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小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(97)

2009-03-28 18:58:41 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(97)

京平は受け取るとキーホルダーを外し一つは美保に、もう一つは三河に渡した。
「紺野さん、私はいいです。それにその鍵は三つ一組になっていますからナンバーが書かれているでしょ。鍵穴に合わせて一から順に回さないと開きませんからね。それに私には用はありません。万が一お借りしたと時はお願いにあがります」。
「分かりました。じゃあそう言う事で」。」。
京平は鍵をポケットに押し込んで板の蓋をするとジュータンを敷いてリビングに運んだ道具を地下室に戻した。
美保はその後を掃除機を持つと散らかった埃を吸い取っていた。
そして片付けが済むとホットしたようにソファーに腰を降ろした。すると間もなく地下室から上がって来た京平を見詰めていた。
「奥さん、万が一あの箱を無理に開けようとすると中身は粉砕されて証拠は残りません。なんであんな物を造ったのか理由は分かりませんがね。友人も訳は話してくれませんでした」。

「三河さん、危ない品物じゃないんでしょうね。国家機密とか」。
「いいえ、その心配は要りません。友人は原子物理学者ですが、周りからは変人扱いされています。誰が何の研究をして何を造っていたのかは私しか知りません。ともかく正しい扱いをしてさえいれば中身は安全だそうです」。
「あの箱の厚みに比べると軽いですがセラミックか超合金ですかね、普通あの厚みだったら一人では持てませんから」。
「私には使い方だけで何で出来ているかは知りません。でも安全だと言う事だけは確かです」。
京平と美保はそれ以上聞かず、三河の言葉を信じる事にした。
そして地下室から持って来たアタッシュケースを開いた。中にはまだ三千万の現金が残っていた。京平はケースの代金だと三河に差し出した。
「いいえ、そりは要りません。あの箱は一千万、京都で頂いたお金から出させて貰いましたから。それは紺野さんの子供さんに」。
そう言うと出したアタッシュケースの蓋を両手で閉めると京平の胸にあてた。京平は頷くと美保に渡した。

「何かス~と張り詰めていた気持ちが吸い取られて行くようですね」。
「ええ、大浜から始まって、あの時はどう言う気持ちでした?・・・」。
京平は深呼吸すると一息着いて口にした。
「あの時はもう許せないと言う気持ちで何の躊躇いもありませんでしたよ。恐怖なんて何もなかったですね。
あの敷地の交差点で二人の車をやっと見付けて美保が二人を怒らせたんです」。
「そう、あの時に何を言ったか忘れましたけど。旨く誘いに乗ってくれたわよね。後はあの浜に誘い込んで車を止めたんです。
そしたら私達の車を追い越して前に止まったの。京平さん流石だった、二発で仕留めたんですもの。殺されて当然だと思いました」。
「そうでしょうね、あの後に私とアパートで合ったとき、少しも息は上がっていませんでしたからね。
でもバッヂを見付けた時は驚きましたよ。でも、私も警察では手に負えない犯罪者をこの手で殺してしまいたい、仕置き人みたいな事がしたかった。
ひょっとしてあの二人は、そう思ってバッヂは海に投げ捨てたんです。私の思った通りの心の優しい人達でした。
紺野さん奥さん、私は此れで満足です。あれ以来暴走族は全国的になくなりました。それに夜遊びする青少年もグ~ンと減って殆どいません。警察も非行と少年犯罪には厳しく取り締まる事になりましたからね。

また変な奴等が出て来たときは、私がチームを編成してやります。その時にはあれをお借りしに来ます」。
「ええ、僕も力になりますよ。なあ美保」。
「うん、でも無い事を祈りたいですね。でも、いざとなれば私の腕も必要になるかも。ねえ、貴方。そろそろ帰りましょう」。
こうして別荘を閉めるとペンションに戻った。
すると、もう夕食の支度が終わっており、美保は済まなそうに義母の良江に詫びていた。
「いいのよ、お客様のお合い手をしていたんですから」、とそんな美保に義母は優しく応えていた。そしてワインを手に乾杯すると夕食をとりながら三河昇の事件簿で話は盛り上がっていた。
そして翌日も三河はのんびり温泉に浸かって身体を休め、十九日の昼過ぎには土産を携えて東京へ帰って行った。
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