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「ロボット・イン・ザ・スクール」

2022年01月26日 | 読書
なんて優しい家族の物語。
でもここは少し未来の英国で、ベン、エミリー夫婦と娘ボニー、2体(2人)のロボット🤖タングとジャスミンの5人家族。

前作は未読だが、ロボット、タングとベンのこれまでのいきさつが、この家族の絆(あまり好きではない言葉だが)になっている。

娘のボニーが学校に通い始め、タングも行きたいといいだしだ。あれこれあって
学校の許可もおり学校生活のあれこれから、夏休みのトラブル。
そこから起こるジャスミンの怪我(故障?)と、ネコを失いベンへの不信感を募らせるタング。

結局、距離を起き暮らすことになったジャスミンはどうなるか。タングとベン、ボニーの心の距離は縮まるのか?

又々次回作に気を持たせて終わるのだが、暖かい気持ちはこの作品のどこからも伝わってくる。

たまにはこんなに作品で心のリハビリもいいかなぁ…🤖




「それまでの明日」 原 寮

2020年09月04日 | 読書
これは、以前に下書きしてとちゅうだったものです。

読みはじめて暫く放置していた。3ヶ月もたつと読むのに惜しいような気がして益々読めなくなったのだが、この暑さで出かける気力もなく涼しい冷房の部屋で再開する。

いつもの新宿の光景から、紳士的な依頼者の描写から「長いお別れ」を彷彿させる。また懐かしい強面や刑事の面々とのやりとりもしかり。作家のチャンドラーへの心酔がよくわかる文体。
沢崎のプロとしての矜持やこだわりににやにやしながら、複雑に絡まった物事が少しずつほどけていく感覚の楽しさ、探偵ものの醍醐味がつまった作品だ。

ただ最後の数ページで、あまりに唐突で、残酷な終わり方には、、どうだろうか。

先日、ドラマ「朝顔」の第一話も途中で見られなくなって、自分でも困惑している状況なのに、この小説の最後にこれはあまりに辛すぎる。

ハードボイルドならそこに違った終わり方があるのではないか?

「蜜蜂と遠雷」 恩田陸

2019年10月06日 | 読書
「羊と鋼の森」を読んだ時もそうだった。

音楽を文章にすることで、こんなにも頭のなかにその時の音楽と情景が、鮮明に思い出すことがあるなんて。作者の筆力に圧倒される。

調律師とピアニストの違いはあっても自然の中から浮かび上がる人それぞれの音たちを、どうやったら自分のものにできるか、又は人の心に届けられるか。
そこに至るまでの葛藤、困惑、情熱、絶望などが描かれる過程で、自分のあらゆる感情がさらされ試されるような気がした。

人が持つ音楽や芸術への尊敬や憧れは小さな頃からの環境にもよるけれど、誰しもあり、それがあるから人生は救われているのだろう。
人も自然、地球の一部でありそこから生まれ土に帰るから畏敬の念を持って作り出す音楽や芸術は心を揺さぶられるのだ。

ずいぶん前に読んだが、最近映画が公開されたので再読。映画も見たら又感想書きます。

「ベルリンは晴れているか」 深緑野分

2019年03月12日 | 読書
自分は平和な戦後に生まれたが、、祖母や父から色々と戦中戦後の暮らしの話は聞いてきた。テレビドラマや映画でも国内の戦中戦後の話は幾度となく語られ映像化されてるから、知ることも想像することも難くない。

しかし同じ敗戦国のドイツはどうだったのか?アメリカ映画ではドイツ軍は徹底して悪に描かれナチスの残虐さや冷酷さを強調していた。
でもドイツ国内には生活があり市民は日本の戦時中と同じように厳しい暮らしを強いられていた。

この小説を日本人が書いたのは、知識や調査では得られることはあっても、それだけでは表現できない。その同じ状況に共感できる精神的なものがあるからこそだったに違いない。
読み進めていくと、自国が他国の、それも主義の違う国々に分割されるという混乱した状況の中で力強く生きていかねばならない一人の少女の気持ちに、幾度となくおしつぶされそうになる。困難な旅を行く中で知る真実の悲惨さ。最後は悲しいけれど少しの希望もある。

