走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

螺旋階段

2015年04月22日 | 仕事
ダグが久しぶりにやってきた。彼の前回の記事はこちら
一時は住む場所を見つけていたが、またホームレスへ逆戻り。ホームレスシェルターでも大げんかをして追い出され、やけっぱちになり深酒。薬を一週間飲まなかったら症状悪化。これではいけないと私に会いに来たと。行かなければならない検査もほったらかし。

前回診察に来たのは2月の終わり。先週も今週も朝食サービスの場所で私の診察を受けることができたのに恥ずかしくてこれなかったと。

恥ずかしい???

私の期待に応えられなかったから。

プライドが高く、書物を読んだり、物事の知識もあるダグ。やろうと思えば出来るのに、ここぞというところで誤った選択をしてしまう。自分への悔しさもあるのだろう。

私はどの患者にも期待はしていない。私がしていることはそれぞれの患者にとって一番良いであろうと現代の医学で研究によって証明された事を勧めている。強制でも期待でもない。患者の体は患者のもので、患者が最終的に自分が良いと思うこと納得できることを選んで実行している。医療者に嫌われたくないからと良い顔だけをされても何のプラスにもならない。
人生や健康は一直線ではない、見た目堂々巡りで同じところをぐるぐる回っている時もある。そう見えるかもしれないが螺旋階段のように少しづつ良い方向に向かっているかもしれない。私はいつでも患者のことを待っている。だからいつでも必要な時に来てくださいと話した。

ダグは深々と頭を下げて帰っていった。


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