走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

医療の主体とは その4

2023年03月19日 | 仕事

シリーズはどんどん長くなるので忘れないように各回のサマリーを書いておきましょう。

1日目 真の患者中心のケアとは心がけているでは不十分

2日目 医療職は全知全能でも神でもない

3日目 人間は誰しも主体性を持っている


昨日私は


日本人の医者任せの理由は日本人という国民性に主体性がない云々ではなくて、本人が意思決定できるレベルまで医療者側が情報の提供をしていないからだ。と書きました。


これを読んで、あんなに時間をかけて説明しているのに!と憤慨する医療者もいるかもしれません。しかし問題は時間をかけたかどうかではなくて、コミュニケーション時に影響する要因を知っているかどうかです。さあ、今日からこの辺りを一つずつ説明していきましょう。


まずは環境から。医療現場はどうしても無機質。壁の色、消毒の匂い。一般の人は経験しない異空間です。異空間というのは人間を緊張させます。貴方だって、法廷に立つときは自分が裁かれていなくても緊張するはず。


病院の古い外来では医師の動線を重視して、カーテンで区切られた空間で隣の声が聞こえるとか、人の動きを感じる空間だって患者の集中力に影響を与えます。最近は医療職だけではなく建築家もこの辺りの研究をして清潔が保てるかつ暖かみを感じる医療施設設計に世界は動いています。診察室は変えられないけど、病状説明をするときは、ムードライティングを使ったリビングルームのような環境を用意するところもあります。


プライバシーを守り、雑音や気の散るような因子を省き(電話や携帯の発信音も)患者がリラックスできる環境を整えてから大事な話をしていますか?

リラックス?!ここは医療現場だ。ホテルじゃないぞ!と言いたいですか?今の世界の医療の潮流をご存知ないのですね。畜産業で、牛が屠殺に向かって行く時、牛の歩く道がどんどん狭まり、一頭ずつ歩くようになり、大きさや肉付きを観察され、消毒用のプールを通って振り分けられて行く状況。昔の医療はそれで良かったのです。効率性を重視し、医療者側が動きやすい動線に作られた環境。人間はベルトコンベヤーに乗っているように仕分けられる医療。量をこなすことが医療に課せられた時代。それはもう終わって、量から質の時代と言われているのです。


患者が理解できたかどうかより、医療者側が説明をしたかどうかが重要だった時代はもう終わっているのです。患者側が理解できたかどうかが重要視されている。何故なら平均寿命は伸びて慢性期疾患と生きて行く人が増えたから。その人たちが自分の病気を理解して、どう共に生きて行くのか理解しなければ、医療は破綻する時代になったから。


続く


冒頭写真氷と雪の渓谷を歩いて凍った滝を見にいきました。夏とは全く違う表情です。







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