筆者の圧倒的な表現力にぐいぐい引き込まれて最後まで一気に読んだ。
まだまだ知らないこと、知らねばならないことが多くあると考えさせられた小説だった。

「カササギ殺人事件 」 アンソニー・ホロヴィッツ

2019年03月06日 | 読書
古典的な英国ミステリーが好きで、カーター・ディクスン(ディクスン・カーとも)、アガサ・クリスティー、コナン・ドイルは勿論、ディック・フランシス、コリン・デクスター、P・Dジェイムスなど夢中で読んでいた時期があった。最近はごぶさたしていたが、ベストセラーだというのでよんでみた。

出版社の編集者がミステリーの人気作家の最新作をよむところから始まり、その作品がひとつの話になっていて、入れ子構造なので、後からもう一度読むとよく分かる。少し疑問もあるけれど複雑な話を良くまとめたもので、後書きにあるように、かなりの時間をかけて書かれた大作労作である。
小説内の探偵がすこし類型的で魅力に
乏しいのも、後から納得する事ができるほどに上手く考えられている。
どうすればこんな作品を考えつくのか愚鈍な頭ではわからないが、読んだあとが又楽しめる、二度美味しいミステリーだ。

最近はミステリーもすぐにドラマや映画になってしまうが、これを映像化するのは難しいだろうし、やはりミステリー小説を読んで想像を廻らす楽しみは読書でしか味わえないと思う。




「屍人荘の殺人」今村昌弘

2019年02月01日 | 読書
少し前だが、積ん読本の中に埋もれていて最近読んだ本。
鮎川哲也賞を受賞し《このミステリーがすごい2018年版》第1位のミステリー。
確かに題名からして、また、大学映画サークルの夏合宿でおきた殺人の本格ミステリーとのことだったので、最初は有栖川有栖や綾辻行人のような期待をしてたのだが、読み進めていくと、、、密室ものではあるのだがその展開があまりに突飛で途中から(^◇^)が。
映画化したらさぞやホラーやスプラッターものが好きな観客が来そう、と思っていたら今回神木隆之介で映画になるらしい。
グロが苦手な私は映画版は行けないかも(^^;
トリックも設定も本格?なのだが、動機については少し甘いところが新人なのかな⁉️少々物足りなさはあるが、面白かった。
この探偵コンビはシリーズ化もありそう。

「嘘の木」  フランシス・ハーディング

2018年06月26日 | 読書
 
 児童文学であるものの、推理小説のような謎にみちていて一人の少女の成長記でもあり、読後には人間の欲望の業の深さを重く感じられた作品。

 「種の起源」が発表された19世紀後半のイギリスが舞台となっている。

 高名な博物学者サンダリー師による世紀の発見の化石が、ねつ造であるというスキャンダルに追われ、サンダリー一家はヴェイン島に移住する。
 しかしまもなくサンダリー師は謎の死を遂げる。娘のフェイスがその死に疑問を持ち調べるうちに、人の嘘を養分に成長し、その実を食べた者に真実の夢を見せるという
 「嘘の木」の存在を知る。
 フェイスはひそかに嘘の木を育てることで父の死の真相を探る。

 19世紀の英国の階級社会・文化の中で、限られた社会生活しかできなかった女性の哀しみ、強さもフェイスの周りの女性から感じられ、
 それから抜け出そうと好奇心や向上心でいっぱいのフェイスの行動力が胸を打つ。
  
 最後は児童文学にしては重く哀しいけれど、少しの希望を胸に荒波を渡ろうと決心するフェイスを応援したくなる。

 宮部みゆきさんも絶賛のこの作品は、今の国内のベストセラーと言われている作品の仲間入りが十分できるほど、圧巻のエンターテインメント作品であると思う。

なかなかよみすすめられない。

2017年03月08日 | 読書
やはり3月が来ると、思い出すことは決まっている。

先日の本は頑張ってみたが、少し読んでは本を閉じることになってしまい、全然進まない。よほど後ろから読もうと思ってもみたが、それも変なので又積ん読の 山のてっぺんにある。

