走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

未来を見据えて

2020年06月05日 | 仕事
医療が無料なカナダでも医療はビジネスです。予算と出費があり、赤字ではやっていけません。しかし近年の高騰する医療費は止まる所知らずで、以前にも書きましたが州の税収入の50%を使っても追いつかない日が来ると言われています。だから最近耳にするのが

Money for Value

お金の効率化です。ケベック州は職員の賃金カットを図りました。余るほど介護職がいれば賃金カットも短期間ならばあまり影響を与えないでしょう。しかしその逆の場合、介護職は賃金の良い職場へシフトします。長期間では州外へ移住という手を取る人だっています。国外だってありです。一時期カナダの医師がアメリカへ流れたように。なので医療職の賃金カットは慎重にならなければなりません。今回、ケベック州は痛いところを突かれたと思います。元々人員不足の上、政策や指導の遅れでコロナ感染が火の車となり収集がつかなくなる。コロナに罹患する云々の前に介護職がいないので患者は長期間放っておかれるという状態になったのですから。それに結局コロナで入院患者が増え、その治療に大金を注ぎ込む事になったのです。一人当たりの入院費と介護職員の人権費は比べ物になりません。ケチったお陰で大金を払う図式になったのです。

ではどんなところで予算をカットすれば良いのでしょうか?

いえいえ、そんな考えがそもそも間違っているのです。未来へ投資して医療費の増加を防ぐ。これが現代の経営方法です。シリーズで長く書いた国公立病院の再編成を全て読んでみてください。その一例が分かると思います。病院の支出を圧迫しているのは病気中の病気の人たち。その人口を将来減らすことによって将来的な医療費を抑えるのです。立派な治療センターより、もっと安くて将来に結果が出ること。具体的には何?それはリーダー職や高度実践看護師ならばそれぐらい自分で答えが出るはずです。わからないのなら世界の医療文献を読み、医療をみる眼鏡を磨いてくださいませ。日本はこの辺も少しおかしな方向へ向かっているのを外からみていて懸念しています。この辺がわかっていれば医師の無料超過勤務を強いたり、医療職の賃金カットなどは選択に入らないはず。国外への労働者の流出は起こらないかもしれませんが(日本語以外が堪能でないと選択とならない)、医療者の疲弊は医療崩壊へ繋がります。もうすでに日本では農業や漁業など外国人労働者に頼らなければ成り立たなくなりました。政府が農業や漁業を長い間守らなかった結果です。これが医療にも起こる可能性はゼロではありません。政策者ばかりでなく、政治家を説得できる医療職種とスカラーの存在も重要です。将来を背負っているのは今現場にいる人たちですよ!将来を考える姿勢を忘れずに。

シリーズ終わり


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