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小説・半日の花嫁-(NO-5-)

2011-02-05 14:14:18 | 小説・半日の花嫁

小説・半日の花嫁-(NO-5-)

すると何かを言いたくてならないように妹がいらついていた。そんな仕草に気付いたのか矢部刑事が芳美の顔を見た。
「妹さん、もし何かご存じでしたらどうぞ聞かせて下さい」。
「はい。お兄ちゃん、私をストーカーしてたあの男は?・・あの男だったら私達家族の事を調べていたじゃない。要子さんの事も」。
明は思い出したように顔を上げた。そして芳美を見て頷いていた。
ああ・・・と明は顔を上げた。二人の刑事は興味あり気に身を乗り出した。
「で、どんな男です。いつ頃の話ですか?・・・」。矢部刑事の声は心なしトーンが上っていた。そして芳美と明の顔を交互に見据えた。
「三ケ月ほど前の五月の始めごろです。突然店に来て私と交際して欲しいって言って来たんです。私のタイプじゃなかったし、こんな事言うと失礼ですけど、髪が薄くて身なりが汚いんです。それでハッキリお断りしたんです。
それから何回か店に来てくれて、その度に映画に誘われたりドライブに誘われたりしていたんです。それで困ってる私を見兼ねた母がお兄ちゃんに話したんです。
それで男が店に来てくれた時にハッキリ断ってくれたんです。
付き合う気はないし、汚い恰好で来ると店の客にも迷惑だから二度と来ないで欲しいって。それから暫く家の周りで見張っていて、私が買い物に行くと後ろを着けていました。
それで余りにもストーカー行為が続くものだから警察に通報したんです。
そうしたらすぐにパトカーで来てくれて、男に話していました。それからはピタッと来なくなりました。でもあんな大それたことする様には見えませんでしたけど。
でも、その男が言っていました。兄貴の女は奇麗だって、私に似ているって。その時に来てくれたお巡りさんに聞いて頂ければ男の住所は分かると思います」。
すると、矢部刑事が飯島刑事の耳元で何かを言うと席を立ち、庭に出て携帯で電話をしていた。「通報したのは一月前ですね?・・・」。
「はい、あのころ結婚式の話でお姉さん良く来ていましたから。あのもお姉さんも男の顔は見て知ってます。ねえ、お兄ちゃん」。
「うん、でもあの貧弱な男が考えられない。背は小さくてヒョロッとしていて、要子は165だぞ。その要子の首の骨を折るような力があの男にあるかな?・・・」。

要子、いったい誰に殺されたんだ、教えてくれ。明は壁の写真をじっと見詰めながら何度も無言で聞いていた。
すると、二人が式を挙げる筈だった結婚式場から担当のウェデングコーディネーターと支配人が弔問に来た
「この度はなんと申し上げて宜しいか。お力をお落としになりません様に。これは新婦様の」その中身はウェディングドレスだった。明は涙を必死で堪えていた涙が溢れだし、嗚咽した。そして震える手て柩を開けた。
「要子、お前のウェディングドレスが届いたぞ。いま着せてやるから」。周りにいた弔問客や親戚の涙を誘い、家の中から外に至るまで啜り泣く声に包まれた。
そんな中にいま話していた男が喪服姿で来ていたのだった。
良美はその男を見付けると矢部刑事にそっと伝えた。刑事はさりげなく近付くと声を掛けた。すると、男はおどおどしながら涙を流しているのだった。
矢部刑事は男を連れて家の裏に廻ると明を呼んだ。
「警察です、貴方はどう言う関係でこちらの葬儀に来たんです」。と矢部刑事は手帳を出して男に見せた。すると男は震え出した。
「ぼ僕は何も、ただ芳美さんのお兄さんの婚約者が殺されたって聞いたもんだから、そ、それで線香の一本もと思って、済みません」。
「それで、貴方の名前と住所は」?
「は、はい。村山芳幸26才です。住所は梅屋町三ー五ー十五、曙アパート201号室です。仕事は新聞配達してます」。
男はおどおどしながらもしっかりとした口調で答えると頭を下げた。そして良く見ると不精髭も剃って嫌な臭いもしなかった。
「貴方と椎野要子さんとはは全く関係ないでしょう」。
「はい、済みません。先月盲腸で椎野さんの病院に入院した時に、芳美さんをストーカーしてた事を知ってながら、こんな僕ににも凄く優しくしてくれたんです。それで外の患者さんに誘われて」。
要子が、明は初めて聞いた。自分に話せば不愉快な思いをさせると思って話さなかったんだと明は思った。
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