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小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(95)

2009-03-14 01:17:42 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(95)

「そうでしたか、でも此れからはご主人と赤ちゃんと佐々木さんの分まで幸せになって下さい。きっと佐々木さんも祝ってくれていますよ」。
美保は頷くと目頭を濡らしていた。そして午後三時過ぎには豊科インターを降りて、四時頃には自宅へ着いた。
もうその頃には雨も上がって青空が広がり、太陽が顔を出していた。
すると両親が飛び出して来た、そして父は立ち止まって驚いていた。
「お帰り、おい望月か?・・・なんだ京平、知っていたのか」。
「そうじゃないよ、偶然乗せて貰ったら父さんの同級生だって言うからさ、それに聞いて、美保の事を知っているんだ」。

「・・・ああ、そうか。望月は京都でもタクシー転がしていたからな。そうか、内の嫁さん知っていたのか」。
「うん、京都の会社の隣が立花電子でさ。良く使って貰っていたから私も話を聞いて驚いていた所だよ。それに京平さんと結婚したなんてさ。車の中でも世間は狭いって話ししていたんだ」。
「美保さんお帰りなさい。どうでした御両親は。お元気だったの」。
「はい、義母さんただ今帰りました。四日も留守して済みません」。
「ううん、もっとゆっくりして来たら良かったのに。望月さん、息子夫婦を乗せて来て頂いて済みません。さあどうぞ」。
そして美保は部屋に戻ると料金を封筒に入れて持って来た。そして昔のお礼を込めて十万円を包んで渡した。
「お嬢さん、いや奥さん、此れでは頂き過ぎです。半分で結構です」。
「ううん、少ないですけど昔お世話になったお礼も。ですから収めて下さい。ねえ貴方」。

「うん、美保の気持ちですから収めてやって下さい」。
「そうですか、では遠慮なく頂きます。しかし驚きましたよ、まさか紺野の息子さん夫婦を乗せるなんて、それも奥さんが立花社長のお嬢さんだなんてね。でも良く社長が許してくれましたね」。
「うん。それには色々あったの。去年の暮れに義父さんが中に入ってくれて。今は凄く良い雰囲気になったんです」。
「そうでしたか、でも此れで紺野家も万々歳だね、後継者が出来た、それに孫までとは欲張りじゅないか紺野、奥さん」。
「まあな、それより望月の所はどうなんだ?・・・」
「まあ、息子や娘は勝手な事しているよ。今は家内と二人でのんびりやっているさ。今日は京平さん達に稼がせて頂いたから、早めに締めて家内に教えてやるか」。そして望月は夕食を一緒に済ませると東京へ帰って行った。
美保は宅配便で先に送った土産を整理すると隣近所や親戚に届けに出掛けた。
三月も終わり、山々の雪も山頂や日陰を残して消えつつあり、山裾から深い緑に覆われていた、そして暖かい日々つづいて松本にも桜の季節が訪れた。
そして松本城や城山の桜もほころび、高遠の桜も満開の季節を迎えていた。
そんな桜を見物に大勢の花見客や観光客で賑わっていた。
そして各小中高校にも新入生が真新しい制服やランドセルを背負った子供達が元気な姿で当下校する季節になった。
そして四月も半ばも過ぎた十七日。例によって三河昇が不意に遊びに来た。
京平は美保を連れて午前中の定期検診に行って帰ると見覚えのある品川ナンバーの車が駐車場に止まっているのだった。

