漂う

ホームレスの彼女は見るからに不健康と言う言葉が似合う、実際の年齢よりずっと年上に見える人だった。厚い化粧に、細々とした体。

身体中に痛みがあるから痛み止めが欲しいと。

問診するとあやふやな答えが多い。保険カードもなくし番号も知らない。
薬物依存を否定する。アルコールの摂取量は多くないようだ。

しかし手先の震えは止まらない。

診察を終え、もう一度聞きますよ、最後に飲んだのは何時ですか？どれ位飲みましたか？罰するためではないんです。正確な情報がないと診療できないから本当の事を教えてください。

あー今朝だったかな～、量は3倍ぐらいに増えている。アルコール依存があるのではと聞くととんでもないと言う。

んんん、、、、

過去の処方や健康歴を把握しなければ何も処方できません。明日再診してくださいと伝える。

彼女が教えてくれた自身の名前は通用名前で法的な名前でなく、探し当てるのに随分時間がかかった。そして見つけたのは難度のアルコール依存症。隣町の救急室の常連さん化している記録(元々地元の人ではい)、警察でも顔が知れた方。

あららら、

しかし彼女は翌日現れなかった。そして街から消えていった。



写真
http://mrs-white.deviantart.com/art/Disappear-426516972 より