ニュースでも映像や証言が辛いと感じることが多く、子供には逆に嫌がられる始末。あぁそういうことに敏感になりすぎないように努力してみよう。

「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている」

2017年02月25日 | 読書
佐々涼子氏著のノンフィクションなのだが、なかなか読み進められない。

東日本大震災から、6年になろうとしている。
副題に「再生・日本製紙石巻工場」とあるように、日本の出版を支えている製紙工場が震災で壊滅的被害を受けた。
そこから、工場のため地元のために立ち上がる人々の闘いを描いたノンフィクションなのだが、津波の被害の描写で、どうしようもなく苦しくなり、先を読むことができない。

あの時の恐怖と不安、その後の混乱、同時に自分の立場への嫌悪感が混じりあって、未だにニュース映像も見たくないし、人に対する恐怖が甦る。

あれから身近な人がどれ程亡くなったことか。

色々克服しなければならないと思い、この本を読むことが、変わるきっかけになれば、読まなきゃいけないような気がして手に取ったのだ。それなのに未だ54ページでつまづいている。

もう少し時間がかかるのだろうか…

宮部みゆき 「桜ほうさら」

2017年02月12日 | 読書

 タイトルのやさしさに魅かれて手に取った。しかし、そこは宮部みゆき作。

 地方の小さな藩の武士の次男坊、古橋笙之介が、江戸に出てきて人々に助けられながら、
 自分の父の無実を証明しようと奔走するのだが、
 優しい性格の笙之介や父とは違いきつい性格の母や兄との葛藤や、藩の陰謀を絡ませ、
 人情溢れる長屋の人々と、次々と起こる事件を解決しながら笙之介が成長するさまを描いている。

 宮部みゆきを読むとおもうのは、作者の描く家族の形はいつもどこか歪んでいて、
 決してハッピーエンドには終わらない。
  
 4つのエピソードの中でも、大店の一人娘がかどわかされた真相は家族の一端を表し、
 悲しい結末を迎えるし、笙之介自身の家族もしかりで、幸せな家族という理想をことごとく
 破壊していく。家族に理想を求めないという本質はいつも底辺にあるのではないだろうか。

 だからこそ、どの小説を読んでも、出会った人々の少しのやさしさやいたわりにほっとするし、
 それがあるから乗り越えられると思わせてくれる。

 人の帰るべき場所は、家族という理想ではなく人のやさしさにありということかなぁ・・

 NHKでドラマ化されていたらしいので、それも見てみたい。

 


 

「羊と鋼の森」   宮下奈都

2016年04月28日 | 読書
 本屋大賞をとるまえから気になっていた。

 まず、タイトルと装丁が素敵なことと、立ち読みした途端、ピアノの情景が
 浮かんできたこと。

 本屋で思わず目頭が熱くなって困ったので、慌てて購入し、じっくりと読む。

 
 これは家にピアノがある家庭や、学校のピアノに少なからず関心のあった人は
 誰でも感じるノスタルジックな思いを、具現化した本なのだと。
 
 
 母が亡くなってから、あえて思い出そうとしなかった。
 
 暗い蔵の奥に 私専用に置かれたそれは、習うのをやめた後も、哀しい時、楽しい時、
 そばで弾いて 私の心の友だった。
 またピアノが好きで、私よりも上手な母が時折弾いてくれたショパンは母の人柄そのものの響きだった。

 母が亡くなった後、それを本当は持ってきたかった。
 蔵を壊したとき、その処理をどうしたか本当は聞きたかった。
 でも、いろいろな思いが重なって、結局、古いピアノはどこかにいってしまった。

