「どん底」 シアター・コクーン 

2008年04月28日 | 演劇
「どん底」 ケラリーノ・サンドロビィッチ演出 於・シアター・コクーン

 久しぶりに面白い舞台に出会えました。

 もちろんゴーリーキーですから、もっと重い芝居を想像していたのですが、演出のケラさんの魔法にかかったようで・・、笑いがちりばんめられた中に、一人ひとりの人生が浮かび上がるという意外に繊細な群像劇でした。

 実は見ている途中で気がついたのですが、22年前のパルコ劇場で無名塾の「どん底」を見ていたのでした。
 ルカーや、アンナ、役者・・「何処かで聞いた台詞だ・・」と思っていたら、当時見た暗い照明の中に浮かび上がる仲代達矢氏の顔が思い出されて、「なんだー以前同じ演目見てたのだ!!」と目覚めた次第。当時は無名塾の演技に圧倒されただけで、ゴーリキーの描きたかったことが自分にはまだ理解できない時期だったからかもしれません。記憶の中に残っていた台詞は、たぶん、自分の中で未消化だったからかも・・・。

 確かに完成された本なので、筋書きは同じです(少し手を加えている所もありますが)が、見終わった後の感覚はまったく別の本を読んでいるような感覚・・それでいてゴーリキーの描きたかった人間がこちらのほうが鋭く伝わってくるような・・親近感でしょうか・・重くはないのに深い感動があります。

 ケラさんの舞台をもっと見たくなりました。配役の妙とでも言うような、適材適所の役者さんの底力もみせていただき、それもひとえにケラさんならでは!なのでしょう。

 江口洋介さんは是非、舞台にもっと出るべきです。画面の中もそれなりにいいでしょうが、今回彼の声のよさ、立ち姿、どれも舞台栄えし、図太さの中の純粋で繊細なペーペルをとても好演していて、もっと違う役を見たいと思わせる俳優です。
 ルカー役の段田安則さん、役者の山崎一さん、帽子屋マギーさん、男爵の三上市朗さん、弟と呼ばれる男の黒田大輔さん、どの方も言うに及ばず、とても素晴らしい舞台を見せていただき感動しました。
 
 音楽も面白かったし、舞台美術もよかった。今回は本当にいい芝居を見せていただき感謝です。ありがとう!!! 再演期待してますね。

 

春の院展 三越日本橋店

2008年04月17日 | 美術
 おそまきながら行ってきました。
 本当に行っただけで、見る、鑑賞する(高尚な言葉)とは程遠かった。

 いつも思うのだが、三越での院展はあまりにひどすぎる。会場が変則的にまがりくねっている、照明はあかるいだけ、初入選や入選回数の少ない若手の作品は、催し物会場の境にあるし、壁という壁にただ並べているだけ。もともと美術館ではないので仕方ないけど、画家の方々は反発ないのかしら?
 三越でやる意味はいつかこのデパートの名前で売ってやるという傲慢な感じがどうも見え隠れする。いつかこの会場を離れて開催しないと、日本画のファンもおじさんおばさんばかりのあつまりになってしまって、見る側の若手が育たないと思う。

 三越ももっと配慮がほしい。(最近の絵画購買層は、30代も増えたというのに、もっと見せる側もアピールしないと)

 ともかく良くも悪くも、今回の注目は、
   同人から・・松尾敏男、 清水由朗、 宮北千織
   若手から・・川地ふじ子、佐藤美和子、武部雅子、東儀恭子、渡邊妙子

特に、渡邊妙子氏の人物は迫力があった。冬の情感がよく出ていたと思う。今後の活躍を期待したい。