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三浦しをん「光」

2013年01月06日 | ま行の作家

 

集英社
2008年11月 第1刷発行
2008年12月 第2刷発行
297頁

 

 

理不尽をかいくぐり生きのびた魂に安息は訪れるのか

 

 

1987年5月6日の深夜
突然の津波に襲われた美浜島
生き残ったのは島民271名中、当時中学生だった信之、信之の同級生・美花、小学生の輔、輔の父親、灯台守の老人の5名のみ
ある秘密を抱えたまま島を離れ成長した3人
20年が過ぎ、再び3人が出会うことになるのだが…

 

島を去る前に信之が犯した罪
美花以外は知らないはずが、なんと生き残った全員が知っていた
そこには思い違いもあって、それが長い年月の後の彼らの出会いを余計複雑なものにしてしまいます

 

全く予備知識なく読み始めましたが、しをんさんがここまでの作品を書くのだという驚きに包まれながらの読了
自分は映画でも小説でも暴力を描いたものは好みませんが、本作は一字一句読みこぼしてはいけないような気持ちで読み終えました
どうしようもない理不尽から逃れられないで一生を送らざるを得ない信之の未来に光はあるのでしょうか
東日本大震災の前に読んでいたらまた違う感想をもったかもしれませんが、なんと言ってよいのか、自分の中で消化しきれない部分が残りました

 

 

美浜島は、暴力の痕跡を内包したまま、禍々しいまでの生命力で海のうえに再生していた。

そこで生き、そこで死に、いまもそこにつながれるひとたちの、あらゆる慟哭を飲みこみ、島は海中から身を起こす緑の巨人の背中のように、波間に厳然とあるのだった。

 

暴力はやってくるのではなく、帰ってくるのだ。

自らを生みだした場所――日常のなかへ。

 

 


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2 コメント

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光とは・・・ (たんぽぽ)
2013-11-12 20:56:32
何気なく読み始めて、津波のシーンでは驚いてしまいました。でも、東日本大震災以前に書かれた作品というのがまた、驚きでした。
結局、題名の「光」が何を指すのか、何処にも光などないような作品でありながらこの題名。
否応なくその深淵を考えさせられます。・・・が、結局私には考えがおよばず、降参状態。吉田実篤氏の文庫解説を参照あれ。
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たんぽぽさん (こに)
2013-11-16 16:20:42
他の作家さんでも、東日本大震災以前に書かれた作品なのにまさにあの震災を予見していたかのような内容のものが多くて驚きます。
あ~、早く本屋さんに行かねば!
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