はと@杭州便り

中国杭州で仕事&子育てしているはとぽっぽのページです。

当兵(dangbing)

2009-10-09 17:53:37 | その他
国慶節中、紹興市街で見たスローガン。
「一人当兵 全家光栄」

そう言えば、秋は徴兵の季節らしい(中国では)。
新聞でもTVでも、新兵募集キャンペーンをやっている。

中国の兵役は少し複雑で、義務制と志願制の両方がある。
義務制は原則18歳以上の男性で、「征兵通知」を受けた人はもれなく管轄地区の軍へ健康診断を受けに行かなくてはならない。
この体育館のような場所で全裸で一列に並ばされ、身体のスミズミまで厳しい身体検査を受けるらしい。
日本も戦争中は多分そうだったと思うが、視力検査、尿検査、血液検査などもあり、合格した人は2年間の兵役が待っている。
大学に進学すればこの義務は免除されるが、代わりに約一ヶ月の軍事教練がある。

しかし大学進学しなかった人はほぼ全員が行かなければいけないのか、というとそうでもなく、
どうやら地区ごとに政府からの兵役人数の割当てが決まっているため、
割当てより志願者が少ない地区(主に都市部)はほぼ全員「征兵通知」が来るのだが、
割当てより志願者が多い地区(主に農村部)は、逃れられる可能性もあるようだ。

中国の軍は昔から貧しい農村出身者の就職の受け皿として人気があり、低学歴の人ほど入隊を希望する人が多いが、
今は軍の人数が増えすぎた&最新鋭の兵器に対応するため、高卒以上の学歴を持つ人を歓迎する傾向にあるようで、それ以下の学歴しか持たない人が入隊を希望しても難しい。
義務兵役も基本的には高卒以上の男性が対象になっているようなのだが、国が広いので、兵役に対する考えも様々。

熱烈に入隊を希望する人もいる一方で、死ぬほど行きたくない人も結構いるようで、日本の「知恵袋」のようなサイトを見ると様々な書き込みが。

「高卒だけど頑張っていい仕事について、生活に何の不満もないのに、なんで兵役なんか行かなくちゃならんのだ。どうすりゃいいんだ?」という質問から、
「彼女もいるのに、オレの青春はどうなるんだ?助けてくれ!」という質問まで千差万別だが、拒否すると重~~い罰則が課せられるため、間違っても表立って「行かない。」とは言えない。

そこで質問に対する回答には
「地元の医者に金払って、健康診断書を偽造しろ。」とか
「地元の有力者か会社に金を払って、軍に頼んでなんとかしてもらえ。」という意見から
「醤油を一瓶一気飲みしろ」
「身体に刺青を入れるんだ。刺青が入った人間は採用されない。」
「視力検査と色覚検査で目が悪いように装え。」
というのもあり、きわめつけは
「性病があったら絶対採用されない。」という書き込みまで…

しかし表向きのスローガンは「一人当兵 全家光栄」なので、
「兵役逃れなんて何考えてるんだ、この非国民!」みたいな書き込みももちろんあるのだが

相方弟も18歳の頃、この検査を受けさせられたが、
ちょうど病気療養中で恐ろしく痩せていたため、「痩せすぎ」で不合格。
家族も行かせたくなかったので、内心ほっとしたらしい。
ちなみに相方伯父は元職業軍人である。

ネットだけ見ていると冗談のような話に聞こえるが、
相方によると、小学校時代の同級生も何人か兵役に行っていて、
一番の親友だった友達は兵役に行ったまま「不慮の事故」で帰らぬ人になってしまったそうだ。
変わり果てた息子の姿を見て泣き崩れる友達の両親の姿が、今でも目に焼きついているという。

そして同じく小学生のとき、村から18~21歳くらいの若い衆が次々と召集され、多くが戻ってこなかったそうだ。
どうやら中越紛争(84年)で召集されたようなのだが、ろくな訓練も受けてない義務兵役兵が最前線に立たされたのである。

日本では「戦争」といえば60年以上前のことだが、
中国では日本で言う「戦後」もソ連、朝鮮、ベトナム、インドなどと紛争を繰り返し、台湾とは緊張した関係にあった。
80年代末までは核実験も繰り返していたし、国内での暴動や紛争も続いている。
この国ではまだまだ軍部が大きな力を握っているのだ。

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2 コメント

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Unknown (のぶ)
2009-10-21 18:20:58
本当に中国の事情に詳しいし、よく勉強しているあっていつも感心しながら読んでいます。
私は中国在住とは言えK党とか兵役とかこの国の事情を全く知らないので、長く住むことを考えたら勉強しなきゃいけないなと思っているところです。
これからもこのブログを読んで勉強させていただきます。
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Unknown (はとぽっぽ)
2009-10-22 18:28:20
>のぶさん
中国の兵役のことは、去年妊娠してから初めて真剣に調べました。結局女の子だったのであまり関係なかったのですが…。K党のことは私もあまり知りたくないです(爆)

日常生活ではあまり意識することもないですが、この国は参政権も言論の自由もなく、スローガンは富国強兵で軍部が力を持ち、学校は愛国主義の国民学校…という意味では、戦前の日本とあまり変わらない体制の国です。中国生活も長くなってくると、時にここが異国であることを忘れそうになりますが、「中国基準」の考え方を理解しようとする時、ここは違う国だということを忘れないようにしたいと思っています。

時々こんなネタも書いとこうかな、くらいの気持ちで書きました。
勉強だなんてとんでもないです~~(大汗)
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