世界の移民政策、移住労働と日本

日本型移民政策とは何か?世界の移民政策に関するニュース、エッセイ、本の紹介など

移住と開発に関するグローバルフォーラム(GFMD) その②

2008年09月20日 | 移民・移住と開発
そもそもGFMDが開催されるにいたるまでには、移民と開発の問題について国際的にどう取り組んでいけばよいのか様々な取り組みがされました。

STEP 1. Global Commission on International Migration2003-2005

当時の国連事務総長の諮問機関として召集され、国際移住・移民に対する現状と提言をまとめました。ここではっきりと、国際社会が移住と開発の密な関係を認識し、それに対する対策をまとめるべきであるという提言がなされました。

Step 2. High-level Dialogue on International Migration and Development

国連総会におけるハイレベルダイアローグにおいても国際移住と開発について話し合われ、移住と開発に関する問題を専門的に話し合う恒久的なフォーラムの設立も提唱されました。

上記のハイレベルダイアローグの際の日本政府のステートメントが外務省のサイトに掲載されています(↓を参照)。移住という現象が、移民の母国にどのような影響を及ぼすのか、どのように移住をより開発への動きと具体的に結びつけいくかというところがこのアジェンダの一番の「つぼ」なのですが、↓のステートメントを読む限り、移住を強制移住に置き換えてみたり、人材育成が大切でそれを日本は行っている、という比較的やんわりな発言にとどまっています。

おそらくまだ日本政府はこの点について関連機関内部でまだ統一見解がないのではないでしょうか。①JICAのプロジェクトなどを通じて行っている人材育成は主に途上国内での雇用を目的としており、育成された人材が海外に移住することは、本来JICAとしては不本意な結果として認識されてきたのではないでしょうか。そしてそのような視点から見れば移住と開発というアジェンダは賛同できるものではない、という意見がまだ根強いのでは? そして、②移民を受け入れるということも開発援助協力の一部であるという極論も国際社会で出てくるなか、まだ入国管理や移民政策に関する国内での議論が尽くされていない日本は、この話になると国際的に明確な立場を表明できないのみならず、既に国際社会から「鎖国日本」というようなレッテルを貼られているためこの問題になると非常に肩身が狭く、具体的な発言は控えたいという意図があると思われます。(個人的には移民政策は主権問題ですからもし日本が受け入れをしないという道をえらべばそれを堂々と国際社会に報告するべきだと思いますが…もちろんこの場合、不法滞在や研修制度などの裏技は許されません。)

国内の移民政策の議論が高まるなか、その中で移住・移民と開発という問題にもきちんと視野にいれてもらいたいと期待しています。移住と開発とは、国境を越えて日本領土と国民をも巻き込んだ途上国開発援助における新課題です。ウチとソトの垣根がないのです。

遠山外務大臣政務官演説
国際的な人の移動と開発に関する国連ハイレベル対話における遠山外務大臣政務官ステートメント(仮訳)


平成18年9月14日
於:ニューヨーク

議長、国連事務総長、ご列席の皆様、
 全ての社会が、他の国々からの人々を公平に受け入れ且つ取り扱うことは極めて重要です。社会は文化の多様性を促進し、開放性や柔軟性、労働力の流動性の向上を目指さなければなりません。
 また、移民が移住先の国において、技能習得や経済活動等を行うことは、本国の開発に寄与しうるものです。但し、人の移動が、移住者や送出国・受入国双方にとって恩恵をもたらす形で行われるようにするためには、多くの解決すべき課題があり、国家主権の枠内での取組のみならず、国際的にも協力していく必要があります。そうした観点から、今回、国連の場で移住と開発について検討する会合が開催されることは時宜を得たものであり、歓迎したいと思います。
 我が国憲法は、前文で「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」旨謳っており、これは我が国が推進してきた「人間の安全保障」の考え方の基本でもあります。「人間の安全保障」とは、人々が直面する多様な脅威から保護するとともに、脅威に自ら対処できるようにする能力強化を重視する考え方です。我が国は、全ての人の人間の安全保障のためにも、国際的な人の移動に対する2つのアプローチを組み合わせることが重要であると考えます。第一に、脅威により母国からの移動を余儀なくされる場合。様々な脅威から保護され、また、自らこれらに対処できるように能力強化を図ることも重要です。第二に、よりよい暮らしを求めて移動する場合。これらの人々が、移動先の国の法律や規制に反することなく自らの潜在能力を発揮するための環境を創造しなければいけません。女性、子どもや社会的弱者のニーズに特に配慮しつつ、この2点に関し行動していくことが、人の移動と開発のポジティブなリンケージを確立する上で基本的な前提条件となります。

(移住を余儀なくさせるような個人に対する直接的な脅威への対処)
 まず、第一に、我が国は、紛争、自然災害、人身取引、組織犯罪等のために安全が脅威にさらされ、母国を去ることを余儀なくされている人々が存在するコミュニティーの能力強化を行うため、世界各地で数多くの事業を行って参りました。これらの事業は、難民や人身取引の被害者への支援や啓発活動を含んでおり、我が国の資金協力や技術協力、また我が国のイニシアティブのもと、この分野に取り組む国連機関を支援するために1999年に創設された「人間の安全保障基金」からの拠出により実施されています。
 さらに、人身取引問題については2004年12月に対策行動計画を策定し、防止、法執行、被害者保護の3分野での対策実施に努めています。また、アジア、ヨーロッパ、中南米各国における政府機関、NGO、国際機関等と効果的な人身取引防止策等についての意見交換を行っています。その他、不法移民・人身取引及び関連する国境を越える犯罪に対するアジア大洋州の地域的枠組みであるバリ・プロセスにも積極的な協力を行っています。

(人の能力強化を通じた移住の開発への寄与の向上)
 第二に、移民は受入国にとっては経済活動の担い手であると同時に、送出国に技能や資本をもたらす可能性を持っており、本来、受入国・送出国双方の開発に寄与しうるものです。但し、こうした状況が実現するためには、人々が受入国、送出国、経由国の法令に従って適法に移動することにより、これら諸国の法令に基づく保護が適切に与えられることが重要ですが、それだけでなく、移動する人々が移動によるメリットを最大限に享受できるよう、一人一人の能力強化に向けた国際的な協力がなされなければなりません。
 こうした観点から、我が国は開発途上国における能力開発のため、教育分野や医療保健分野等において人材育成に向けた協力を推進してきました。具体的には、教育分野での現職教員への研修や、指導書、カリキュラムや教科書の改善、医療保健分野での医療従事者の育成、 HIV/エイズ対策におけるカウンセリング従事者の育成などに取り組んでいます。
 また、我が国は、過去40年以上に亘り、青年海外協力隊を開発途上国に派遣し、現地の人々とともに、草の根レベルでコミュニティー造りや国造りに参加してきました。この経験に基づき、我が国はUNVと協力し、「アジア青年海外協力隊」(the Asia Youth Volunteers Programme)をアフリカに派遣し、アジア・アフリカ間のボランティアの交流を推進しています。

 国際的な人の移動と開発の問題は、重要な地球規模の課題であり、今回の会合開催は我々にとって有意義な一歩であったと確信しています。国際社会は、引き続き具体的な論点についての議論を深め、国際協力を進展させることが必要です。我が国としても今後の議論に参画し、積極的に協力していく所存です。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。