2011年 ドイツ/英語、ドイツ語、ポーランド語
原題 DIE VERLORENE ZEIT
英題 Remembrance
原題は「失われた時代」、英題は「記憶」という意味
邦題に使われている「愛」
日本人はこの単語が好きなのですね
自分には英題がしっくりきました
千載一遇ともいえる偶然をきっかけに一人の女性が自分の過去と向き合う姿を描いた愛と再生の物語
実話に基づいているのだそうです
1976年、主人公ハンナ(ダグマー・マンツェル)は夫と娘と共にほどほど裕福にニューヨークで暮らしている
ある日テレビから聞こえてきた声が彼女を過去に引き戻す
蘇るのは第二次大戦中、強制収容所で出会い一緒に脱出、逃亡したトマシュ(レヒ・マツキェヴィッチュ)との過酷で哀しい記憶
1976年のニューヨークと1944年のポーランドを交互に映しながらハンナとトマシュの波乱の恋とハンナの夫、ダニエル(デヴィッド・ラッシュ)との複雑な関係が描かれます
深く愛し合っていたユダヤ人のハンナ(アリス・ドワイヤー)、政治犯のトマシュ(マテウス・ダミエッキ)は収容所からの脱出に成功する
1944年の若い二人は1976年とは違う俳優さんが演じています
無事トマシュの実家に辿り着くもトマシュの母親(スザンヌ・ロタール)はハンナがユダヤ人と知ると嫌悪感も露わに拒絶、トマシュが任務で出かけている間に高熱に浮かされて流産したハンナが眠っているのを幸いにナチス将校に彼女を引き渡すことを目論みます
危険を察知し間一髪で逃れたハンナは飾ってあったトマシュの写真を握りしめトマシュの兄夫婦が住む家に向かいます
このシーン、大声で罵り合ったり掴みあいの喧嘩をするなどはなく、じっと睨みあうだけの母親とハンナのバトルは見応えがありました
夫を亡くし、長男も次男もレジスタンス活動に身を投じている
ドイツ軍に接収された家でなんとか暮らしてはいるが、やっと顔を見せた次男が連れてきた恋人がユダヤ人でおまけに妊娠している
平和な時代であれば普通に暮らしていたはずの人が、戦時下では自尊心を失い普通の行動が出来ない、という人間の不条理さを彼女が体現しています
それに対し、兄夫婦もトマシュもハンナも強靭な意志を持って自分らしく生き抜こうとしています
兄夫婦の家で兄嫁マグダ(ヨアンナ・クーリーグ)と過ごす数か月は束の間の平安
やがて兄も帰ってきますがトマシュの行方は分からないまま
そこへ、ドイツ軍が降伏したため今度はソビエト軍に屋敷を没収された母親が荷物を持ってやってきます
トマシュが戻って来ないのはマグダのせいだと責め立てる母親
時を置かず来襲したソビエト軍に連行される兄夫婦
母親と二人では暮らせないと判断したハンナはトマシュに置手紙を残してベルリンを目指します
数日後、ようやく戻ってきたトマシュは母親からハンナは死んだと聞かされるのでした
置手紙はきっと母親が処分したのでしょうね
しかし、それは嘘で、ハンナは雪原で倒れているところを偶然通りかかった赤十字の車に助けられていたのです
1946年、ハンナは赤十字社からトマシュは推定死亡という報告を受け、過去を忘れ生きていくことを決心しました
その後、どこかでダニエルに出会い結婚、可愛い娘を授かり、この先もずっと幸せに暮らしていけるはずだった
はずが、1976年になりトマシュと思しき声を耳にしてしまったハンナ
夫や娘に内緒で赤十字社に再調査を依頼し、トマシュがワルシャワで生きていることを知ります
震える指でトマシュに電話をかけるハンナが老眼鏡をかけるシーンが、過ぎ去った年月を如実に表しています
ハンナはトマシュに会う為、ワルシャワに向かいます
その目的は、心から愛し、戦争によって引き裂かれた恋人への思慕ではなく、再会することによって本当に戦争を終わらせ、過去から自由になり新しい人生を始めることでした
その新しい人生のパートナーは夫・ダニエルであって欲しいと思いますがどうでしょうか
ダニエルがハンナの様子がおかしいのをやきもきしながら見守るあたりは、どういう展開になるのかドキドキしました
ラストシーンがシンプルで美しいです
戦争がもたらす悲劇、不条理、不幸
こういう映画を鑑賞した後はいつも言葉数が減り、考え込んでしまいます
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