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走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

頑固物

2015年02月06日 | 仕事
ケンは筋金入りのホームレス。70歳と高齢である事に加えて教会のフリーランチとかに全く顔を出さない。いつも決まったバス停に座って1日を過ごす。食物をどこから得ているか全くわからない。

高齢なので定期的に声をかけるがいつも自分は大丈夫と言うケン。

そんな彼が一週間ほど入院していたのだ。心房細動と心不全。
それを知ったのは彼が退院してから3週間経ってから。ホームレスアウトリーチワーカーのデニーが衰弱しているケンを道端で見つけて連絡してきたからだ。

入院の記録を読んで切れた私。

ケンは入院中誰とも口をきかなかった。医師もSWも看護師も。目も開けずベッドに横たわるだけで。なのでSWのノートはコネクトできなかった。医師の退院要約には飲まなければならない薬はこれらだが、引き続き服用するかどうかは不明だと。どうして連絡してくれなかったのか。退院後すぐケンを探したのに。入院中だって病院を訪ねたのに。もしかしたら知っている人がそばにいたらケンの態度は変わっていたかもしれない。彼がホームレスの生活を選んだにはそれなりの理由があるのだ。屋根や壁のある空間では落ち着かず、規則や人に強制されるのが大嫌い。人付き合いが苦手。そんなケンが病室にいて、リラックスできるわけがない。もしかしたら怖かったかもしれない。それを治る気がないと取るなんて、、、、

退院後、彼は薬を処方せずいつものホームレスの生活に戻った。次第に胸痛や息切れが悪化。デニーに支えられるままシェルターへ向かった。

シェルターで出会ったケンは体重が落ちて土のような顔色。息も荒く5mも歩けない。しかし診察半ばでイラつく彼。再入院する事を勧めても頑固に断る彼。もっと体調の良い時に診察したかった。

続く



年月をかけて自然が作り出した。アーチ国立公園


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