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瀧澤美奈子の言の葉・パレット

政を為すに徳を以てす。たとえば北辰の其所に居りて、衆星の之に共(むか)うがごときなり。

野田政権で震災復興の加速が実現するか

2011年09月11日 | ひとりごと
震災からもう半年。とりあえず期待したいと思いますが、そろそろ本気で結果を出してもらわないと困ります。昨夜の20時代のNHKの番組での復興大臣のわけの分からない言い訳はひどかったです。高台への移転費用を、結局、国は出す気があるのかないのか、ちっとも分からなかったですし。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110911-00000057-jij-pol

被災地での復興が第一ですが、それに付随して身近な一例。
ごく最近、近所のスーパーの和牛のパックに「全頭検査済み」のシールがつき始めました。
「あれ?」と思って確認したら、国ではなく、スーパーが独自に全頭検査しているとのこと。大手が相次いで全頭検査を開始する中、資本力のある企業だけが対応でき、そうでない企業(外食産業も含め)が対応できずに苦しみ、市場からの退場を余儀なくされているとすれば、とんでもない事態が現在も進行しているのです。

検査体制が悪いのか、消費者が悪いのか。
消費者の多くは、確実に安全だと分かりさえすれば、苦しんでいる被災地の産品を食べて応援したいと思っている。それには、安全を確信できることが不可欠です。今の体制で十分納得できているのでしょうか。

ついでに、他の食品についても、それと同程度の安心を保障できる体制の確立に、さらに努力を重ねていただきたい。流通している食品から抜き打ち検査でポロポロと基準値超えが出ています。全体から見ればほんのわずかで、確率的に見れば問題ないという解釈も可能かもしれないけれど・・・。





1800ミリの積算雨量に思う

2011年09月05日 | ひとりごと
 台風12号の影響で、死者25人行方不明者50人という被害が出てしまいました。亡くなられた方のご冥福を心よりお祈りすると共に、関係者の皆さまにお見舞い申し上げます。今なお行方不明者も多く、安否が大変気がかりです。

 今回の台風では、東日本に張り出していた高気圧の影響で、台風の移動速度が極端に遅かったことと、海水温が高いため勢力が維持され、積算雨量が1800ミリに達した地域もあるということです。1.8メートルの雨というのは途方もない量です。
 たとえば(今回和歌山県全域が1800ミリの雨量だったというわけでもなく、また三重県にも同等の大雨地域がありますが)、仮に和歌山県の面積で掛けると、空から降って来た雨の総量は8.5×10の9乗トン。10の9乗トンというオーダーは、黒部ダムの貯水量の約10倍です。
 また、この付近の海の水深を(一様ではなく沖に向かって数千メートルの深さに落ちていきますが)、1500~2000メートルぐらいで代表するとすると、台風が海の水深の0.1%程度にも及ぶ大量の海水を空にくみ上げ、陸地に落としたのだという見方もできます。

 その結果、すべてが1.8メートル水没するというだけでなく、短時間のうちに上流からの水が集まり、一気に襲ってくるのですからたまりません。流量と速度が掛け算になって効いてきます。水量もさることながら、急峻な山間を駆け下りる水流の速度は大きく、エネルギーは速度の2乗ですから、紀伊山地のような急峻な地形では被害を増大させます。
 それから、大雨による土砂災害によって流路を変えた川が民家を押し流したという事象もありましたが、このように連鎖的に起きる事象によっても被害が拡大しています。今回の災害の内容をよく解析して、今後の対策を立てて欲しいものです。

 数年前、「災害による死者をゼロにする」ことが国の防災の目標として掲げられていましたが、当時それほど人々から注目された政策目標だったとは言えませんでした。しかし、東日本大震災以降、地質的な活動期に入ったとされ、地球温暖化も止まらない。これまで以上に災害対策を重要視せざるを得ない時代に入ったのかもしれません。

2011.9.7追記
JAXAが台湾から観測衛星の画像提供を受けて(アジア20カ国等の観測情報を相互にやりとりするセンチネルアジアという協力体制による)、災害前後の河川を比較した画像を公開しました。
http://www.rbbtoday.com/article/2011/09/06/80684.html
増水し、明らかに川の太さが変化していることが分かります。
一見すると、この解像度では想定の範囲内で、だから何?という感じもしますが、より高解像度の画像でメッシュで分析して、降雨量データと比較すれば、どのように水量が時間変化したのかというプロセスが見えてくるかもしれません。時系列データが必要だと思いますが。洪水に至るまでの降水量との関係やタイムラグを知り、一般化することができれば、少しでも豪雨災害への備えに貢献できるのではないでしょうか。

