
『リーマン予想』は、1859年、ベルンハルト・リーマンによって投げかけられた難題「ゼータ関数の非自明なゼロ点はすべて一直線上にあるはずだ」に対する答えを求めるもの。数学上の未解決の問題が現在6つあるが、その中でも、もっとも難題といわれている。今年はこの問題に取り組んで150年になる。
つまり「素数の並びに意味はあるか?」ということだが、さて、素数とは・・・1とその数以外のどんな自然数によっても割り切れない数。
2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97・・・現在、1297万8189桁までみつかっているそうだ。 お気づきのように、その間隔は規則的じゃない。1しかないと思えば71も離れてたりする。その間隔に規則性はあるのかという難題だ。
この番組は、2010年の科学ジャーナリスト大賞に選ばれ、数字という概念をCGやインタビューなど駆使しながら、私たちに新しい世界を見せてくれる。プロデューサーの井出真也さん(NHK)は、10年以上をかけて企画を温めてきた。数学を映像にしたいという想いは、なかなか番組編成に通らなかった。2006年に世紀の数学難題のひとつ『ポアンカレ予想』がグレゴリー・ペレルマンによって証明されながら、本人が失踪してしまったという事件つきだったため、番組制作が許された。それから3年を経てこの『リーマン予想』を制作することとなった。
さて、素数といってもピンとこないが、実は私たちが通信でデータ保護をしている際に、素数は必要不可欠なものらしい。verisignという会社のもっとも厳重な金庫にはこの素数が保管されており、通信セキュリティの際のキーとなる。この素数が解かれてしまうと、このセキュリティーは意味をなさなくなる。そんな危険性もはらみながら、それでもなお、数学者はこの問題に挑み続ける。
その歴史を解いてみよう。
①レオンハルト・オイラー(1707-1783):当時ヨーロッパ随一の天才数学者。オイラーの論文(1749年)で「素数階段」という理論を打ち立てた。彼は素数と宇宙に関係があると直感した。なぜならランダムだと思っていた素数が、ある式を使うと美しい円周率πに集約されたからだ。
②ベルンハルト・リーマン(1826~1866):オイラーの式からヒントを得た「ゼータ関数」で得られた「ゼロ地点」が一直線に並ぶことを発見。それではすべての素数はその規則に当てはまるのだろうか?というのがこの『リーマン予想』
③ケンブリッジ大学で天才をほしいままにしていた2人の数学者、ゴッド・フレイ・ハーディとジョン・リトルウッド:1914年ハーディの研究論文で「直線上に無限に多くのゼロ点は存在する」と証明。しかしその後間違いが見つかり、二人の名声はそこで途絶えた。
④プリンストン大学元教授のジョン・ナッシュ博士:ラッセル・クロウ主演の映画「ビューティフル・マインド」のモデルでもある。ノーベル経済学賞を受賞し1950年代の世紀の天才といわれた。彼のリーマン予想に対する講演会には多くの期待が寄せられた。しかしその壇上、支離滅裂に壊れていく彼の姿があった。統合失調症を発症し、81歳の今でも病と闘っている。
「あの講演の直後から私は明らかに精神に異常をきたしました。数学の研究には自身の心の内面を突き止めることが要求されます。あるときには論理的に考え、別の時には非論理的に考えることが要求されます。そうした複雑な思考が精神的な問題につながったのでしょう」
これらの事件が続き、『リーマン予想』は解いてはいけない難題という風潮に見舞われる。その中でひとりの数学者が、挑み続けている。 ⑤ルイ・ド・ブランジュ博士(パデュー大学 特別教授):60年解かれることのなかった難題を解き、天才数学者といわれる彼は、1960年代からこの『リーマン予想』について2回の証明を提出した。しかし、間違いが指摘され、世間からの非難も浴びた。彼はそれにめげることなく挑戦を続けている。
「私の研究は宇宙を支配する物理法則を理解することに通じます。特に原子や電子などのミクロの世界の法則です。若い頃は素数は単なる計算の道具だとしとしか考えませんでした。しかし研究を重ねるにつれて、素数を見れば、宇宙や自然のすべてが理解できることがわかってきたのです」
⑥1972年、プリンストン大学に訪れたヒュー・モンゴメリー(ミシガン大学教授)が、お茶に訪れた喫茶室で、フリーマン・ダイソン博士(プリンストン高等研究所 物理学名誉教授)に、何気なく『リーマン予想』の話をし、「ゼロ点」間隔の式を見せた。フリーマンはびっくりして言った。「これはまるで原子核エネルギーの間隔を表す式と同じだ」
⑦このことを受けて、一気に『リーマン予想』は活気を帯びた。
1996年、「第1回 リーマン予想会議」に出席した、ピューリッツァー賞受賞のアラン・コンヌ博士は次のように語る。
「私は会議の出席者に必要なのは、ミクロの空間に関する新たな知識だと気づいたのです。それは素数と関係したある種の波を持つ空間です。ダイソンとモンゴメリーの発見を理解するために必要なのは、ミクロの空間に関する新たな考え方だったのです。そしてその空間は私が研究していた「非可換幾何学」と完璧に一致することに気づきました」
もうすぐ『リーマン予想』は解かれるのかもしれない。しかし数学の難題の証明には少なくとも2年間、厳しい検証に耐えなければならない。
この番組は8月20日13:40からBS Hiで再放送の予定です。
※NHKスペシャル「魔性の難題~リーマン予想・天才たちの闘い」
