(今日の話は完全なフィクションです
興味無いわ、という方、ごめんなさい。
長い上にオチも無いです。ごめんなさい・・・(汗)
それでもよろしければどうぞ・・・)
天界では、その日もホーム(猫♂天界歴2年)と、どら(猫♂天界歴1年)が、
下界を眺めながら晩酌をしていた。
こう見えて甘党のホームは、麦チョコをつまみにバーボン、
こう見えて辛党のどらは、イカの姿フライをつまみに、焼酎だ。
寝るのが仕事の猫だが、
天界でも古参ともなると人生相談やら道中案内やら、何かと忙しい。
二人にとって晩酌は一日の疲れを癒す貴重な自由時間なのだ。
下界時代から顔見知りだった二人は、天界で再会しても自然とつるむ機会が多かった。
心置きなく広島弁で語り合えるせいもあるだろう。
お互い貫禄のある風貌のためか、周りの猫達から頼られることも多い者同士、息抜きも遠慮は要らない。
そんな晩酌タイムだが、
ここ数ヶ月は呆然と下界を眺めるばかりで、酒を呑む気にもならなかった。
普段なら気持ちよさそうに眠る下界の猫達を眺めながら呑気に昔話に咲かせるのだが。
やっと春になり、桜も散る頃には弔いの気持ちから二人は晩酌を再開した。
震災をなんとか乗り越えた猫達の無事をささやかに喜ぶ日々。
少しずつではあるが、天界にも「日常生活」が戻りつつある。
猫たちが下界を気にするのには訳がある。
いつかまた生まれ変わった日の事をあれこれ想像することもある。
それぞれの飼い主のことはもちろん気になるし、
外の厳しい生活にも踏ん張って耐えている猫たちのことも気になるのだ。
ホームにも、どらにも、それぞれ「気になる」猫がいた。
生身の猫生活の間に知り合った猫のことや、
会ったことはないが噂に聞いた猫のこと。
生身の猫であれば、行動範囲は限られている。
いくら噂になっているとはいえ、
おいそれとは会うことはできない。
そんな猫たちでも、ここからならよく観察することができる。
ここぞとばかりにウォッチングを始める天界猫も多い。
もちろん下界の当事者・・・いや、当事猫はそんなこと、
これっぽっちも気付いてはいないのだが。
ホームはずっと気になっていた。
噂では、自分とそっくりらしい、と聞いていた。
天界に渡った時、真っ先にその猫を探したのだ。
場所はだいたい知っていた。
自分の住んでいた土地よりも、ずっとずっと北の方角。
冬は寒い土地だけれど、ニンゲンにとても大事にされている、と聞いていた。
そいつのことは、北の街で見つけた。
血の繋がった家族と暮らしていた。
きょうだいも親も知らない自分には無い幸せを見ることができて、
ホームは目頭が熱くなった。
こう見えて、この強面(こわもて)のオトコ達は涙もろいのだ。
「柄が似とるところはもちろんなんじゃけどのぅ。
自分で言うのも何じゃが・・・
いい面構えしとるところなんかそっくりなんじゃ。」
とホームが呟くと、
「自分に似とる、思うたら、他人事じゃないわいね」
とどらも答える。
二人の顔はほころんだ。
どらにも気になる「そっくりさん」が居るに違いない。
こうして、彼が今日も元気でよく眠れているか、
一日の終わりに確認することがホームの日課となっていた。
少し具合の悪そうな日は、何もしてやれない自分に腹立たしい思いをしながら・・・
地上を震災が襲った時、
ホームが真っ先に思い浮かべたのは、彼のことだった。
なぜなら、地震が襲ったのは、彼の住む街だったからだ。
幸い、彼は無事だった。
何もかも飲み込んだ津波は、
彼の街までは届かなかった。
そして、ホームやどらの知り猫は、誰も天界には送られなかった。
「自分勝手だな」と思いながらも、ホームは内心、ホッとしていた。
その後も、気にはしていたのだ。
しかし、あの日以来、暫くの間は、
下界も天界も、今まで誰も見たことの無いような慌しい日々が続いた。
ホームもどらも多忙を極め、記憶も少し曖昧になっていたかもしれない。
そして、その日は突然やってきた。
陽気に誘われて、どらと、うとうと船を漕いでいたホームの視界の端に、
どこかで見たような猫影が飛び込んできたのだ。
「ぶさ!!!」
ホームは思わず飛び起きた。
記憶の糸を辿ってみた。
「ぶさを最後に見たのはいつだ!?」
思い出せない。
ぶさは体調が悪かったか?
メシは食えていなかったか?
薬を飲んでいたか?