科学工作教室の準備をしています

2011年08月17日 | ひとりごと
残暑お見舞い申し上げます

東京は暑い日と(夜も)続いています。
連日最高気温35℃前後で、夜も30℃くらいです。
溶けてしまいそうとか、焦げてしまいそうとか、いろいろ言葉は考えてみるのですが、どうもしっくりこなくて、もっとこう、命に危険がせまりそうな感じの暑さですね。
ワールドニュースを見ていたら明日の東京の37℃予想はアジアのなかでも異常な感じでした。北京なんて最高28℃ですし。

さて、前置きはさておき、最近こもって本の執筆に励んでいましたが、ここにきて今週末と来週末の科学工作教室の準備をしています。

とくにソーラー行灯のほうがおかげさまで人気で、定員を少し増やして対応することにしました。(昨日の時点では、あと1組2名様だけ余裕があるようです)
基本的に電子回路と木の枠を組み立てる構成なのですが、半田付けは少し敷居が高いだろうということと、木の枠に取り付け用の穴を開ける作業は子どもには危険が伴うので、私があらかじめ写真の状態まで作って渡すことにしました。
本当は、半田付けぐらいはやっていただくといい経験になると思いますけどね。

しかし、試作を一個作るのと、皆さんの分を20個作るのとでは大違い。
半田付けよりも、むしろ木枠に穴を開けるほうが骨が折れます。専用の機械があれば一瞬でできるのでしょうけれども、手作業で、なんと彫刻刀での作業ですので、一つ作るのに小一時間かかります。

でも来てくれる皆さんは楽しみにしていらっしゃるでしょうから、手に豆を作っても腱鞘炎っぽくなっても頑張って準備しています!


前述のサロンでのご質問に関して(1)

2011年07月16日 | ひとりごと
 前述のサロンで、「過去の核実験や中国の核実験で、日本の放射能量はどのように変化したのですか?」という質問が出ました。
 たしかに、核実験による放射性物質の放出(フォールアウト)で、わずかに空中線量が上がった時期があります。それについてのグラフをお見せできなかったので、下記を紹介いたします。

気象研のデータを元に、ATOMICAで掲載されているデータ

http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01080428/02.gif


また人体中や尿中の核種濃度についてもデータがあります。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-01-04-11


チェルノブイリ原発事故を除けば、右肩下がりで減ってきていることが見て取れます。


データの所在について、放射線医学の専門家の先生にご協力いただきました。ありがとうございました。

「玉川テラス ~科学サロンへようこそ 第1回知って不安を取り除こう」の報告

2011年07月16日 | ひとりごと
 今月から、玉川高島屋さんで私のサロンが始まりました。

 原則的に「玉川テラス」という会員限定サービスなのですが、月一回、そこで科学サロンを開催しています。小さなサロンスペースで、講演という一方通行ではなくて、もっとざっくばらんに、一つのテーマについて参加者の方々がむしろ主体的に議論をしてくれるようなサロンの場の提供を目指しています。

 今月は13日(水)に「知って不安を取り除こう」と題して、放射線をテーマにしました。参加者は全員女性で、生活の身近なことでもあり、熱心に質問をしていただきました。
 今回このテーマでの開催にあたって、放射線医学総合研究所の方にもお世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

 サロンの主催者として、まだ始まったばかりで不慣れですが、これからいろいろ工夫をできればと思っています。ご意見、どしどし募集中!
 次回は8月なので、会員限定ではなく、誰でも参加OKにして、「夏休み親子科学工作教室」を2回開催します。
 急な停電にも役立つかもしれない(?)ソーラー行灯と、カメラオブシュキュラを作ります。これについては、また後日お知らせします。




科学の力も利用して漁業復興を

2011年06月29日 | ひとりごと
 海域や魚種によっても大きな違いがあると思われるが、東日本大震災の被災地の沿岸域では海洋生物にだいぶ影響が出ているようだ。

 一方では、漁業の一日も早い復興に向けて、海底のがれき撤去や漁船の修理、漁業者による協業などの仕組みが動き出している。漁業者の願いは「一日も早く漁を再開すること」だろう。

 しかし、いうまでもなく、漁業はその資源である海洋生態系が健全に保たれてこそ、持続可能な産業として成り立つ。まずは、生態系の今の状況を科学的に把握し、将来に禍根を残さないように漁業を復興してもらいたいと思う。

 すでに、このような目的で地元の漁業者とが協力して復興に動き出している例が、東京大学海洋研究所 国際沿岸海洋センター東北大学 女川フィールドセンターなどで始まっている。両センターとも沿岸にあって、津波の大きな被害を受けたなかでの再出発である。長く地域に根を下ろし、その存在意義を地元から認められている点も共通している。

