goo blog サービス終了のお知らせ 

スティーグ・ラーソン 「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」

2013年04月24日 | 読書
話題になって時間がたってから読み始めるのはよくあること。
映画にもなった「ミレニアム」だが、評判どおりに、主たる登場人物の造詣がよく描かれていたし、昔ながらの旧家の秘密的なミステリーも匂わせて、厭きることなく読める。

読み終わって、ミカエル・ブルムクヴィストとリスベット・サランデルのこれからも気になるところではあるが、どうしても続編を読む気がしないのは、現代社会の闇に容赦なく向き合わなくてはいけないからかもしれない。経済社会の矛盾や、弱者が虐げられる階級社会の醜さを、また直視しなければならないのは、なかなかつらいものだ。

しかしながらこの一流のミステリーを書いた作者ラーソンの、ジャーナリストとしての気概が溢れる作品がずっと読み継がれていくのは確かだろう。
素晴らしい才能が早世したことを悼みたい。

春の院展  

2013年04月24日 | 美術
すっかり葉桜となり、季節はいよいよ連休モード。
疲れがたまってブログも滞りがちですが、少しづつ始めましょうか・・

久しぶりに「春の院展」(三越新館)。

4月8日、最終日となったこの日は結構な混雑で、狭い空間に相変わらず詰め込みの展示。
せっかくのよい作品もゆっくり鑑賞できず。若手の有望な作品も見逃しかねない場所に展示していて、あまりに気の毒。
いっそ会場は三越をやめてはどうだろうか?いろいろなしがらみやいきさつがあるのだろうが、三越でこれを見せられる者としては、大いに不満である。

今回の作品の中で光っていたのは。
同人では、
 手塚雄二《花夜》 清水達三《早春》 西田俊英《晨明》、宮北千織《ねがい星》が安定した筆致で、小さい画面を大きく感じさせる。
そのほか、
 実力派の、狩俣公介《凛烈》、松村公太《段》
 絹本が珍しい 中尾泰斗《捨身飼鯉図》(初入選)、
 個性がだんだん定着してきた 古谷照美《澪つくし》、荒木みどりこ《朝》
これからの日本画を牽引するだろう
 染谷香理《on/off》、武部雅子《菜の陽》、宮下真理子《水面の呼吸》
 
以上が今回の収穫でした。もう少し新人ががんばって欲しいと思う。




「フランシス・ベーコン展」   東京国立近代美術館

2013年04月03日 | 美術
3月14日。強風の中、東近の「フランシス・ベーコン展」へ行ってきました。

あまり知識をいれずに見てきたのだが、アイルランド出身で独学で絵画を学び、独特の肖像画を描き時の人となった彼の人物を見る目が、荒涼としたアイルランドの自然を彷彿と浮かびあがらせたように感じた。

その表現は、人体をいろいろな方向から不自然なかっこうをさせて、ありえない状態を描いたり、、顔の中に穴をあけたり、白抜きにしたりと特徴的な描き方だ。

ピカソのような抽象まで行き着かず、その少し手前で人物の特徴をわざとゆがめて描くことで、独特の人物像が浮かび上がる。
色使いも鮮やかなものもあるが、ほとんどが黒、グレー、白、青、ベージュをベースにしていて、《教皇のための習作Ⅵ》《スフィンクスⅢ》などからは対象を描く際にベーコンが重きを置いていたものは、色ではなくその質感とあるがままのものとしての、自然だったことがわかる。

また、身近な人物等を描いた作品《ジョージ・ダイアの三習作》《ジョージ・エドワーズの肖像のための三習作》のように三枚一組の描き方は、角度や時間、光、表情を変えながらも、その人物を通じて、その時々の自分の中の孤独や不安を表現しているように思える。

ストレートに感情が伝わるようで、心をゆさぶられた時間だった。

たまたまだが、来場者も外国人が多く、英国にいるような感じを抱かせたのかもしれないが、会場の雰囲気が無機質で冷たく感じられたのに反し、外に出たら皇居のお堀と春の生暖かい強風が日本を強く感じさせ、妙な違和感を感じる一日だった。