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走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

病院から自宅へ継続的ケアの重要さ 2

2016年04月27日 | 仕事
昨日の続き

師長さんは言う。退院許可は出ているので退院してもらいます。
スライディングスケールは? ありません。
インスリンの投与回数は1日何回? 1回
SAの申請(高価な薬は申請を出し特別許可をもらわないと本人負担になる)は? 薬剤師がしてくれました。
薬剤師はSAの申請できませんよ!あ、間違い。医師がしてくれたと思います。
思いますって、確認は取れてないんですね。後で請求書を送たって本人支払ませんよ。 わかっています。
搬送はどうするんですか? タクシー代を出します。
きっと車から下車して自分の部屋まで行くことは1人でできませんよ。 それは困りますね。

とまあ、会話は続く。幸い師長さんは聴いてくれたし考えてくれた。退院は翌日まで延期。師長は翌日、ケアマネと話し合い、退院の段取りを整えました。私もコミュニティーの薬剤師と調整しました。よかった、これで安全な退院計画です。

患者が急性期の時は症状が大事で彼がどうやって在宅で暮らしていたかなんて医師たちは誰も興味が無いかもしれない。しかし退院計画を早くから立てることで早期退院へ持っていける。実は翌日にも退院に至らず、退院許可から2日目に退院となった。

BC州の急性期の病床にかかる金額は一泊$1100(2011年)。これはICUなど特別病棟は除いてだ。物価を考慮して$1=100円で考えて一泊11万円。彼は2泊余分にしているので22万円使用したことになる。なんと無駄な。早くからコミュニティーの人たちと連絡を取っていれば22万円もセーブ出来たのに。

生活能力が低い彼を看護して、退院後のことを誰も疑問に思わなかったのだろうか?と私は思った。そう言いながら実はよくわかっているんです。私も病院で勤務する看護師でした。病院を離れ訪問部に変わった時は目から鱗の経験の連続でした。疾病に注目してばかりで患者のことを全く理解できていなかった自分を。環境と歴史が大きく健康につながっていることを。

彼のように自分で伝えられない、または代弁者になってくれる家族がいないケースは特に病院と在宅間で綿密なコミュニケーションが必要になってきます。しかし、患者本人や家族に頼りきっている医療チームはギアチェンジができなかったのでしょうね。患者家族だって医療の専門家では無いのです。コミュニティーのサービスを知らず、すべての切りもりを自分でしようとして崩壊するケースだってあるのです。だから在宅連携看護師とかが重要になってきているのです。もちろんBC州にもいます。しかしそれは訪問看護への橋渡しに限られていて、メンタルヘルスはケアマネが兼ねていて、彼女は頻繁に連絡していたのにもかかわらず、部外者として見られていたからでした。彼がメンタルヘルスで精神科に入院していたら違っていたと思う。内科に入院してメンタルヘルスのケアマネという畑の違う者同士がコミュニケーションを取らねばならなかったのがチャレンジだったとも思う。専門や地域が違っていても大元の組織は同じなのに、、、、病院内のチームだけしか見えない医療って、、、と思ったケースでした。


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