 世界三大漁場の一つである東北沿岸。今は点と点のそのような取り組みを面的にうまく展開できるだろうか。海の関係者が手を携えて漁業復興できる日が来ますように。大好物の寿司をつまみながらそんなことを考えた。

 

原子炉の冷却水のなかで生きている生物

2011年06月27日 | ひとりごと
 原子炉の冷却水の処理システムの正常稼動に向けて、今日も現場で格闘が続いている。今日はパイプの一部から水漏れがあったとか。なかなか正常稼動しないことを批判する声もちらほらと聞こえてくるが、知恵を持ち寄ってこれまでになかったシステムを新たに作り、世界で初めて動かすのだから、いろいろ予定外のことが起きても無理はないと私は思う。技術というものは通常そのようにトライ&エラーを経ることによって信頼に足るものが生まれる。ましてや、非常に厳しい環境下で作業が行われているのだから。

 さて、以下はこれに関係して私自身の今日のできごと。JST(科学技術関係のファンディングエージェンシー)が研究資金を出している現場を視察する目的で、かながわサイエンスパーク(KSP)を訪れることができた。KSPは、多くの研究開発型企業や研究組織がラボスペースとして集積している高層ビル群で(民間企業による経営)、イメージとしては筑波の学園都市をかなりぎゅっと濃縮したような感じ。

 最初に訪れた研究室は、慶大理工学部の中嶋敦教授をヘッドにした、「ナノクラスターの集積制御研究」の現場。
 ナノクラスターというのは、ごく簡単にいえば、原子・分子が「数個から数千個しかない」世界のこと。私たちが暮らしている世界は10の23乗個以上の原子・分子が周りを取り囲んでいる世界だから、かなり小さな世界。
 ナノテクという言葉がメジャーになって久しいが、そういう原子や分子の配置を数個から数千個のレベルでデザインして、全く新しい機能をもった物質を作り出せるところに来ている。ナノメートルレベルの精密集積構造を作ったり、制御したりということが可能になりつつある。

 それだけでもじゅうぶんすごいと思うのだが、どうせ作り出すなら、「有用な機能をもった新素材を作りたい。」そんな教授の言葉が耳に残った。

 帰り道、電車に揺られていて、ふと思った。
 ならば放射線耐性をもつ新素材、あるいは高収率で放射性元素をとりこむ新素材の可能性はどうか。そういえば、生物のなかには、地球の大気圏外すれすれの、放射線がバンバン宇宙から飛んでくるところに住んでいる、とんでもなくタフな生物がいて、アストロバイオロジーの研究者からも注目されている。
 ミクロコッカス・ラジオデュランスという微生物が有名だ。殺菌のために高レベルのγ線をあてた缶詰のなかから見つかったというから、生物の生命力は人間の知恵を軽く飛び越えているとつくづく思う。この微生物が放射線をシャットアウトしている機構がわかれば、それを真似して、もっといい機能を持った新素材ができるかもしれないではないか!そうだ、さっそく教授にこのことをメールして教えてあげなければ。

 帰宅後、はやる気持ちを押さえて、ミクロコッカス・ラジオデュランスのことを書いてある本を調べた。すると、なんとそこにはこんなことまで書いてある。

 シュードモナス・ラジオデュランス(Pseudomonas radiodurans)という細菌は、原子炉の冷却水のなかでも生存している。『極限環境の生命』D.A.ワートン(シュプリンガー)

 おお、これだー!私が求めていたものは。

 しかし、喜びもつかの間、続く一文に次のように書いてあった。
 
 これらの生物が高レベルの照射にさらされても生存できるのは、効率のよいDNA修復機構を持っているからである。

 なーんだ。つまり、この放射線耐性の微生物は、放射線に対して「壊れない体」ではなく、「直せる体」をもっている。システムの問題なので、新素材云々という話とは無関係。もしかしたら遠い将来、人間のDNAに人工的にそのような修復機構を組み込める日が来るのかもしれないが、それはまた別の話。というわけで、教授に連絡しなくて良かった。

 蛇足:生物の放射線耐性というのは上記の仕組みなので、「微生物が放射性物質を浄化する」などの詐欺には遭わないように気をつけましょう。

 じつは今日はもうひとつ、KSPに居を構えている全く別の研究現場(こちらはベンチャー企業)も訪れることができ、こちらも非常に面白かった。それについてはまた後日。

20歳のときに知っておきたかったこと ティナ・シーリグ

2011年06月26日 | ひとりごと
 同名の書籍を少し前に読み、大変感銘を受けた。この本の存在をもう少し早く知っていたら、経団連の「新入社員に贈る一冊」にはこちらを推薦していたと思う。

