MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2354 鬱陶しいけど愛すべき人たち

2023年02月02日 | 日記・エッセイ・コラム

 1月5日の大手新聞各紙に掲載されていた、黒のボンテージ・ファッションにピンヒール姿の女優、中尾ミエのシャープに切り取られた写真を思わず二度見してしまったのは、(きっと)私だけではないでしょう。

 これは、出版社「宝島社」が不定期に掲出している紙面買い取りの企業広告。広告内のコピーには、「かつてこんなにも疎まれながら、たくましく生きてきた世代があっただろうか。団塊は、他の世代にとって永遠のヒール=悪役だ。彼らは年を重ねてなお、他人におもねることはしない。いまだに野心でギラギラしながら、高齢化という時代の主役を張っている。」と記されています。

 思えば、これまで戦後日本の自由で新しい文化や経済、そして世論を引っ張ってきた「団塊の世代」も、いよいよ今年は(その大半が)75歳を超え後期高齢者となります。日本の本格的な超高齢社会の訪れを前に、その主役たる「団塊の世代」に(若干の皮肉を込めて)エールを送るその心意気と同社らしい(とんがった)表現に、思わず「やられたな」と苦笑いをしたところです。

 1月6日の日経新聞の巻頭コラム「春秋」は、前日の同誌にも掲載されたこの広告の内容を早速取り上げ、老け込むことなく時代を引っ張るタフな彼ら(団塊の世代)の背中をたたえています。

 確かに、団塊は最後までヒールが似合う。ヒールとは悪役だ。1947年から3年間のベビーブーム期に生まれた「団塊の世代」は2年後には全員75歳以上の後期高齢者になるそうだ。(それも)憎まれっ子のようにしぶとく元気で…コラムはその冒頭でこう切り出しています。

 団塊世代の評論家・加藤典洋氏は、常に多数派を占めてきた団塊の世代の成長に合わせ社会の側が変化していく様子に、「自分の中に何かいわれのない万能感を植えつけられてしまった」と話しているということです。

 そうした彼らは、良く言えば「野心的」。自己主張がはっきりしており、年下の世代が皮肉と愛情を込めて言えば「ヒール」と呼ぶのも(ある意味)言い得て妙だとコラムは続けます。

 「生意気、野放図」とは(今は亡き)加藤氏の世代評だが、驚くことに氏と同い年に生まれた日本人は実に260万人以上もいる。一方、昨年(2022年)の出生数はその3分の一を大きく割り込むおよそ80万人と、少子高齢化は、想定外のペースで進んでいるということです。

 そうした中、岸田文雄首相は少子化問題を巡り「異次元の対策に挑戦する」と表明した。団塊世代の社会保障費が膨らむ中、どんな施策を打ち出すのか注目されているところだが、首相には、(例え)誰かに悪役と思われたとしても、「国難に立ち向かう覚悟」を語ってほしいと、筆者はこの論考を結んでいます。

 確かに、それぞれの時代を謳歌し、(結果として)日本の現状を作ってきた団塊の世代に、「逃げ得」が許されるはずはないでしょう。彼らには、最後まで毅然とした姿でこの国の行く末を案じ、若い世代を育てていく責任があることを忘れてほしくはないとも思います。

 「団塊よ、どうか死ぬまで突っぱって生き切ってくれ。他の世代を挑発し生きてくれ。表舞台から去るのはまだ早い。ナースコールの前にカーテンコールだ。あなたたちの生き様に嫉妬をこめて、盛大な拍手をおくらせてほしい」と記されたこの企業広告に、当事者たる彼らが(実際)どういう思いを抱くのか。私もコラムを読んで「ぜひ聞いてみたい」と感じたところです。

 



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