走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

母国語

2015年04月21日 | 仕事
背の高いマイケルが新患としてやってきた。女の人を連れている。

問診を始めると返答が遅い。???左耳の聴力が低下して聞き取りにくいと言う。右耳に向かって話す。返答も遅ければ、しゃべる速度も遅い。???知能障害?脳障害???

女の人が聞いたことないような言葉でマイケルに話しかける。あ!英語が母国語ではないんだ!!!

なーんだ。私と一緒じゃん!

移民の国カナダ。英語が母国でない人は山ほどいる。しかし私の住んでいる町は白人がマイノリティーの珍しい町。そして私の患者層は母国が英語の人ばかり。だから診察に通訳が必要な状況は一度もなかった。

マイケルはカナダの北部、ずーっと北の先住民。姉を頼ってBC州へやってきた。

前にも書いたが、政策で先住民は英語を話すことキリスト教を宗教とするを強制された時期があった。なので先住民の言葉を話す人は激減してしまった。地名やストリート名で先住民の言葉を聞くことはあっても会話を聞いたのはこれが初めて。感動してしまった。

そんなマイケルも先の政策の被害者。ふるさとと親元から引き離され11年寄宿舎で暴力を受けながら過ごした。それが自分を鬱と不安症にしたと話す。

50代のマイケル。一体カナダ全体で被害者はどれくらいいるのだろうと思った。


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