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中国、二・三流大学の現実

2015-05-28 11:53:02 | その他
杭州の大学で教え始めて、もうすぐ1年。

私の勤務する大学には、中国語で「一本」(一流大学)と呼ばれるクラスが2組、
「三本」(三流大学)と呼ばれるクラスが2組あります。
大学入試時の合格点も、学費も、卒業後もらえる卒業証書にも違いがあります。
私は両方で教える機会がありますが、幸いなことに一本の学生も、三本の学生も
とても真面目で、協力的で、授業も和やかに進めることができています。
それでも、時々感じる一本と三本の学生の違い…。

「できの悪い子ほど可愛い」ではないですが、三本の学生たちと接する機会の方が
多いので、自然と彼女たちについて色々なことを知りたいと思うようになってきました。

特に地方の二・三流大学の置かれている状況について、新聞記事の翻訳です。
中国では高校卒業生のほとんどが、国内の重点・一流大学を目指しますが、
実際にこれらの大学に入学できるのは全受験生の2割弱。
ほとんどの学生が、夢破れて二・三流大学に進学します。

中国の大学生の大多数を占める彼らのことを、少しご紹介します。ご興味のある方はどうぞ。

                                      
中国、二、三流大学の実態

河北省のある三流大学に通う劉さんは2年の苦しい受験勉強の末、ついに希望の大学の大学院に合格した。
同じクラスの40人のうち、大学院に合格したのは2人だけ。6割の学生が適当に就職活動し、残りは親や親戚のコネで就職活動している。
今年中国の大学卒業生は史上最多の749万人で、そのうち「985」「211」などの重点大学、一流大学の卒業生は合わせて2割弱に過ぎない。8割以上にあたる劉さんのような二流、三流大学の卒業生は、厳しい現実に立ち向かわなければならない。

しかし、実はこれらの「就職活動最下層」に属する卒業生は、私たちの想像するほど「焦って」いるわけではない。
貴州省のある二流大学に通っている王さんは、多くの同級生の考えをこう表現する。
「夢を追い求めても失敗するだけ、つまらない仕事でも就職すればいい。どんな仕事でも良ければ就職は有るのに、なぜ自分から苦労する道を選ばなきゃいけないの?」

このような冷めた態度は、就職に限ったことではない。
王さんを指導する張先生は、学生は入学しても「大学生」という感じすらなく、ごく少数の「上昇志向」の学生を除く大多数の学生は、大学時代を無為に遊んで過ごしていると感じている。

王さんは卒業にあたって、張先生に次のような手紙を書いた。
「大学入試の後、このままでは終わらないと心に誓ってこの大学に来たけれど、そんな気持ちはすぐに無くなってしまいました。夢を描いても、実は一度も自分から追い求めたことはありません。大勢に流されて、平凡に落ち着いた自分が情けなく、でも現実を前にどうすればいいのかわかりません。向上心もなく、自分を律する力もなく、自分が悪いのか、それとも周りの環境が悪いのかわかりません。もしあの頃に戻れるなら、私は浪人してでも重点大学に行きたかったです。」

「私は学生たちよりずっと焦り、心配し、危惧しています。本当に残念なことだと思います。」張先生はこのように述べた。

就職に何の興味もない学生たち

李さんは河北省の二流大学の学生で、短大から編入してきた。
今年3年生の彼は先生達の話す就職事情について大して気に留めたこともない。ただ先生がよく話す「すごく優秀な先輩」は今市内の学校で試用期間中で、月給は2000元ということしか覚えていない。

ある調査機関のデータによると、2011年~2013年にかけて、重点大学と非重点大学の卒業生初任給の差は600~900元であり、2013年非重点大学卒業生の平均初任給は3447元ということだが、李さんは先輩たちは皆この「平均初任給」を大幅に下回っていると言う。

将来の計画について、李さんは今の自分の専門である中国語は好きじゃないので、大学院ではコンピューターを専攻し、北京に行ってプログラマーの職につきたいと言う。「そうすれば、月給4000元くらいはもらえるでしょう。」
クラスの友達3人は教師を希望しているが、その理由は「教師の職なら簡単に見つかるだろう」という考えだ。「教師はまだまだ不足しているでしょう?」

しかし、李さんと同じ大学の許さんはそう思わない。許さんも「安定した」教師の仕事に就きたいと思っているが、それは簡単なことではないと言う。4年生の先輩の中で教師資格証が取れたのは一人だけ。それに、たとえ教師になれたとしても、待遇は良くない。許さんの友達は秦皇島市の公立幼稚園に採用されたが、月給はわずか1500元(約3万円)だ。


