
今回のシンポジウムで考えていた事 その2
適材適所と言う言葉があります。医療が逼迫されている現状を考えるとこれはとてもシリアスな課題だと思います。看護師は何でも屋さんのてらいがあり、あちこちに手を出す傾向がありますが、医療費が逼迫されている今こそ、それぞれの専門職がそれを発揮できるように費用対効果なども考えるべきだと思います。
宇野さんの講演の中でYoutube チャンネルの劇団在宅に付いて話されました。私はこれに対して、カナダではホスピス緩和ケアが始まった頃、財団の方でプロを雇ってビデオやしおりを作っても、医療者がこのようなことはしなかった、と話ました。その補足について。
意図は大変良いと思います。寸劇が家族や患者の対話材料になれば、との思いはわかります。しかしあえて言いたいことが数点。
まず、医療者には医療者にしかできないこと、つまりケアに集中して欲しい。もちろん仕事中にしているわけでもなくボランティア活動の一部だと思いますが、ワークライフバランスは大丈夫ですか?と思います。
そしてその費用と労力の対価は?効果が出ているのでしょうか?Youtubeの閲覧数を見ると影響力はまだ出ていないかもしれませんね。それに寸劇はできてもビジネスマンではありませんから、マーケティング法などは専門ではないから仕方ないですよね。
そしてこの劇団は医療者のみで作られていることに驚きました。患者中心の医療と言う時、患者家族も利害関係者としてその輪の中心にいなくてはなりません。医療者だけで作った寸劇が患者家族の経験や思いを本当に反映しているのでしょうか?と疑問を持ちます。寸劇さえも患者家族が中心にいないと医療者側の押し付け、自己満足になってしまいます。
検索してみると、日本にはホスピス財団、日本ホスピス緩和ケア協会、全国ホームホスピス協会が出てきました。しかしどれも医療者側にフォーカスをしている印象を受けました。市民や国民の団体はないのですか?
カナダにはバーチャルホスピスサイトがあります。こちらのabout us を読んでみてください。その経緯がわかると思いますが、始まりに医療者が関わっていたかもしれませんが、運営は国民によって行われ、このサイトは患者と家族フォーカスです。政府からも援助を受けて、多くの国民に利用されています。
ホスピスだけではなく、AYA世代のサポートや移民のサポートや貧困層、ホームレス、薬物依存、性的虐待防止、メンタルヘルス、などなども同様です。資金繰りができて、法人事業として成り立っているものばかりです。
宗教が背景になっているのでは?と思われるかもしれませんがカナダの歴史上、宗教色が濃い団体はここまで大きくなれません。宗教や人種や言語に制限されることなく、誰でも利用できるサポート団体の存在は、大きな違いを生みます。
国民性の違いと一言でくくるのは勿体無い話です。当事者である国民がホスピス緩和ケアの啓蒙活動(医療側でなく、患者家族側の)を引っ張っていって欲しい、そんな土壌作りもして欲しいな、と思いました。
そして医療者はきかくを始めたり、加わる時は、私がしなければならない企画なのか?他の人ではダメなのか?とまずは自問自答して欲しいと思います。