瀧澤美奈子の言の葉・パレット

政を為すに徳を以てす。たとえば北辰の其所に居りて、衆星の之に共(むか)うがごときなり。

4月ですね

2015年04月08日 | ひとりごと
気がつけば新年度に入っていました。昨年度は後半から引越準備やら何やらで忙しかったですが、少しだけ落ち着いてきました。

昨年度は三鷹市民大学のメイン講師をさせていただいて、準備がとても大変でしたが、いい経験になりました。
講演は何度やっても緊張しますが、受講者の方々とのやりとりが楽しいです。
面白がってくださる点がどこかを知ることも楽しいし、気がつかなかった論点に気づかせてもらったりもしました。

今年は、新たに時事通信社の連載が新しい企画でスタート。
信濃毎日新聞では書評委員をさせていただきます。
年の前半は大学の授業もあるし、6月には世界科学ジャーナリスト会議で漁業について英語のプレゼンをしますのでその準備も。
後半は、講談社の連載を本にまとめたいと思っています。

チャレンジづくしですが、楽しんでいこうと思います。
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科学データは世界を変えられるか

2013年11月28日 | ひとりごと
 温室効果ガス削減をめぐる国際会議COP19が23日、新興・途上国を巻き込んだ温暖化対策の2020年以降の次期枠組みとして「自主目標方式」を導入することを決定し閉幕した。自主的に参加した国だけに強制的に温暖化ガスの削減幅を割り振るしかなかった「京都議定書」からの大きな転換であり、一定の成果といえる。ただ、自主目標では自国に甘い目標設定をするのではないかという疑念もあり、新たな枠組みの下で、温暖化防止にほんとうに効果のある削減が実現できるかどうかが課題となる。各国の国益をかけた交渉の難しさに、あらためてため息の出る思いで見ている。

 一方、このような「表」の動きとはべつに、気候変動への適応という文脈のなかで、各国政府と国際機関、そして科学者による、「地球観測データを活かした国際協力」がはじまっている。タイムリーに地域に必要な観測情報や技術の提供を行うことで、おもに発展途上国の環境リスクを低下させようという国際協力プログラムである。日本政府もアフリカとアジアで取り組みを行っているが、一般的にはあまり知られていないと思うのですこし紹介してみたい。

 21世紀は「水の世紀」といわれる。しかし、たとえばアフリカでは渇水リスクが高いにもかかわらず5%の水資源しか使われていない。貯水や洪水対策が必要だ。だが、どうやったらよいか。投資に見合った成果を出すためには、いつ、どの場所が、どのように水に対して脆弱かという観測データが欠かせない。
 観測データを政策に役立たせるには、さまざまな手段で得た膨大なデータを情報として活かすノウハウが必要だ。人工衛星で得たデータ(土地利用形態の把握、植生、重力計測による土壌の保水量、河川の状態、気温、降水量、標高などの地理情報)と地上で得た観測データ、また貧困層がどこに住んでいるのか、開発のリスクにさらされている地域はどこかといった社会データを組み合わせることにより、その地域に必要な水資源対策に役立てる手法である。

 観測データをアジアやアフリカでの洪水や渇水など水資源管理に役立てるプログラムは、東京大学の地球観測データ統融合機構のイニシアティブによるもの(出資は文科省)で、アジアに関してはAWCI(Asian Water Cycle Initiative)、アフリカに関してはAfWCCI(Africa Water Cycle Coordination Initiative)というプログラムである。現地研究者のキャパシティビルディング(能力開発)を含めた国際貢献という側面と、膨大な観測データをタイムリーな水資源管理に役立てるノウハウの開発という先端研究との接点に存立している。科学技術を用いた外交の一部とも位置づけられる。
 ただ、本当に発展途上国で必要とされる対策を行うためには、地域の実情に合わせた提案(研究)でなければならない。その意味もあって、25-27日にかけてアジア、アフリカ各国から関係者を招き、東京大学でAWCI、AfWCCIの初のジョイントシンポジウムが開催された。


 このシンポジウムはGEOSSも主催者となった。GEOSS(http://www.earthobservations.org/geoss.shtml)とは、世界89カ国の科学者や機関が集めた地球観測データを風通しよく流通させ、お互いに使いやすくしようという政府間の取り組みであり、日本は主要参加国として立ち上げから10年間主導的役割を果たしている。

