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走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

頑固者 その2

2015年02月08日 | 仕事
患者さんは治療を拒否する権利がある。

ケンが薬を処方し内服しなかったのはもしかしたら、治療を拒否しているからかもしれない。
ケンはホームレス生活が長くケアカードに必要な手続きをしておらず、ケアカードは保留になったまま。なので薬を処方しようとすると自費となり、とてもではないがケンが払えるわけはない。入院中にSWはそのことに保留になっている事に気付いていたかもしれない。しかし彼自身が口を開けて話さなければ何も始まらない。

治療の選択は自由で拒否することもその一つ。しかし、その結論を出す前に本人が本当に選択を理解した上で決めたことを医療者は認識しなければならない。

例えば鬱が酷い状態だったり、生まれつきIQが低く自己判断能力が低ければ、その言葉を鵜呑みにするわけにはいかない。
それらがなくても、選択を理解した上で出した決断だと言うことを確認する必要がある。
例えば、何十年も前はがんの痛みの治療が発達しておらず、癌になれば苦しんで死ぬのが当然の知識だった。しかし今は違う。現在の医学で何を提供することができるのか、どれくらいの可能性で治癒、もしくは延命ができるのか、どれくらいの症状コントロールができるのか、どれぐらいの確率でと、統計を含んだ説明が大切だ。

毎日ケンを診察した。彼は自分の症状は食中毒からきている、だから自分で治せると信じていた。少しずつ疾病について話をした。薬の話もした。しかし彼は拒否を続けた。ホスピスの話をした。少し興味を見せた彼。考えてみると。呼吸苦は続き、嘔気嘔吐も続き、食事もろくに取っていないケン。どれぐらいの持つのだろう、、、。

長期週末になった。火曜日にまた診察に来るね、と言ったのが最後だった。休暇中に私にホームレスアウトリーチワーカーのデニーからメッセージが入る。彼は週末に救急車でERへ連れて行かれたと。火曜日に病院へ行こう。もし彼がまだ生きていたら。



自分の写真よりずっと綺麗だから。一番有名なアーチ。
アーチ国立公園


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