「三河さん、また黙って来て驚かせるつもりだったのね」。
美保はすぐに気付いていた。そして裏口からそっと事務所に入ると案の定、三河が両親と話していた。
美保に気付いた義父に、「シ~ッ」と指を立ててそっと近付いた。
「ワッ・・・、アッハハハハ。いらっしゃい三河さん。驚いたでしょう」。
三河は椅子を転がして驚いた。
「アッハハハ・・・全く奥さんは。脅かさないで下さいよ、もう年なんですから。お邪魔しています、どうです、順調ですか」。
「はい、え~っなあに、髭なんか延ばしちゃって。貫禄あるねその方が」。
「エッヘン、なんてね。今度少し出世しましてね、本庁刑事局長補佐に抜擢されまして、それでお二人にご報告に来たんです」。
「凄いじゃん、それはお目出とうございます。刑事局長って言ったら刑事の一番偉い人なんでしょう。まさか三河さんってキャリア」。
「まあ世間ではそう言う言い方もします。でも私はその補佐です。でも凄い出世です。此れも先日お二人が通報してくれた犯人の目撃情報のお陰です。
ほらっ、殺し屋の写真をお見せして翌日の通報です。今もお父さんにその事を話していたんです。結局いままでの殺しは総て自分がやった事たと自供しましてね。三日前に拘置所で自殺しました」。
NO-95-32

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(94)

2009-03-06 23:08:23 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(94)

「うん、そうか。じゃああの六人はお前の親父の分まで被害者達に返していたのか。だったら供養にもなるから深入りしない程度にな」。
「はい、そうします。また詳しい事が分かったらお知らせします。くつろいでいる所を済みませんでした」。
京平はその電話で思っていた以上に真田貴明と言う男の優しさを感じていた。電話を切ると美保と腕を組んで歩きながら話していた。美保は足元を確かめるように一歩また一歩と歩いていた。
「そうだったの、そんな家庭だったの山下って人。それで真田さん親子の面倒を見るって言うの」。
「うん、何所まで見られるのか分からないけどね。真田の奴、自分の子供の頃の境遇と重なっているんだろう。悪い事じゃないから見守っていてやろう」。
「うん、私達は幸せね」。美保はギュッと京平の手を握った。
こうして二人はその日もゆっくり身体を休め、京都の春を満喫していた。
そして翌日、二人は両親が支度してくれた沢山の土産を下げて京都十一時十七分発、のぞみ15号に乗り込んだ。
父明雄は会社を半日休み、母もまた店を抜けて見送りに来ていた。
車窓には両親が張り付くように立ち、駅員に注意されていた。そして新幹線が走り出すまで手を降っていた。そんな両親の姿が見えなくなっても、いつまでもホームを見詰めている美保だった。

「なんか変ね、また直ぐに会えるのにお父さんったら」。そんな事をポロッと口にした美保の目にも涙が滲んでいた。
そして母から渡された手作りの特製弁当を開けると京平に渡し、二人で美味しそうにつついていた。
そして車内を見回して楽しそうなカップルがいると「夫婦かな、それとも恋人同士かな」と美保はクイズでもするかのように京平に聞いては遊んでいた
そんなこんなで午後一過ぎには東京へ着いた。
東京は小雨交じりの寒い風が二人を迎えた。
二人はタクシー乗り場に行くと大勢の客が並んでいた。すると、前から二人目のおじさんが美保を見ていた。

「おいで」と言うように手をかざすのだった。美保はそっと歩み寄った。
「先にどうぞ、寒いから身体を冷やすと赤ちゃんに悪いからね」。
「でも、それでは皆さんに申し訳ありませんから」。と美保は遠慮して答えると。「そうして貰いなさい」後ろから声を掛けられた。二人は言葉に甘えて礼を言うと、先頭の女性までが譲ってくれた。
京平は美保に傘を持たせるとタクシー待ちしている皆んなに向かって頭を下げた。「有り難うございます。甘えさせて頂ます」。
美保もまた何度も何度も頭を下げて礼を言うと入って来たタクシーに乗り込んだ。そして皆んなに頭を下げ、タクシーは走り出した。
「有り難うございます。どちらまでお送りししょう」。と、帽子から白髪交じりの髪が目立つ運転手だった。
運転手名を見ると望月康雄と書かれていた。
「貸しきりでお願いします。松本の先の白馬までお願いします」。
「えっ、はい。有り難うございます。私も出身は白馬なんです、奇遇ですね、お客さん白馬はどちらでしょう」。
「ええ、ペンション・ボンフルールって知っていますか」?
「はい、紺野良平さんのペンションですね。よ~く知っていますよ。ご旅行ですか」。