 このようなプロジェクトを見るにつけ思うのは、「科学的な事実に基づいた合理的な選択には国境がない」ということである。観測データを公開し、相互に流通させることができれば、そこから導かれる「やるべきこと」は誰の目からみても明らかである。イデオロギーも経済も国益最優先も通用しない。裏を返せば、だからこそGEOSSへの協力の程度にせよ、国によって濃淡があるともいえる。そうした事情もふまえると、データの積み重ねだけで世界を変えていくというのは無理にしても、個々の課題に対しては是々非々の議論の土台として観測データがさらに重視されることを期待したい。

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もうすぐ校了

2013年06月17日 | ひとりごと
執筆中の「日本の深海」がもうすぐ校了です。この週末はゲラの最終チェックで缶詰でした。
来週はヘルシンキなので相変わらず忙しい毎日です。
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あけましておめでとうございます

2013年01月02日 | ひとりごと
あけましておめでとうございます。
皆様にとってよい一年になりますよう、心より祈年申し上げます。

窓の外には、つぼみを真っ赤にした冬薔薇。
北風のなかで、うつむきかげんに人知れず咲く花に、万物の美の原点を
見る思いがいたします。

禍福は糾える縄のごとしとはよく言ったもので
厳しいこともあろうかと思いますが
心に一輪の薔薇のつぼみを忘れないようにしようと思います。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

瀧澤美奈子
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時の移ろいの中で

2012年10月12日 | ひとりごと
 しばらくブログを更新できませんでした。
 どのような形であれ、私にとって文章を書くということはいくばくかの精神の支えを必要とするものです。そして、9月初旬から始まった状況は、われながら情けないことに、その力を奪うものでした。
 gooブログの運営方針のなかには、このようにひ弱く、ちょっとした向かい風にあって立ち止まってしまうユーザーへの配慮はないようです。が、こちらは無料で勝手に使っているのだし、文句を言える筋合いではない。今の世の中とはそんなものでしょう。

 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」とは、鴨長明の『方丈記』の冒頭ですが、年をとるごとに、この先人の知恵がiPS細胞の発明よりも、人類にとって優れた財産であるように思えるのは、この技術を過大評価しすぎというものでしょうか。
 先人が累々と積み上げた「死への構築力」への尊念が、科学の名のもとに、願わくば軽視されることがありませんように。
 「朝に死に、夕べに生まるるならい、ただ水のあわにぞ似たりける」
 私たちの祖先は、自然のなかから多くを学んできたのです。
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震災から1年

2012年03月11日 | ひとりごと
 今日で震災から一年が経過しました。
 東京で日常生活を送っていると、なかなか現地の全体的な状況が分からず、また、被災の傷跡を目にすることのない日常にいつのまにか慣れてしまっているという感じが、ずっと私の心の中にありました。
 丸一年ということで、追悼式典が行われ、メディアも特集を組んでいます。しかし、明日は1年と1日目、明後日は1年と2日目。イベントではない現実の時間が明日からも続きます。

 地震発生時刻の14:46に目を瞑り、黙祷しました。これからも大変困難な状況を強いられ続けるであろう被災地の方々ことを忘れてはならない。このことを、しっかりと胸に刻む込む祈りにしようと思いました。

 しかし、直接被災地に行って支援ができない私たちになにができるのか。
 1.政治や行政にきちんと働いてもらうように、選挙の投票などを通して私たちの声を伝えていくこと。これはもちろん、必要なことです。

 2.それから、できるだけ被災地の産品を購入したり、義援金を送ったり。これには支援を受ける側の体制も整わなくてはなりません。科学技術も信頼の基礎を固めるために、全力投球で取り組んで、もっともっと役立ってほしいと思います。

 3.さらに身近に個人的にできることを考える。たとえば「激励の手紙を書く」ということ。被災地に直接知る人がいないので、購入した物品の住所に宛てて、「お返事はいりません」ということで送ったら、少しでも復興の励ましになるでしょうか。