 スタンフォード大学のアントレプレナーセンターで、講座を持っている著者が、大学生の息子のために書いたという設定。でもそれ以上に、その精神がすべての人生を切り拓く上で大切なことを、改めて感じさせてくれる。

 若者の元気がなく、安定をのぞむ傾向が強いといわれる昨今。しかし、それは実は大人が勝手に作り上げたステレオタイプではないかと感じるのは、この本が発売されてからわずか2ヶ月で9刷の版を重ねているという事実。このことをふまえて、あとがきは書き直したほうがいいかもしれない。

 
 
 

脅威と戦う

2011年06月06日 | ひとりごと
 現在、国の委託を受けて、複数の研究機関と大学が行っている地震研究のひとつに、「東海・東南海・南海地震の連動性評価研究」というプロジェクトがあります。

 聞いたことのある方も多いと思いますが、過去の大地震の履歴から、東海地震、東南海地震、南海地震の3つの海溝型地震が、ほぼ同時に連動して発生する可能性が高いとみられています。そこで、来たるべきXデーのために、(予知への道も模索しながら)メカニズムの研究、リアルタイムモニタリング、そして防災計画を一体的に研究しようというプロジェクトです。

 当初3月末に開催される予定で、東日本大震災のために延期されていた平成22年度の成果報告会が本日開催され、私も出席しました。
 東海・東南海・南海地震の研究の成果発表会ですので、一年間の研究の進捗報告が中心ではありますが、どのテーマから始まっても、結局は東日本大震災を事前に誰も察知できなかった反省と、いかに次の地震に役立てるべきかということに収斂しました。

■地震学者は立ち上がっている
 地震学は理学のなかでもほかの分野と違って、社会的な影響の大きい課題を対象にしているため、使命感を強く意識して仕事をしている研究者が多い分野です。それだけに、今回、地震学が事前の情報発信などに貢献できなかったことに強いフラストレーションを感じている人が多いと思います。

「現在の地震学が不十分であったことをまざまざと見せ付けられた。少しでもマシにしないと、亡くなられた方々に報いることができない・・・」

「3.11を境にしてわれわれは変わった。どれだけ備えが十分だったのか。この国に住む限り、来るべき脅威と戦っていかなければいけない・・・」

「後付けで考えてみれば、少し前から変な動きをしていた。それなのに異常さに気づけなかった」

 地震学者として今回の地震を全く予測できなかったことに対する忸怩たる思い、具体的な反省点、どうしたら次の大地震に今回の教訓が生かせるか、そのために今すぐ何に着手すべきかといった提案など、真摯な発言が相次ぎました。そこには、いい論文を書きたいということとは別の強い意志を感じました。
 地震活動期に入ったとされる日本列島。そこに住む地震学者の士気は高まっています。今後、新たな知見が次々と明らかになると思います。研究結果はたとえ不確定であっても、住民の安全に繋がる情報であれば、できるだけ早く、うまく伝えて、防災に役立てなくてはいけません。
 地震学者だけでなく、多様な役割をもった人が力を合わせていかに被害を減らせるか。それが、地震国日本に住む私たちに課せられた戦いなのだと改めて思いました。

■釜石の防災教育
 研究を進めて防災に役立てることも大事ですが、今できることを確実にやることがまずは大事なのでしょう。
 今日も話題に上ったのですが、釜石市では児童生徒のほぼ全員が、津波を逃れて無事でした。その鍵となったのは、群馬大学の片田敏孝教授(災害社会工学)による防災教育でした。

奇跡はいかに起きたか(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110517-00000131-san-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110531-00000133-san-soci

(1)想定を信じるな(2)最善をつくせ(3)率先避難者たれ
実際的な教えと、周到な避難計画、入念な避難訓練。ここにヒントがあるように思います。
 

放射性物質を分解するなどの詐欺にご注意を

2011年05月31日 | ひとりごと
 最近、「微生物を使って放射性物質を分解する」などと謳った詐欺があるようです。放射性物質は、いかなる生物を使っても分解することはできません。

 すべての生命活動は「分子」を切ったり貼ったりするおだやかな反応で成り立っています。
 一方、放射性核種を別の安全な核種にするには、「原子核」を切ったり貼ったりする反応(高エネルギーの反応)が必要です。生物にはそんなことはできません。

 ですので、微生物であれ、巨象であれ、「生物を使って放射性物質を分解する」と言った瞬間に、それはウソです。
 人の弱みにつけこんだ卑劣な詐欺行為は許せません。