芸能人、海外セレブまで広がっている。こうした「見ている世界」の広がりとともに、「みんなと同じようにしていても同じにならない」という個性や多様性に気づく「超俯瞰思考」が、2010年代後半から若者中心に起こっているというのが氏の認識です。

 ありのままの自分でいてよい、そうありたいと思う反面、そもそも「ありのままの自分とは何か?」ということについての疑問も生まれる。そして、そこから、自分をより知りたいという「自己分析欲求」が出てきているように思うと、氏はこのレポートに綴っています。

 今から少し前、女性たちがパーソナルカラーや骨格メイクなどを学びに行き、きちんとお金をかけて自分の特徴を客観的に把握し、うまく活かす方法を知ろうとする事象が見られた。占いについても、そうした自己分析欲求に合致しているところを感じるというのが氏の見解です。

 もともと、占いにはその人の特徴を分類した「基本性格」というものがある。近年人気のある占いは、基本的にこの性格をベースとしてタイプごとの運勢を示してくれるということです。

 このため、(占いは)「自分のことを分かってくれた上で語りかけてくれている」と感じやすく、こうした“他者から示された自分”に触れることは自分を顧みる機会になる。いわゆる「メタ認知」と言うのでしょうか、こうした自分にきちんと向き合えば、新たな自分を知るきかっけなるというのが氏の指摘するところです。

 実際、定期的に占いに通っているような占い愛好者の中には、そういった目的で使っている人も多くいるようだと松井氏は話しています。特に、最近人気の占いでは、「今と未来」だけでなく、子どものころのターニングポイントまで戻って、長いスパンで人生を振り返得させてくれるものが多いということです。

 思えば、時間と運命に流されていくだけの人生でよければ、占いは必要ありません。そうした流れに抗うためにも、まずは自分来し方をよく知り、行く末を案じていくことが重要だということでしょう。

 人生を前向きにとらえる人こそが、占いに素直に向き合える。占いの意味や価値を、自分の原点にまで立ち戻り、自己の振り返りや把握に納得感を高めてくれる点に見出すこのレポートにおける松井氏の指摘を、私も大変興味深く読んだところです。



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