 写真は、近所の小さな呉服屋さんのショーウィンドウで見つけた、お菓子のマカロン形をした小物入れです。福島から東京のお台場に避難されている女性が手慰みに作られたとのこと。呉服屋さんの女将と古くからのご友人なのだそうです。福島では菜園で土いじりが生きがいだったのが、お台場では土に触れることすらなくなって・・・。
 通りがかりに、あまりに可愛いので目について、そんな話を伺いながらいくつか購入しました。「もっとたくさん欲しい」と言ったら、女将さんは涙ぐんでしまって。気の毒にも思ったけど、だって、すごく可愛いんですもの。その後どうしていいか分からなかったけど・・・そうだ、手紙を書こう。
 

 
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新しい年を迎えて

2012年01月01日 | ひとりごと
 年を重ねるにつれて1年があっという間に過ぎてしまう気がしますし、新年の感動が薄れているとも感じますが、今年は今まで生きてきた中で、どの年とも違う新年です。

 新しい年を素直に喜べないような、重荷を背負ったような心のつかえは、やはり被災地のことやいろいろな心配事があるからかもしれません。

 それでも、今の一瞬一瞬が人生のひとコマですから、悲観せずに焦らずに、でも前を向いて旅を続けよう。同じ思いを持っている人たちと共に。そんなことを思っている年明けです。

 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
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震災から8ヶ月

2011年11月16日 | ひとりごと
 3月11日に発生した東日本大震災から8ヶ月がたちました。東京での生活は震災以前の日常に戻り、スポットで流れてくる断片的なニュースからは被災地の状況が実感としてはよく分からないと思っていたところ、11月11日から12日の2日間、機会があって岩手県大槌町を中心に被災地を訪れることができました。
 
 がれき集積所以外はほとんど何も残っておらず、津波の爪跡が今も痛々しく残る風景写真を載せるのはやめます。町には復興に向けて懸命に第一歩を踏み出そうとしている皆さんの営みがありました。厳寒のなかで開花に向けた準備を人知れず行う桜が、ようやく枝に小さな花芽をつけたように、まだそれはあまり人目につかないのです。



11日にオープンしたおらが大槌復興食堂。津波で被害を受けた商店主や水産加工会社などが作る社団法人による復興食堂。被災者の雇用に対して補助を出す町の事業を活用したもの。




特選海鮮丼(500円)。まさか今回、大槌でこんなに美味しい海鮮丼が食べられるなんて!正直感動しました(ちなみに中央に乗っているのは甘エビではなくボタンエビサイズのエビです。とろっとして甘くておいしかったー)





町の復興計画案について、行政から委託を受けた都市計画のコンサルタントの話を聞く山間地域の人々。地震発生時の避難路の確保や将来の産業構想など、前向きな意見が住民から出されました。




多くの人が、大切な人や家を失った沿岸地域での復興会議の様子。二度と悲劇を繰り返さないためにどうしたらいいか、新たな町づくりに向けた要望が多く出されました。ちなみに、3ヶ月前まで(8月まで)この体育館は避難所として使われていたそうです。


会議が始まる前も中も後も、私は地元の人たちの笑顔を見ませんでした。重い足取りで仮設住宅に帰っていかれる皆さんに一日も早く笑顔が戻りますように、と心の中で願いました。


 


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”六重苦”に思う

2011年09月30日 | ひとりごと
 最近新聞で”六重苦”というのをよく目にする。「円高、法人税、貿易自由化の遅れ、労働規制、温暖化対策、電力」という6つの制約によって、製造業が苦しんでいる、そして、日本に生産拠点を置き続けることができず、中国などに移ってしまうことらしい。
 その是非はともかく、29日の新聞には、リチウムイオン電池のような戦略製品までも生産の半分を中国に移すことを決めた企業(パナソニック)が出始めたということが報じられている。
 ショッキングだが、半導体や液晶などがそうであったように、海外流出の流れは止められない。今後、リチウムイオン電池のような分野では、つねに先端技術を開拓し、先頭を走り続けながらも、後発国の追い上げによって生産拠点が海外に移転するという現象は必然なのだろう。結果として、国内雇用の創出にはつながらないし、単独では長期的な産業としての発展性はあまり望めないという構図。20世紀後半の米国を見ているようだ。結局、日本は”脱工業化”の最終コーナーにいるということなのだろう。今は優位を保っている自動車のような分野も、じつは最終コーナーが近いのではないかということを予感させる。
 コーナーを曲がった先に何が見えるか。

