はと@杭州便り

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病人大行列~『激流中国』

2008-07-08 22:16:06 | 杭州で妊娠
そもそも中国の病院は、なぜこんなに人で溢れかえっているのだろう?

自分が病院にかかる段になって、本当に色々考えさせられた。
そもそもこの国は、人口に対して、病院が極端に少ないのだ。

産科だけをとってみても、人口約500万の杭州で、産科のある病院は多めに数えても恐らく20もない。
そのうちまがりなりにも一流の設備が整っている病院は、5つもないだろうと思う。

改革開放以前、都市住民と農村住民が厳しく隔てられ、自由な移動が許されていなかった頃、杭州市内の病院にかかる患者は全員、地元の人だった。
当時の杭州の市街地の人口は現在の3分の1以下だったという話もあり、恐らくそれでも間に合っていたのだろう。
しかし90年代以降、杭州に限らず中国の各大都市には出稼ぎや就職で多くの農村住民が移住してくるようになった。流入人口の正確な統計はないが、毎年数十万人単位で現在まで増え続けていると言われている。

さらに杭州で言えば、高速道路や鉄道など交通網の整備が急ピッチで進んだ結果、杭州周辺だけでなく省の内外からより良い医療を求めて患者が押し寄せるようになった。
Z医院のVIPでも寧波や金華、麗水など様々な都市から転院してくる人が多いそうだ。

産科ではよく、去年は「金のブタ年」で、今年は「オリンピック」だから、たまたまベビーブームなのだ、と言う意見があるが、このまま流入人口が増え続け、出産できる病院が増えない限り、恐らく来年以降もこの状態は悪化し続けていくだろう、と思う。

F医院やS医院では2、3年前まで帝王切開による出産だと一週間の入院だったのが、去年からは基本的に2泊3日になった。
さらに事前の分娩予約も受け付けなくなり、予定日を数日後に控え、帝王切開手術を受ける段になってから急に断られた人もいたそうだ。予約できないとなると、自然分娩の人は破水してから病院に駆け込むしかなく、廊下で寝かされるのを覚悟の上で出産しなければならない。

中国は帝王切開率が50%を超えるという統計があるが、これは病院に行けず、自宅で産婆さんを呼んで出産しているような農村部(人口10億人)も含んだ数字であり、都市だけで見れば恐らく80~90%近くに達するのではないかと思う。
WHO(世界保健機構)では世界的に見ても帝王切開の率は20%以下が望ましいとしており、中国にこの異常事態を改善するよう勧告書を出したそうである。

しかし受け入れる病院が人で溢れ、医者も看護婦も不足しているこの現状では、自然分娩を推進することは物理的に不可能だろう。
その結果「中国の産科の医者は帝王切開のプロだが、自然分娩については無知同然」ということになるらしい。
少数派だが手術をすすめてくる医者を断って、何とか自然分娩で出産しようとした方々に聞いた話では、
「とりあえず何もしてくれず、数時間放置されたままだったので、自分で事前に勉強した呼吸法で出産した。」
「なかなか進まない出産に、本人より医者の方がうろたえていた。」
「促進剤の量が間違っていたのか、全然効かなかった。生まれないから、と結果的に手術になってしまった。」という、信じられないお話が次々と…

中国の病院はほとんど全部公立のはずなのに、政府からの補助は一切無く、独立採算制である。
病院はどこも経営のため、効率が悪く儲からない自然分娩より、効率が良くて儲かる手術を勧めたがる傾向にある。
医者の方も経営のノルマを課せられ、それが業績評価につながっているため、少しでも儲かるように無駄な薬や検査、手術を勧めてくる。
S医院で私の受けようとした妊娠初期の検査なんか全然儲からない上、うっかり自然分娩したいと言ってしまったために先生の機嫌を損ねてしまったのだろう。

ちょうどそんな問題に直面していた時に、NHKで放映されていた、『激流中国』~病人大行列~を見て、思わずうん、うん、と頷くことばかりだった。

この国では、都市の病院が患者で溢れかえっているのと対照的に、農村では薬も検査機械も何もない、50年前と変わらぬボロボロの診療所しかなく、
日本のような国民保険がないため全人口の8割以上の人が医療保険に加入しておらず、
病気になっても相当悪くなるまで病院にも行けず、手術も受けられず、自宅で苦しみながら死を待つしかない人がまだ数億単位でいるのである。

つわりごときで3回も病院に行った私には、涙なしでは見られないドキュメンタリーだった…

この「激流中国」は毎月一度放映されているので、興味があればぜひ見てみてください。
中央電視台を一年見るより、今の中国がよくわかります。

●激流中国
http://www.nhk.or.jp/special/onair/080615.html

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3 コメント

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Unknown (DaDao)
2008-07-10 00:34:03
私も激流中国見ました。中国のテレビより、よっぽど中国の現実を移していますよね。
病院をさらに金儲けの方向に持っていこうとするあの病院長が印象的でした。・・・どこにでもいそうで。
病院の行列も恐ろしいですね。今は周り誰もが健康だから良いですが、万が一何かあった場合、どうしたら良いのか、と考えさせられました。

私の周りの統計から見ても、帝王切開率は90%です(笑)
唯一自然分娩した相方いとこの嫁は、帝王切開を希望してたのに、深夜でできる医者がいなかったかなんかで、自然分娩になったというオチ・・・(in紅会病院)
一人っ子政策も、スタイルが元に戻りやすいとかあの部分が広がるのが嫌とか、そういう考え方も帝王切開をさらに促進してますよね
返信する
ご懐妊おめでとうございます! (ヤスコ)
2008-07-16 20:32:16
ご無沙汰しております。ヤスコです。
久しぶりに拝見して、ご懐妊のお知らせを読んでビックリアンド
とても嬉しかったです~~~!おめでとうございます!

さてさて・・・

一応二人産んだ私の感想ですが、すごいですね、中国の病院。
帝王切開で2泊3日というのは、日本ではあり得ませんよね。
イヤ、自然分娩でも1週間入院ですしね。
だって自然分娩より、術後に気をつけなければいけないんですから・・・。
そして、帝王切開で出産すると、次の出産の時も帝王切開になるのが通常ですよね。

私は中国の出産事情をよく知らないですが、出産は予想外のことが起きるのも事実。(切迫早産、出血多量体験済み)
また、出産後の母乳に関する乳腺開通マッサージなども
無視できない内容です。赤ちゃんの状態によっては、
より大きな病院に搬送しなくてはいけないケースもありますし、
「産んで終わり」というわけではないのが出産の難しい所ですね。

うーん。
個人的には、出産だけでも日本でされることをオススメしたいです。
経産婦さんなら、中国でもいいかなとは思いますが・・・。
なんだか脅かすようなことを書いてしまい、申し訳ありません。
返信する
Unknown (はと)
2008-07-23 18:06:32
>DaDaoさん

あの金儲けしか考えてない院長、コテコテでしたね~。
あんな病院、最悪です。
結局すべてが患者ではなく病院の金儲けと医者の効率で動いているから、帝王切開ばかりになってしまうんですよね。
この先もこの状況が変わることはないと思います…。

>ヤスコさん

ありがとうございます(::)

「お産は病気じゃない」とか「アフリカのサバンナ原住民でも、四川大地震の被災者でもちゃんと子供を生んでいるんだし」とか思うときもあるんですが、
医療の進んだ日本でも悲しいけれど切迫流産や死産になってしまう方もいらっしゃるわけで、中国で自分はともかくもし子供に何かあったらと思うと、不安でたまりません…(:;)

確かに、「産んで終わり」というわけではないんですよね。。
アドバイス、ありがとうございます(::)
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