http://www.nhk.or.jp/special/onair/091115.html
つまり「素数の並びに意味はあるか?」ということだが、さて、素数とは・・・1とその数以外のどんな自然数によっても割り切れない数。
2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43, 47, 53, 59, 61, 67, 71, 73, 79, 83, 89, 97・・・現在、1297万8189桁までみつかっているそうだ。 お気づきのように、その間隔は規則的じゃない。1しかないと思えば71も離れてたりする。その間隔に規則性はあるのかという難題だ。
この番組は、2010年の科学ジャーナリスト大賞に選ばれ、数字という概念をCGやインタビューなど駆使しながら、私たちに新しい世界を見せてくれる。プロデューサーの井出真也さん(NHK)は、10年以上をかけて企画を温めてきた。数学を映像にしたいという想いは、なかなか番組編成に通らなかった。2006年に世紀の数学難題のひとつ『ポアンカレ予想』がグレゴリー・ペレルマンによって証明されながら、本人が失踪してしまったという事件つきだったため、番組制作が許された。それから3年を経てこの『リーマン予想』を制作することとなった。
さて、素数といってもピンとこないが、実は私たちが通信でデータ保護をしている際に、素数は必要不可欠なものらしい。verisignという会社のもっとも厳重な金庫にはこの素数が保管されており、通信セキュリティの際のキーとなる。この素数が解かれてしまうと、このセキュリティーは意味をなさなくなる。そんな危険性もはらみながら、それでもなお、数学者はこの問題に挑み続ける。
その歴史を解いてみよう。
①レオンハルト・オイラー(1707-1783):当時ヨーロッパ随一の天才数学者。オイラーの論文(1749年)で「素数階段」という理論を打ち立てた。彼は素数と宇宙に関係があると直感した。なぜならランダムだと思っていた素数が、ある式を使うと美しい円周率πに集約されたからだ。
②ベルンハルト・リーマン(1826~1866):オイラーの式からヒントを得た「ゼータ関数」で得られた「ゼロ地点」が一直線に並ぶことを発見。それではすべての素数はその規則に当てはまるのだろうか?というのがこの『リーマン予想』
③ケンブリッジ大学で天才をほしいままにしていた2人の数学者、ゴッド・フレイ・ハーディとジョン・リトルウッド:1914年ハーディの研究論文で「直線上に無限に多くのゼロ点は存在する」と証明。しかしその後間違いが見つかり、二人の名声はそこで途絶えた。
④プリンストン大学元教授のジョン・ナッシュ博士:ラッセル・クロウ主演の映画「ビューティフル・マインド」のモデルでもある。ノーベル経済学賞を受賞し1950年代の世紀の天才といわれた。彼のリーマン予想に対する講演会には多くの期待が寄せられた。しかしその壇上、支離滅裂に壊れていく彼の姿があった。統合失調症を発症し、81歳の今でも病と闘っている。
「あの講演の直後から私は明らかに精神に異常をきたしました。数学の研究には自身の心の内面を突き止めることが要求されます。あるときには論理的に考え、別の時には非論理的に考えることが要求されます。そうした複雑な思考が精神的な問題につながったのでしょう」
これらの事件が続き、『リーマン予想』は解いてはいけない難題という風潮に見舞われる。その中でひとりの数学者が、挑み続けている。 ⑤ルイ・ド・ブランジュ博士(パデュー大学 特別教授):60年解かれることのなかった難題を解き、天才数学者といわれる彼は、1960年代からこの『リーマン予想』について2回の証明を提出した。しかし、間違いが指摘され、世間からの非難も浴びた。彼はそれにめげることなく挑戦を続けている。
「私の研究は宇宙を支配する物理法則を理解することに通じます。特に原子や電子などのミクロの世界の法則です。若い頃は素数は単なる計算の道具だとしとしか考えませんでした。しかし研究を重ねるにつれて、素数を見れば、宇宙や自然のすべてが理解できることがわかってきたのです」
⑥1972年、プリンストン大学に訪れたヒュー・モンゴメリー(ミシガン大学教授)が、お茶に訪れた喫茶室で、フリーマン・ダイソン博士(プリンストン高等研究所 物理学名誉教授)に、何気なく『リーマン予想』の話をし、「ゼロ点」間隔の式を見せた。フリーマンはびっくりして言った。「これはまるで原子核エネルギーの間隔を表す式と同じだ」
⑦このことを受けて、一気に『リーマン予想』は活気を帯びた。
1996年、「第1回 リーマン予想会議」に出席した、ピューリッツァー賞受賞のアラン・コンヌ博士は次のように語る。
「私は会議の出席者に必要なのは、ミクロの空間に関する新たな知識だと気づいたのです。それは素数と関係したある種の波を持つ空間です。ダイソンとモンゴメリーの発見を理解するために必要なのは、ミクロの空間に関する新たな考え方だったのです。そしてその空間は私が研究していた「非可換幾何学」と完璧に一致することに気づきました」
もうすぐ『リーマン予想』は解かれるのかもしれない。しかし数学の難題の証明には少なくとも2年間、厳しい検証に耐えなければならない。
この番組は8月20日13:40からBS Hiで再放送の予定です。
※NHKスペシャル「魔性の難題~リーマン予想・天才たちの闘い」
http://www.nhk.or.jp/special/onair/091115.html
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