 かつてその曲がり角で大いに苦しんだ米国は、苦しみの中からいくつかの解を見出した。IT、金融、医療など、先端技術とサービスを組み合わせ、新しい需要に対して他が容易に追従できないような価値を作り上げるということだった(と思う)。
 たとえば、それは製品を単独で売っておしまいではなく、コンセプトとパッケージにすること。彼らの到達点を抽象的に表すとこの2語になるのだという指摘はなるほどと思う。コンセプトを示し、パッケージ化し、ユーザーとのつながりを保つ中でサービスを提供し続けるwin-winの関係。身近なところではiPhoneしかり、googleしかり、amazonしかり。

 日本企業のスタイルは何なのだろう。日本はいま、産みの苦しみの中にあると思うけれど、おそらくそれは創作の苦しみと似ていて、決して楽なことではない。しかし、とても楽しいことである。できるだけ既成の概念にとらわれず「こんなことができたらいいのにな」ということを思いきり夢見て、それを実現する方法を考えてみる。実現のために高度な科学技術の出番が必要なものは良し。社会に貢献できればもっと嬉しい。わくわくしながら夢を語りあって、アイデアを出し合う。日本の津々浦々で、そんな雰囲気になったらいいなと思います。



 
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ヒマワリにセシウムの除染効果なし 農水省

2011年09月16日 | ひとりごと
 昨日のニュースですが、一応記録として書いておきます。
 農水省が福島県飯館村で行っていたセシウム除染の実証実験の結果、ヒマワリなどの植物ではほぼ効果がないことが明らかになりました。表土を削り取る方法がもっとも効果が高かったということです。
 
http://www.asahi.com/national/update/0914/TKY201109140656.html

 今後、具体的にどのようにしたら広大な面積の表土を削って、効果的に除染できるのかという方法を見つけ出さなければなりません。化学物質で土を固めてから削る方法や、削り取った土からセシウムを回収するのに、プルシアンブルーのナノ粒子を添加する技術など、現在急ピッチで研究が進められていますので、協力して一日も早い技術の確立に至るように期待したいと思います。

http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20110831/pr20110831.html 

 そもそも、ヒマワリが除染に有効かもしれないというニュースが流れた4月中旬の当初から、その実現の難しさを的確に指摘していたのは私が知る範囲で、朝日新聞と農業新聞だけでした。
 
 仮にヒマワリに除染効果があったとしても、その成長したヒマワリをどう処理し、最終的に濃縮されているかもしれない放射性物質をどう処分するのかがまったく不明でしたので、落ち着いて考えれば難しいということは専門家でなくても予想ができることでした(が、私もふくめヒマワリに一縷の望みを託してしまった・・・)。

 そんななか、ある研究者が、処分方法や効果が未知数ということを百も承知でありながら、「とにかく種をまこう」とメディアで訴え、高校生に実験をさせ、所属する研究機関のブランドと相まって、多くの人の注目を集めたという一件がありました。
 もともとの動機は「福島の人たちをなんとか助けたい」という純粋なものであったと推測しますが、その後、目的が変質してしまったようでした。実証されていない技術をいきなり大規模に被災地に展開しようという、子どもじみたものへと変質したのです。

 その後、まわりの強い意見によって彼らは軌道修正し、今年は小規模な実験に留めるということになりました。その路線で、先日もテレビの人気番組で、芸能人が福島でヒマワリの種をまいているところが放映されたばかりです。ところが関係者に聞いたところ、所属機関は彼らがその所属名を使い、建物を撮影させてテレビに出演することを知らなかったようです。視聴者は当然、その研究機関が主導して行っている研究だと受け止めたはずです。ここには大変な乖離があります。

 なぜこんなことが起きたのでしょうか。
 基本的に彼らは自由なのです。そもそも科学を目的とする研究機関というのは大学と同じで「学問の自由」が認められているため、所属する研究員の行動を正当な理由なく制限することはできません。逆に言うと、研究者には尊厳が認められる代わりに、見識が備わっていることが前提となっているのです。

 少しわき道にそれました。
 今回、農水省の実験結果が世間一般に周知されたことで、(ヒマワリに効果なしという結果は)期待を寄せていた多くの方を落胆させるものでしたが、次の一歩のための重要なステップだったと捉えたいと思います。


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