「えっ、知っているんですか。実家です、僕はその良平の息子と妻です。小父さん父をご存じなんですか」。
「そうでしたか。お父さんとは高校の同級生です。そうですか、息子さん。じゃあ京平さんですね」。
「はい、なんか驚きです。今日はついている、さっきもタクシーの順番を妻が妊娠しているからって譲って頂けました。今度は父と同級生のタクシーに乗れるなんて嬉しい日です」。
「ええ、まだ東京も捨てたもんじゃないですね。お父さんとは昔は良く遊びましたよ。そうだ、去年会った時は息子は静岡へ転勤になったと聞いたんですが、結婚されて家に入ったんですね」。
「はい。そうそう、改めて紹介します。妻の美保です。今日は妻の実家へ行って来た帰りなんです」。
美保は偶然の出会いに戸惑いながら頭を下げた。そして途中のLPスタンドに寄って燃料を充填して高速に入った。
取り留めのない話に車内は盛り上がり、高井戸から中央自動車道に入った。

「奥さんは京都ですね、どうも発音が京都らしい」。
「はい、左京区の田中です。やっぱり分かります?・・・」
「はい。左京区ですか、祇園が近くて情緒ある町です。私も十年前まではMM観光にいましたのでね。良く知っていますよ」。
「えっ、じゃあ下京区の堀川通り、父の会社の近くですね」。
「そうですか、奥さんのお父さんの会社は何と言う会社です」。
「はい、以前は立花精密機器でしたけど今は立花電子です」。
「ああ、知っていますよ。そうでしたか、立花電子の社長のお嬢さんでしたか。じゃあお嬢さんも私のタクシーに乗られていますよ、
私は立花社長のお抱え運転手のような物でしたから。お宅は田中の公園の前の洋風のお屋敷でしょう、あの頃はまだ小学生だったですかね。良くお茶のお稽古にタクシーで祇園へ行きましたよね」。
「え~っ、じゃああの八つ橋のおじさん!・・・そうですか?・・・」
「はい、その八ツ橋のおじさんです。そう、奇麗になって、京平さんと結婚されたんですか。世間は狭いですね」。

それは偶然としても余りにも偶然過ぎて美保も京平も鳥肌が立つ思いだった。そして運転手の望月もまた懐かしそうにルームミラーから美保の顔を時折眺めていた。
そして美保は望月が名瀬八ツ橋のおじさんなのか、その由来を京平に説明していた。
「おじさん、でも今はもう八ツ橋は卒業したわよ」。
「そうですか、好きで良く買ってあげましたよね。その食べっぷりがまた良くてね。買ってあげても気持ちが良かった」。
「まあっ小父さんったら。その節は本当にお世話になりました」。
「いいえ。所でお嬢さん、佐々木さんの事お気の毒でしたね、あんなに仲良くお茶を習っていたのに。まるで姉妹のようでした。私も東京に来ていましてね、ニュースを聞いて驚きましたよ」。
「うん、今日は主人と友世のお墓参りに行って報告してきたんです。結婚した事と赤ちゃんが出来たことを」。NO-94-30



小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(93)

2009-03-01 03:52:48 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(93)

