エンターテイメント、誰でも一度は憧れる。

PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

刻塚-(NO-28)

2009-12-06 16:41:49 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-28)

そんな二人の姿に警備の巡査は笑いながら所定の位置に戻った。
一方、社に戻った猿渡たちを待っていたのは驚きの品の数々だった。
麻代は猿渡に駆け寄った「凄いわよ、あれ見て!・・・」と、麻代は庭先の端を指さした。そこでは鑑識班が数名が、出土品を分けていた。
猿渡たちは麻代に引かれる様に歩み寄った。

「凄いじゃない、これ本物なの?・・・」
捜査員は手を止め、プラスチック容器を差し出した「たぶん本物だと思います」
その中には黄金色に輝く楕円形の大判が何枚も入っていた。そして銀だろうか、丸とも言えない様な小粒と言うのだろうか、古い貨幣がころがっていた。
そして、時代劇で見る様な長四角の二珠銀などが多数入っていた。猿渡は社に上がった。相撲の土俵程もあった塚は半分に削られていた。山田刑事が歩み寄った。
「凄いですよ、見ましたか」と、手にした大判を差し出した。
「ええ、まだあんなにあったんですね。大判小判がザックザクって、童話ですね。
増井さん、教育委員会の人間には出土品は見せない方がいいでしょう。見せると厄介な事になりますから」。

「そうですね。皆聞いてくれ、今から県の教育委員会の人間が二人来るから。来たら出土した物は見せないで欲しい。来たら一服しよう」。
猿渡は外で篩をかけている捜査員に視線を向けた。捜査員はプラスチック容器にシートをかぶせると上に篩いを置いた。そしてOKと言う様に手を上げるのだった。
そして時計を見ると十二時を五分ほど過ぎていた。
「増井さん、もう昼過ぎですから休憩にしましょう」と、時計を見せる猿渡だった。「休憩にしよう!時期弁当も届くから」と、増井は満足そうに回廊に腰を降ろした。ピ~ッ、ピ~ッと突然笛が鳴った。麻代は驚いて笛の鳴る方を見た。捜査員の一人が雑木林に向かって笛を吹いていた。
「あれは雑木林の中を捜索している捜査員からです。何か出ましたな、集まれって言う合図だよ。でも昼だからな」

「なんだそうなの、突然吹くんだもん驚いちゃった」。すると、バイクだろうか、エンジンの音が次第に近付いて来た。
それは宿の主と後藤公子の二人が乗った二台の三輪オートバイだった。荷台には大きなダンボール箱が幾重にも積まれていた。
「どうも、遅くなりました。お弁当をもって来ました。お茶もありますから」。
主は荷台のロープを解くと周りに来た捜査員に渡した。
「猿渡さん、途中で男性二人と擦れ違いましたけど刑事さんですか?・・・」
「あれは県の教育委員会の鈴木さんと剣持と言う人です。見たいなら勝手にって、
手島警部殿が許可したんです」。

「まあっ、警部殿だなんて嫌ね。いまどの辺りでした?・・・」
「まだ随分下です、革靴で草で滑って転んでいました。あれじゃここへ来るにはまだ二十分位はかかりますよ」。主は荷物を降ろすと公子と二人で社に向かった。
ヘルメットを取ると両手を合わせて一礼した。
「随分はかどっていますね、捜査後は埋め戻していただけますよね」。
「勿論です、その為にもちゃんとVTRで撮っていますから。それより凄いですよ、大判や小判がザクザクです。後でお見せします」。

増井はさも自慢気に話すと弁当を手に「頂きます」と、弁当のを開けて腰を降ろした。猿渡たちも回廊に席を取って主を交えて昼にした。
「後藤さん、もしかしたら山田刑事を好きなんじゃない」麻代はそっと耳元で訊いた。ポッと頬を染めて赤くなっていた。「麻代、そんなこと訊くのは野暮だぞ」
猿渡は聞いていた。すると主は笑って頷いているのだった。
すると、教育委員会の二人がようやく上がって来た。猿渡と手島は思わず笑った。
背広を脱ぎ、ネクタイを緩めて額には汗が流れていた。
「どうぞ、お昼ありますよ。冷たいお茶も」猿渡は弁当を二つ持つと寄って来た。
ハアハアと息をして階段に腰を降ろす二人だった。
「どうも、頂戴します。運動不足が祟りますな、しかし凄いお社ですね。噂では聞いていましたが、実に立派なお社です」と、鈴木は冷たいお茶を口に運んだ。
もう一人の剣持は塚の事が気になるのか、社の中へ踏み込んだ。

「勝手に入るんじゃないッ!」と増井は怒鳴った。捜査員たちは一斉に振り返った。「あんたね、殺人事件の現場に勝手に入る奴がいるか。見るだけならと手島警部が許可したのを忘れたのか」。
「済みません、申し訳ありませんでした」剣持はペコペコと頭を下げて戻って来た。「増井さん、どうも済みません。遠くから見させて頂きますので」鈴木は困った様に流れ落ちる汗を拭っていた。
NO-28-53



最新の画像もっと見る

コメントを投稿