研究留学ブログ~ボストン~

留学までの準備段階、ボストン留学の記録など

忙しい一日(Nov. 8)

2006-11-09 11:37:35 | 研究留学
今日は朝イチで、前日に仕掛けたWesternの1次抗体を2次抗体へ変える作業。これが終わったところで隔週水曜日のMINDセミナー。

今日は私の好きなCalorie Restriction(CR)の話題。簡単に言うと、カロリー控えめにすると長生きできますよという話です。電子版Natureの論文が流行の最先端でしょうか。Resveratrolという赤ワインに含まれる物質を摂取すると、Sir2というタンパク質が活性化されてCRと同様の効果が得られて長寿効果があることは以前から示唆されていましたけど、今回の実験ではハイカロリーの食餌とResveratrolを同時にマウスに与えるとハイカロリーによる悪い影響を帳消しにしてくれることを示しています。赤ワインに含まれると書きましたが、マウスに投与したのと同じ分量をヒトに当てはめると、赤ワインから摂取するためには一日に100杯飲まなければならないということだそうです。この研究の権威でもあるDr.SinclairはResveratrolをサプリメントとして販売するベンチャーの社長だとか。ラボの半数の人が摂取しているそうです。

今日の講師はDr.Sinclairでは無いですけど、日本にいる時にJounal Seminarで取り扱った内容だったので、話についていくのは簡単でした。Sir2が非常に重要な点は変わらないのですが、Sir2の下流にp53を介してインスリンシグナルへの経路が考えられるという話で、PI3Kを介したPI(4,5)P2→PI(3,4,5)P3というどこかでよく見た図がありました(笑)。今回の話ではSir2→p53→インスリンシグナルの制御だけでしたけど、逆にインスリンシグナルがSir2へ及ぼす影響もあるかもしれないなぁと想像してみたり。

セミナーが終わってすぐに細胞に薬剤処理。12時スタートでこれが6時間の処理なので、夕方6時まで待機です。薬剤処理が済んだらWesternの発色。1枚のmembraneで既に4回ぐらい使いまわしているんじゃないですか。それでも綺麗にバンドが出ます(と、もはやAPやPOで直にバンドを出す方法は忘れたことにします)。そういえばMLに流れた情報によるとMillipore社のRapid Immunodetection Systemが開発中らしいです。これは従来の一次抗体→洗浄→二次抗体→洗浄のステップでかかる時間を大幅に短縮してくれるありがたい(時間が短いことは良いことです)のか、ありがたくない(待ち時間の有効活用ができなくなります)のかという装置です。既に我々のUnit内で試運転をしているそうで、簡単な一次抗体(アクチンとか)なら問題なく検出できるそうです。日本のラボにも是非一台(笑)、いや一人一台(爆)。

一息ついて、メールチェックをしているとDoraからのメール。Dennis(Dr. Selkoe)からの転送メールで、内容はGrantの締め切りが1ヶ月早まったからという内容・・・

え、1月中に結果を出せとおっしゃる?

と一気にプレッシャーが押し寄せてきたのと同時に、今のようにのんびりしないで少なくとも日本にいた頃のペース(どの時期を取捨するか微妙ですけど・笑)ぐらいに持っていかなきゃと思った次第です。こっちのプレッシャーのかけ方って絶妙だなぁと思います。逆にこっちでまだ「ダメ出し」をくらったことが無いですし、DooやHenriが他のメンバーに「ダメ出し」をしているのを見たことがありません。「ダメ出し」が無いのが逆にプレッシャーと思うのは私だけ?その後も何件か論文を調べたり、想像を巡らせたりしているとあっというまに6時。黙々と細胞回収。日本にいた時は界面活性剤入り緩衝液を直接細胞にかけて回収、sonication、遠心で終了していましたけど、こっちはsonication無しでじっくり抽出する方法。つまりそれだけ待ち時間が長いということ。案の定、実験が終わる頃にはUnitのメンバーで残っているのは数人という状態でした。

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