 私にとってそれは友だったのに、母の病と死によって目をふさぎ、きちんと向き合わなかったことを
 後悔している。

 しかし、この本を読んだことによって、私の心が少し救われたような気がするのは、
 今もどこかで、私のピアノが鳴っているからと思えるような気にさせてくれたから。

 
 この本を読んだすべての人の心にピアノの森の響きが、永遠に届きますように。





 

 

読書日記について思うこと

2015年12月09日 | 読書
確かにこのブログでも、自分の読書感想らしきものをカテゴリーにしている。

ただし、一部であって全部ではないのは、言うまでもない。

すべての読書記録をつけたら、それは自分のうちをさらけ出しているような感じがして、いたたまれないだろう。
一部だからこそ、言いたいこと書けるし、隠したいことは書かなくてよい。自分の意志がそこにはあるから。

ところが、先日の新聞記事によれば、神戸新聞が、神戸高校図書館の貸し出し記録を高校の許可はとっているとして、
村上春樹氏他2名の方の貸し出し記録の写真を掲載したという。

高校であっても図書館であることに変わりないのに、本人の許可なく、閲覧、貸し出し記録を開示することなど、
あっていいのだろうか?
日本図書館協会は、「プライバシーの侵害」に当たるとして調査し、神戸新聞も開示しないこととして、今後注意することと
なったようだが、公人といえども、個人情報は守られるべきと思うし、図書館の信頼が裏切られかねないこととして、
注視するいったんとなった件ではある。

最近の風潮ではないけれど、「図書館戦争」のような時代になってはならないと思う。

三浦しをん「舟を編む」

2013年08月07日 | 読書
毎度のことだが、積ドクばかりでどんどん本が増えるので、何とかクリアしようと手に取った。
買ったばかりのときはどうしても進まなかったのだが、読み始めたら馬締くんの言動にくすくす笑っている自分がいた。最後は先生の死に、馬締くん同様泣けてしまって、言語の海に漕ぎ出した愛すべき紳士たちの情熱にはまっていた。
本屋大賞というほどではないと思うが、温かい気持ちにさせてくれるよい作品。
言葉は本当に、大事に使わなければ、人には伝わらないのだと気づかせてくれた。

ほかにも、読むべきものは沢山あるのだが、また今度と積読が増えるばかり。反省・・

スティーグ・ラーソン 「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」

2013年04月24日 | 読書
話題になって時間がたってから読み始めるのはよくあること。
映画にもなった「ミレニアム」だが、評判どおりに、主たる登場人物の造詣がよく描かれていたし、昔ながらの旧家の秘密的なミステリーも匂わせて、厭きることなく読める。

読み終わって、ミカエル・ブルムクヴィストとリスベット・サランデルのこれからも気になるところではあるが、どうしても続編を読む気がしないのは、現代社会の闇に容赦なく向き合わなくてはいけないからかもしれない。経済社会の矛盾や、弱者が虐げられる階級社会の醜さを、また直視しなければならないのは、なかなかつらいものだ。

しかしながらこの一流のミステリーを書いた作者ラーソンの、ジャーナリストとしての気概が溢れる作品がずっと読み継がれていくのは確かだろう。
素晴らしい才能が早世したことを悼みたい。

江國香織 「ぬるい眠り」

2013年01月30日 | 読書
久しぶりに手にしたのは、妙なリアリティー感がありつつ、異世界の人々が思うままに生きている現代と過去がいりまざった世界を描いた掌編。

底に描かれている女性は皆、小川洋子が小説で描くおとぎの国まではたどり着けなかった、不思議の国のアリスで、成長したアリスがしかめつらして生きてるような感じ。

それぞれ違う話だけど、どの本もつながっているようで、「ぬるい眠り」の雛子は「ケイトウの赤、柳の緑」の笑子だし、「放物線」の三人は「きらきらひかる」の3人の関係みたいだ。

自分たちの居場所を探して生きて行くのに、時間や年齢は関係無いことを気づかせ、あんな風に生きていける程、つよくなりたいと思う。