「美保、元気な孫を抱かせてくれよ」。
「うん、でもお父さんもお母さんも若いお爺さんとお婆さんになるんだよ。少し可哀相だけどいいの?・・・」
「そんなのいいさ、なあ母さん」。
「へえ、若いお婆はん大いに結構へ。それより女の子、それとも男の子。もう分かっていはるんやろ」すると美保は京平の目を見た。すると京平は頷いた。
「じゃあ教えてあげようかな。両方」。
「えっ、両方。両方ってどう言う事なんへ。・・美保、まさか」!
「うん、双子なの。男の子と女の子だって。先生は心配ないって」。
「美保、そりゃ凄い。どうして黙っていたんだ、早く教えてくれればいいのに。全く、一度に二人の孫が生まれるのか」。
「うん、病院でね、赤ちゃんの映像を見せて貰ったら、女の子とハッキリとオチンチンが写るんだよ」。
「まあ美保ったら。良かったわね。じゃあ白馬のご両親も喜んでくれはったでしょ」。
「うん、もう大騒ぎ。早くお父さん達に知らせなさいって、でも少し焦らしてやろうかなって思ったから、ヘヘ、ごめんなさい」。
そんなこんなで夜も過ぎるのも忘れて親子は子供の事や名前の事で話は盛り上がった。

そして十一時になると両親は休むように勧めた。二人は先に風呂に入った。美保の大きくなった腹を労るようにそっと身体を洗っていた。
そして黒ずんだ乳頭にそっと唇を寄せて愛撫した。美保は唇を噛むと声を圧し殺して京平の頭を胸に押し付けた。
そして妻として夫を愛し、二人は愛の交換をすると風呂を出た。
そして両親に「お休みなさい」と声を掛けると自分の部屋に戻り、鏡の前に座ると寝化粧をしてベットに入った。
美保は京平の胸に抱かれ、寝息を漏らしていた。
そんな寝顔を見ながら京平は出会った頃の事を思い返していた。
あの汽車に乗り遅れても先の汽車でも自分は美保に出遭う事はなかった。
なんと言う縁なんだろうか。今思うと何から何まで目に見えない運命的なレールが敷かれていたのかと、そんな気がしていた。そして幸せな今に感謝している京平だった。

そして翌朝、晴れた暖かい朝だった。朝食を済ませた父を仕事に送り出すと母美代子は二人に留守を任せるとデパートの店へと出掛けて行った。
二人は戸締まりをすると散歩に出た。美保の母校である京大のキャンパスに入って四年間、色々な人と出会い別れたキャンパスのベンチに掛けて陽光うららかな陽溜まりに美保は学屋を見詰めていた。
「あの頃こんな幸せが来るなんて思ってもなかったな。あの頃の私は父と折り合いが悪くて荒んでいたの。そんな私に友世はいつも優しくしてくれていた。友世にも幸せになって欲しかったな」。
京平は何を言って良いのか戸惑いながら、美保の肩を抱き締めていた。そして立ち上がると京平の手を握るとキャンパスを出た。
そしてぶらぶら知恩寺に歩いた。寺の門をくぐり境内にはいるとプ~ンと線香の匂いが風に運ばれて二人を包んでいた。

静まり返った中で読経が聞こえて時折、チ~ンと金の音が聞こえた。美保は両手を合わせ何を祈っていたのか。すると携帯が鳴った。
「お早ようございます。真田です、紺野さんさっき山下の事故死した事で警察が来ました。山下の遺体から新札が見付かって、調べたら僕が銀行から降ろした金だと分かったと言って。
でも知り合いで困っていたから車のローンのお金と二百万貸した事にして話しておきました。それで警察も納得して帰りました。だから葬儀に出ようと思いますが。良いでしょうか?・・・」
「そうか、それだけの金を貸し借りする仲だと言う事で葬儀には出た方がいいな。後の事はお前に任せる」。
「はい、じゃああの金は香典代わりと言う事にして家族には話して来ます。まさかそんな事で来るとは思いませんでした」。
「うん、でも憎めない奴だったからな。それから少し多めに香典を置いて来てやってくれないか」。
「はい、警察の話しだと、山下の家族は父親がいないそうなんです。年子の妹が水商売をして家族を支えているらしいんです。なんか気の毒になってしまって。父が悪いことをして残した金がまだ十分ありますから、それで何とか力になってやろうと思いますけど」。NO-93-27