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植松三十里「千の命」

2024年02月14日 | あ行の作家


小学館文庫
2017年9月 初版第1刷発行
解説・縄田一男
371頁

元禄十三年
二百石取りの彦根藩士の家に生まれた玄悦
長兄や次兄とは違い、母に厳しくされる日々に自分が母の実子ではないと感じていました
やがて、父のお手付きとなった下働きの八重が自分の実母であると知りますが、八重は次の子の出産のため里に戻され、そこでお腹の子がでてこられずに亡くなってしまいます
玄悦は母のような女性の命を救いたいと医者を志しますが許されず独力で鍼や按摩の技術を習得し京都に出ます
ある日、お産で苦しむ隣家の女性を自らの技術で救ったことから、世間で評判をとり、その技術を自ら回生術と名付けます
回生術とは死胎児に対して行われる産科手術で、玄悦がその技術を確立させるまでは母体も死に至ることがほとんどだったとのことです
玄悦は、他にも、きつすぎる腹帯はかえって身体によくない、座位分娩は母親の体力を奪う、胎児は生まれる少し前になってから頭を下にする、などなど
多くの妊産婦をみてきた経験から様々な意見を出し古い慣習に囚われている人々に疎まれながらも実績を積み重ねていき全国にその名を知られるようになりました
そんな玄悦ですが、家庭は順風満帆とはいかず長男、次男は出奔、長女は嫁がず産婆に、と悩ましい日々が続いていました
それらも、年月を経て解決していき78歳でその波乱の生涯を終えます
後に賀川玄悦の名は燦然と輝いて世界の医学史の中に刻まれることになるのです

タイトルの「千の命」は作中、幼くして母となった浮浪児に向けて玄悦が優しく語る言葉からとられています
千の命があれば、千の生きてく意味がある。みんな、その意味を探して、精いっぱい生きなあかん。誰でも、おかあちゃんが命かけて産んでくれはったんやから、大事に生きなあかん。

泣けました
現代日本では命が軽く扱われているように思えてなりません


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