河北省のある二流大学で土木工学の先生をしている呉先生は、二流・三流大学の学生の就職難の原因をよく理解している。
「彼らは重点大学の学生と比べて就職率は大して変わらないが、就職の方向性が違います。多くは給料が安くてきついと言われる仕事に就くのです。」

同じく二流大学で教えている李先生がもっと心配しているのは、就職難の状況でも学生たちは焦ろうとせず、就職に対してまるで「興味がない」ように感じられることだ。
「学生の多くが自分に対して自信がなく、まるでもう自分の分はわきまえている、と言わんばかり。言い訳ばかりして、覇気がなく、就職活動もしたくない。将来に何の計画性も持たず、社会人になるのを嫌がっている。」

この大学初の重点大学大学院卒業の学歴を持つ李先生は、自分の出身大学の学生と比べてこの大学の学生のあまりの違いに驚いたと言う。

前述の張先生は、このような状況の原因は学生自身の主観性の欠如と環境にあると考える。
実は就職自体はそう難しいことではないが、良い仕事に就くのが難しいのだ。二・三流大学の学生は社会において「高くもなく低くもない」層に位置している。北京や上海のような大都会では良い仕事を得る機会はほとんど能力の高い重点・一流大学の卒業生に、技術性の高い仕事は職業学校の卒業生に奪われてしまう。二・三流大学の卒業生の就職先は基本的に地方都市が多い。地方都市では大都会に比べまだ求人もあるし、はっきり言えば親や親戚のコネを使えば何かしら仕事は見つかるため、学生は焦る必要がないのだ。

「入学した時、大学を卒業したら田舎に帰って月給2000元の仕事に甘んじるのか、と何度も自問して、そんなのは絶対嫌だと思いました。でも『あなたのスタート地点があなたの見識と視野を決める』という言葉通り、数か月もしないうちにこの環境になれて、だんだん現実を受け入れられるようになりました。」
王さんは今、田舎に帰って月給2000元の仕事に就くのも良いのではないかと思っている。仕事のプレッシャーも少ないし、実家に住めるし、北京のような大都市の学生のように卒業前から就職活動に焦ることもなく、仕事を始めたら今度は家や車の購入を心配することもない。

「重点・一流大学の学生と比べると、努力しよう、頑張ろうという気概のある学生は本当に少なく、それが成功する人も少ない。一年浪人して重点大学を目指したが果たせず、地方都市の銀行員として働く学生がくれたメールには、『夢にはただ惑わされただけ、現実の前に俯くしかない』と書かれていました。私たち教員も学生たちにもっと努力しろと励まして良いものか、とても悩みます。ただ焦るばかりです。」と張先生は言う。

                                             

出典:
中国青年報:二三本院校学生被指处于就業塔基却甘于平庸
http://edu.163.com/15/0526/09/AQHG700200294M9N_all.html

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2 コメント

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蟻族はもういない? (Hiroshi)
2015-05-28 16:38:10
昔『蟻族』という本を読みましたが、いまは彼らのように苦しい生活をしながらよい職を求めてもがいている若者は少ないということでしょうか? 2011年段階で大学を卒業する学生は600万人でしたから、5年後の今年はさらに150万人近く増えているということですね。
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北京大学や上海交通大学の学生と何度か話したことがありますが、そんな重点大学でも就職は厳しいようです。ただし、紹介された学生よりは将来の夢は大きそうでした。
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Unknown (はとぽっぽ)
2015-05-30 19:33:05
>Hiroshiさま

蟻族は今も北京や上海を中心に100万人以上いて、今も増え続けていると言われています。最近は30代、40代になっても蟻族から抜け出せない人も多く、高齢化(?)が問題になっています。

ただ、私の教えている杭州の大学(一流、三流とも)で蟻族になりそうな人はほとんどいません。
理由は、1.大学の学費と難易度が上がったため(一流は年間約5000元、三流は年間約2万元)で、貧困家庭や農村出身の学生がほとんどいない 2.省立大なので、浙江省内の学生が8割以上を占め、親の経済力が相対的に高い 3.北京と違い、長江デルタ地域は多くの都市がそれなりに経済発展しているため、学生は必ずしも上海や杭州にこだわらない。ことが挙げられると思います。

都会の蟻族の8割は、親が年収5万元以下の貧困家庭出身で、3割が重点大学卒業の高学歴だと言われています。華北、東北、中西部の農村出身者が多く、都会の大学を卒業しても故郷には職がなく、あっても待遇が悪く、都会で職を探そうにも何のコネもない人たちです。中国では就職の7割はコネで決まると言われているので、有名大学を卒業してもコネがないと良い就職をするのは難しいのだろうと思います。
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