原題・UTZ
訳・池内紀
白水社
2014年9月 発行
214頁
映画にしても書籍にしても邦題は無駄に長いことが多いと思います
『蒐集家』という言葉で読者の気を惹こうと?
それはさておき
幼き日、祖母の館でマイセン磁器の人形に魅せられたウッツは、その蒐集に生涯を捧げることを決意する
第二次大戦中、そして冷戦下のプラハで、ウッツはあらゆる手を使ってコレクションを守り続けた
ひとりの蒐集家の人生とチェコの20世紀史を重ね合わせながら、蒐集という奇妙な情熱を絶妙の語り口で描いた小説
物語は、1974年3月、ウッツ男爵の葬儀の様子から始まります
ウッツ自身が生前準備しておいた葬儀とお別れの朝食には20人の列席者があるはずなのですが、実際に姿を現したのはウッツと少なからぬ交友のあったイギリス人・オルリークと長年ウッツ家に仕えてきた女性・マルタの二人だけ
ディケンズ「クリスマス・キャロル」のスクルージ老人のような人物だったのでしょうか?
映画「おみおくりの作法」で取り上げられたような孤独死だったのでしょうか?
変わり者ウッツの蒐集した驚くべき数のマイセン磁器が彼の死と共に一夜にして消え失せます
一体何が起こったのでしょう
チャトウィンの絶妙な語り口にグイグイ引っ張られ、ほぼ一気読み
最後の8頁、そしてラスト1行に完全に魅せられました
「マイセン幻影」というタイトルで映画化されているとのこと(公開/1993年8月)
機会があれば観てみたいと思います
プラハを舞台にした作品というと、ミハル・アイヴァス「もうひとつの街」が思い出されます
作家では、チェコで最も有名と言われているカレル・チャペックもいますが「園芸家12か月」「カレル・チャペック短篇集」の2冊しか読んでいないので、読んだことのない作家さんというのと同じですネ
(^_^;)
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