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走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

ホームレスの理由

2017年01月26日 | 仕事
昨日の続き

ホームレスと聞くと、ああ、薬物依存があるからでしょ?と思う人が多い。カナダの社会の目はそう言うものだ。確かに薬物依存とホームレスを持ち合わせる人は多い。しかし、それだけが理由ではない。メンタルヘルスもある。メンタルヘルスも薬物依存もないのにホームレスの人もいる。だからホームレス= 薬物依存と決めつける事はできない。

彼は薬物依存もメンタルヘルスもない。しかし大病をして以来ホームレスに。正確に言えば入院中に家を失った。ホームレスシェルターからトランジショナル ハウジング プログラムに入った。病気のため働けない彼は障害者と認められ生活保護を受ける事ができるようになった。彼がしなければならない事は2年以内に住むところ自分で見つける事。

2年と聞くと長い。しかしあっという間でもある。その2年にあと1ヶ月と言うのに彼の引越し先は決まっていない。

私は一年も前から、住居の事を急かしていた。彼はいつも、俺は薬物もしないしメンタルヘルスもないからすぐ見つかるさ、とあまり真剣に受け止めているように思えなかった。私は今の状況が起こる事を予測していた。

1ヶ月を切って、彼は焦っている。ストレスのお陰で胸痛が出るようになった。このまま胸痛が悪化して入院とならないか、私はとても心配している。

今頃になってようやく私のアドバイスを受け入れている。何故もっと早くに取り掛からなかったのか???と言いたくなる。薬物依存がなくてもメンタルヘルスがなくても、一度ホームレスを経験していると社会の目は厳しい。何故ホームレスになったのか?何が理由だったのか?と部屋を貸す方もガードが高くなる。

自分は他のホームレスとは違う、と。それは事実であってもホームレスだったという現実は変わらないのだ。

社会で自立していくためには順応性だけでなく、いろいろな要素が必要になる。あなたが倒れたら、何人の人が駆けつけてくれますか?病院のお見舞いだけではなく、ご飯を持ってきてくれるとか、買い物を手伝ってくれるとか。そう言うところに社会的ネットワークがあるかないか出てくるものです。一生面倒をみてくれる人がいるかどうかとは聞いていません。駆けつけてくれる人、声をかけてくれる人がいるかどうかで回復への意欲も変わるというもの。再就職へのチャンスも、良い物件を見つける事も。人間は1人では生きていけません。人に支えられて生きる生き物です。

お金が沢山ある人はお金で人を動かす事もできます。しかし一生働かなくても良いぐらいの蓄えがある人が何人いるのでしょうか?50代前半で病気になり、次の30〜40年。はたまた50年。先は長いのです。それだけの蓄えは難しいでしょう。

核家族化が進み、隣組の考えが希薄になり、人はますます孤立化しています。子供の頃から、健康な時から人とつながる事に時間をかけましょう。学校、仕事、趣味、ご近所、ボランティア、方法は様々。困っている人に手を差し伸べましょう。与えたものは周り巡って返ってくるものです。ネットワークを大切に。

前置きが随分長くなりましたが、薬物依存もなくメンタルヘルスもなくてもホームレスになる人。どうもこのネットワークがゼロの人が多いようで、、、、その背景には貧困層 と言う社会的問題が背景にあることも要因です。生き方を次世代に伝えていく。人間の大切な役目です。



週末のブランチ。煮詰めたバルサミコ酢と卵の相性は結構良いもの。

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