MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯753 ドローン戦争

2017年03月20日 | ニュース


 ジョージ・ルーカスが描いたスターウォーズの世界が示すように、一昔前まで、未来の戦いと言えば「ロケット」と「ロボット」、そして「光線銃」と相場は決まっていました。

 ウルトラマンもスーパージェッターも、マジンガーZだって、巨大な怪獣や地球侵略をもくろむ宇宙人とそうした武器で戦ってきたのです。

 しかし、当時考えていた「近未来」が既に現実のものとなっている現在、戦闘の様子は想像とはずいぶん違ったものになろうとしているのかもしれません。

 米国では、ジェネラル・アトミックス社製の無人航空機RQ-1 プレデターが実用化され、約20年前の1995年からボスニア、イラク、アフガニスタンなどにおける実戦で運用されています。

 翼長14.8m、時速217kmで巡行する性能を持つプレデターは、予めプログラミングされた経路に従い自動操縦で飛行し、作戦地域に到着した後は衛星ネットワークなどを通してパイロットと2人のセンサー員が地上誘導ステーションからの遠隔操作で作戦を遂行します。

 プレデターばかりでなく、武装した無人航空機(ドローン)が世界で数多く実際の作戦に投入されており、対地攻撃、対人攻撃ばかりでなく、有人機との本格的な空中戦などにも用いられているということです。

 実際、アメリカ軍がドローンによる攻撃を開始して以降、殺害した敵兵の人数は2013年2月時点で(実に)約4,700人に達すると報告されています。こうした実績を踏まえ、アメリカ空軍の計画では2023年までに、すべての攻撃機のうち3分の1をドローンに置き換えるとしています。

 一方、ドローンによる攻撃の問題点としては、誤爆や巻き添えによる民間人の犠牲者が多いことが挙げられています。これはドローン操縦員の誤認や地上部隊の誤報、搭載するミサイルの威力が大きすぎることなどが原因とされ、現在ではより小型で精密なミサイルの開発が急がれているということです。

 さらに、このようなドローンの登場により、現実の戦闘の在り方もずいぶんと変わってきているようです。

 アメリカ軍では、ドローンのパイロットのうち、既に7人に1人は民間人(民間軍事会社の社員)だということです。衛星経由でアメリカから遠隔操作が可能であるため、彼らパイロットは戦地に派遣されることもなく、1日の作戦が終われば自宅近くの操縦ブースからそのまま自宅に帰ることも可能です。

 こうしたことから、米国内には、「ミサイルを発射して敵を殺す戦場」と「息子のサッカーの試合を見に行く日常」を毎日行き来する彼らがメンタルの限界を超え、大きな精神的ストレスとPTSDを抱えることへの懸念を指摘する向きもあるようです。

 そのような中、1月10日の毎日新聞は、米国防総省がさらに画期的な超小型ドローン兵器の開発、実戦配備に向けた実験に成功したとの記事を掲載しています。

 米国防総省の資料によれは、このドローンは全長約16センチメートルの超小型。同時に提供されたカリフォルニア州での実験の際の動画には、FA18戦闘攻撃機から投下された103機のドローンが編隊を組み整然と飛行する姿が映し出されています。

 米国空軍は、当面、敵地における低空での偵察飛行などにこうした新型ドローン1000機を投入する計画を立てており、カーター国防長官は「敵に一歩先んじる最先端の技術革新だ」とその性能を高く評価しているということです。

 記事によれば、この機体はマサチューセッツ工科大学が2013年に開発したドローンを軍用に改良したもので、全長約16センチ、翼幅約30センチ、重量は290グラム。しかも最高速度は時速111キロに達するということです。

 航空機から投下するだけではなく、海上艦船や地上からの離陸も可能で、オペレーターが指示した目的地に向けドローン自身が最適の解答を見つけて飛行。ドローン同士が相互に連絡を取り合う能力があるため、編隊を組んでの飛行も可能になっているということです。

 さて、もともと「drone(ドローン)」とは、と英語で雄のハチや、ハチが「ブーン」と鳴らす羽音を意味する言葉です。

 ここまで小さくなったドローンが、AIや太陽電池を身に纏い(あたかも殺人蜂のように)群れを成して敵対する国々を時速100キロ以上の高速で飛び回り、自分自身の判断で次々と人々に襲い掛かるような現実がすぐそこまで迫っているとすれば、光線銃や人型のロボットによる戦闘の方がどれだけ人間的であることかと、私もこの記事から改めて考えさせられたところです。




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