・・・・思い出せない。
「自分が生身のぶさを見たのは、
あの震災の日が最後だったのかもしれない。」
ホームは激しく後悔した。
見守っていたからといって元気になるわけじゃないことは分かっていたけど、
それでも後悔した。
どらは掛ける言葉が見つからなかった。
ぶさは、戸惑っていた。
さっきまで、何だか体が重くて仕方なかったのに、
ふと気付くと、仔猫の頃のように、コロコロと体が動くようになっていた。
「なんだろ。
っていいうか、ここ、どこ?」
どこへ行って何をすればいいのやら・・・
「どうしよう。
もしかして、アレかな・・・
長老猫がよく言ってた、『あっちの世界』ってのかな?
どうしよう。
長老の話、よく聞いてなかったからなぁ。
どうしたらいいか、よくわかんないよ・・・
年寄りの話はウザくてもよく聞いとかないといけないなぁ・・・
でも、ホントにどうしよう・・・」
最後は涙目になっていた。
そう、ぶさは、病との闘いを終えて、
天界に招かれたのだ。
涙目でおろおろするぶさを見て、
ホームの顔が少しだけほころんだような気がした。
ホームを見つめていたどらは、少し驚いた。
「放っとけんのぅ。
最近の若い者(もん)は、『あの世』のことをよう知らんのじゃ。
年寄りの話はウザくても聞いとくもんじゃ。
のう、どらさんよ。」
歩き出したホームは、すっかり笑顔に変わっていた。
それを見てどらも慌てて後に続いた。
おろおろうろうろしているぶさの後ろに立つと、
ホームは、
「お疲れさん」
と言いながら、ぶさの肩を、ぽんっと小気味よく叩いた。
びくりっと振り返るぶさ。
その瞬間、
「うわあああああああああああああっ!」
と、3馬身も飛び上がった。
「ホームさんよ、強面で怖がらせちゃいけん・・・」
と、どらが声をかけようとした時、
「そ・・・・・・・そそそそ・・・・そっくり!!!」
ぶさは腰を抜かしながら、ぼそりと言った。
「そっちかい!!」思わず、ホームとどらはハモった。
相変わらず腰を抜かしたままのぶさを尻目に、
ホームもどらも、笑いを堪えることができなかった。
そんな二人を見ているうちに、
ぶさも、なんだか心細い気持ちが和らいだような気がして、
少しだけ笑い返すことができた。
「ちょっと早過ぎるような気がするが。
今までよう頑張ったのぅ。
ようこそ、そっくりさん」
ホームがぶさに手を差し伸べる。
立ち上がったぶさも笑顔になっていた。
ぶさは嬉しくなった。
「よろしくね~~~!!!」
「タメ口かいっ!!!!」
と、ダブルでツッこまれたのは言うまでもない。
おしまい。
興味無いわ、という方、ごめんなさい。
長い上にオチも無いです。ごめんなさい・・・(汗)
それでもよろしければどうぞ・・・)
天界では、その日もホーム(猫♂天界歴2年)と、どら(猫♂天界歴1年)が、
下界を眺めながら晩酌をしていた。
こう見えて甘党のホームは、麦チョコをつまみにバーボン、
こう見えて辛党のどらは、イカの姿フライをつまみに、焼酎だ。
寝るのが仕事の猫だが、
天界でも古参ともなると人生相談やら道中案内やら、何かと忙しい。
二人にとって晩酌は一日の疲れを癒す貴重な自由時間なのだ。
下界時代から顔見知りだった二人は、天界で再会しても自然とつるむ機会が多かった。
心置きなく広島弁で語り合えるせいもあるだろう。
お互い貫禄のある風貌のためか、周りの猫達から頼られることも多い者同士、息抜きも遠慮は要らない。
そんな晩酌タイムだが、
ここ数ヶ月は呆然と下界を眺めるばかりで、酒を呑む気にもならなかった。
普段なら気持ちよさそうに眠る下界の猫達を眺めながら呑気に昔話に咲かせるのだが。
やっと春になり、桜も散る頃には弔いの気持ちから二人は晩酌を再開した。
震災をなんとか乗り越えた猫達の無事をささやかに喜ぶ日々。
少しずつではあるが、天界にも「日常生活」が戻りつつある。
猫たちが下界を気にするのには訳がある。
いつかまた生まれ変わった日の事をあれこれ想像することもある。
それぞれの飼い主のことはもちろん気になるし、
外の厳しい生活にも踏ん張って耐えている猫たちのことも気になるのだ。
ホームにも、どらにも、それぞれ「気になる」猫がいた。
生身の猫生活の間に知り合った猫のことや、
会ったことはないが噂に聞いた猫のこと。
生身の猫であれば、行動範囲は限られている。
いくら噂になっているとはいえ、
おいそれとは会うことはできない。
そんな猫たちでも、ここからならよく観察することができる。
ここぞとばかりにウォッチングを始める天界猫も多い。
もちろん下界の当事者・・・いや、当事猫はそんなこと、
これっぽっちも気付いてはいないのだが。
ホームはずっと気になっていた。
噂では、自分とそっくりらしい、と聞いていた。
天界に渡った時、真っ先にその猫を探したのだ。
場所はだいたい知っていた。
自分の住んでいた土地よりも、ずっとずっと北の方角。
冬は寒い土地だけれど、ニンゲンにとても大事にされている、と聞いていた。
そいつのことは、北の街で見つけた。
血の繋がった家族と暮らしていた。
きょうだいも親も知らない自分には無い幸せを見ることができて、
ホームは目頭が熱くなった。
こう見えて、この強面(こわもて)のオトコ達は涙もろいのだ。
「柄が似とるところはもちろんなんじゃけどのぅ。
自分で言うのも何じゃが・・・
いい面構えしとるところなんかそっくりなんじゃ。」
とホームが呟くと、
「自分に似とる、思うたら、他人事じゃないわいね」
とどらも答える。
二人の顔はほころんだ。
どらにも気になる「そっくりさん」が居るに違いない。
こうして、彼が今日も元気でよく眠れているか、
一日の終わりに確認することがホームの日課となっていた。
少し具合の悪そうな日は、何もしてやれない自分に腹立たしい思いをしながら・・・
地上を震災が襲った時、
ホームが真っ先に思い浮かべたのは、彼のことだった。
なぜなら、地震が襲ったのは、彼の住む街だったからだ。
幸い、彼は無事だった。
何もかも飲み込んだ津波は、
彼の街までは届かなかった。
そして、ホームやどらの知り猫は、誰も天界には送られなかった。
「自分勝手だな」と思いながらも、ホームは内心、ホッとしていた。
その後も、気にはしていたのだ。
しかし、あの日以来、暫くの間は、
下界も天界も、今まで誰も見たことの無いような慌しい日々が続いた。
ホームもどらも多忙を極め、記憶も少し曖昧になっていたかもしれない。
そして、その日は突然やってきた。
陽気に誘われて、どらと、うとうと船を漕いでいたホームの視界の端に、
どこかで見たような猫影が飛び込んできたのだ。
「ぶさ!!!」
ホームは思わず飛び起きた。
記憶の糸を辿ってみた。
「ぶさを最後に見たのはいつだ!?」
思い出せない。
ぶさは体調が悪かったか?
メシは食えていなかったか?
薬を飲んでいたか?
・・・・思い出せない。
「自分が生身のぶさを見たのは、
あの震災の日が最後だったのかもしれない。」
ホームは激しく後悔した。
見守っていたからといって元気になるわけじゃないことは分かっていたけど、
それでも後悔した。
どらは掛ける言葉が見つからなかった。
ぶさは、戸惑っていた。
さっきまで、何だか体が重くて仕方なかったのに、
ふと気付くと、仔猫の頃のように、コロコロと体が動くようになっていた。
「なんだろ。
っていいうか、ここ、どこ?」
どこへ行って何をすればいいのやら・・・
「どうしよう。
もしかして、アレかな・・・
長老猫がよく言ってた、『あっちの世界』ってのかな?
どうしよう。
長老の話、よく聞いてなかったからなぁ。
どうしたらいいか、よくわかんないよ・・・
年寄りの話はウザくてもよく聞いとかないといけないなぁ・・・
でも、ホントにどうしよう・・・」
最後は涙目になっていた。
そう、ぶさは、病との闘いを終えて、
天界に招かれたのだ。
涙目でおろおろするぶさを見て、
ホームの顔が少しだけほころんだような気がした。
ホームを見つめていたどらは、少し驚いた。
「放っとけんのぅ。
最近の若い者(もん)は、『あの世』のことをよう知らんのじゃ。
年寄りの話はウザくても聞いとくもんじゃ。
のう、どらさんよ。」
歩き出したホームは、すっかり笑顔に変わっていた。
それを見てどらも慌てて後に続いた。
おろおろうろうろしているぶさの後ろに立つと、
ホームは、
「お疲れさん」
と言いながら、ぶさの肩を、ぽんっと小気味よく叩いた。
びくりっと振り返るぶさ。
その瞬間、
「うわあああああああああああああっ!」
と、3馬身も飛び上がった。
「ホームさんよ、強面で怖がらせちゃいけん・・・」
と、どらが声をかけようとした時、
「そ・・・・・・・そそそそ・・・・そっくり!!!」
ぶさは腰を抜かしながら、ぼそりと言った。
「そっちかい!!」思わず、ホームとどらはハモった。
相変わらず腰を抜かしたままのぶさを尻目に、
ホームもどらも、笑いを堪えることができなかった。
そんな二人を見ているうちに、
ぶさも、なんだか心細い気持ちが和らいだような気がして、
少しだけ笑い返すことができた。
「ちょっと早過ぎるような気がするが。
今までよう頑張ったのぅ。
ようこそ、そっくりさん」
ホームがぶさに手を差し伸べる。
立ち上がったぶさも笑顔になっていた。
ぶさは嬉しくなった。
「よろしくね~~~!!!」
「タメ口かいっ!!!!」
と、ダブルでツッこまれたのは言うまでもない。
おしまい。