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人の間・時の間・空の間:B面

今日も 【 間 】 を縫って進もう、自分の港へ。

せわしない季節

2005-12-21 15:38:46 | 今日の俳句
「夕方はすこし華やぎ雁木道」 阿部 静雄

クリスマスから年末にかけてのこの時期は、
なにかと気ぜわしい感じがします。

よくよく考えてみると「今年中に必ず片付けなくてはならないこと」というのも、
そんなに沢山はないはずなのですが気分的に身辺をスッキリさせ、
新たな年を清清しく迎えたいということからなのでしょう。

世の中の「お正月らしさ」が年々失われつつある中で、
せめて心構えだけは努めて「新た」にしたいと思っています。
そのためにさて、何からしましょうか?
残すところあと10日。


雪がそこまで

2005-12-01 07:15:48 | 今日の俳句
「ふるさとやどの窓からも雪の山」 阿部 静雄

自然というものは容赦がありません。
時期が来れば淡々と季節を運んでゆきます。

地震の傷がまだまだ癒えないパキスタンも、新潟中越も冬を迎えます。
すべてが覆い尽くされ、復興も進みようがありません。
首都圏では想像もできない厳しい冬が、新潟では直ぐそこに迫っています。
新潟では

帰る灯り

2005-11-30 06:07:20 | 今日の俳句
「ことりともせぬ母の部屋冬燈」 阿部 静雄

秋の深まった夕暮れ、家の灯はなんとも郷愁をさそいます。

東京に出てきて間もない頃、銭湯からの帰り道、
よそのお宅の食卓の灯りの中からカチャカチャ食器のぶつかる音を聞いた時、
急にホームシックになってアパートに帰って号泣したのを思い出します。

人は“帰る灯り”があればこそ、がんばっていけるのです。
たとえ灯りに家族がいなくても、その空間が心の拠り所となるのであればそれは立派な灯りです。

新潟県中越大震災をはじめ、昨今問題になっているマンション偽造事件でも多くの方が突然住まいを失ってしまいました。
クリスマスやお正月といった行事で街がにぎわうこれからの季節、
“帰る灯り”のない切なさにじっと耐えている人々が、まだたくさんいることを忘れずにいたいと思っています。



スタジオNao

2005-11-23 05:26:03 | 今日の俳句
「バリカンに父の匂ひや冬日向」 阿部 静雄

今はなくなった祖父が、孫であるいとこにバリカンで頭を刈ってもらっている光景を目にしたことがあります。それは亡くなるまで続いていたと記憶しています。
そのときの祖父の穏やかな横顔を今も忘れられません。

我が家では息子、娘の髪をいまだに主人がカットしています。
「今日はスタジオNaoに行くよ」が散髪の合図。小さい頃からずっと続いています。
鼻の頭ににきびができ始め、反抗期真っ只中の息子がケープをかぶり、おとなしく目を閉じている様子などは、なんともおかしくて陰から覗いては噴出しています。

親子で殺しあう信じられない世の中で、
こんなひとときを持てる事は、とても幸せで大切なことだと思っています。


家ねこ・外ねこ

2005-11-22 16:30:31 | 今日の俳句
「冬ごもり不意に顔から起き出せり」 阿部 静雄

一年前のちょうど今ごろ、子どもがノラ猫を拾ってきて、
飼ってくれ、いや飼わないの数日のやりとりの後、
結局トラ猫が我が家の一員になりました。
おとなしいなと思ったら、10歳以上(人間ならおじいさん)との診察で
寝てばかりいる理由が分かりました。
“ふく”と名付けたら名前どおりに、
動物のいる和やかな時間をたくさん運んできてくれました。


最近ノラ猫が一匹、ガレージに居つくようになりました。
美しいその毛色から勝手に“ぎん”と名付け、
朝夕の食事と断熱仕様のダンボールハウスを用意しました。

寒いからか昼間でもハウスの中で丸くなっていることが多くなり、
たまぁ~に様子を見に行くと、びっくりして顔だけちょこんと突き出します。

寒さが本格的にならないうちに「家ねこ」になってくれるといいんだけれど。


雪おこし

2005-11-19 22:08:51 | 今日の俳句
「故郷やものの形に雪積もり」 阿部静雄

新潟小千谷では昨晩「雪おこし」が鳴ったそうです。
「雪おこし」とは冬の始まりの合図とでも云いますか、
雪が降る夜にたいてい決まって鳴る雷のこと。

みぞれがやがて雪となり、雪はすべての音を消し去り
田の畦も庭の枯菊も、しまい忘れた漬物石なども、
そっくりそのまま覆い隠します。

抗えない“雪”を潔く座して待つような
凛としたこの頃の越後の風情は雪国ならではのものです。




縁づくと云ふ別れ

2005-11-16 06:52:00 | 今日の俳句
「縁づくと云ふ別れあり鳳仙花」 阿部静雄

紀宮さまがご結婚されました。
テレビで拝見するだけですが、“こころの美しさ”が感じられる
素晴らしい披露宴や式後のインタビューでした。

やはり私たち日本人は、
奥ゆかしく、礼儀正しく、感謝の心を持った素晴らしい民族であったと
再認識させられる一連のお言葉でした。

慈しみ育てて貰った両親への感謝と
違う世界へ飛び込む娘への励ましと見守る愛情。

もし、生まれ変わってもう一度結婚できるとしたらとしたら、
紀宮様のように感謝の心を持って静かに嫁いで行きたいと思います。

ちなみに私の場合(もう20年前か・・・)は「形式ばる」ことへの反発から、
式も挙げず、旅行へも行かず、気ままにに籍を入れただけの
“不義理”だらけの結婚でした。
今更ながらお父さんお母さんゴメンナサイ!

風を見る

2005-11-08 13:38:23 | 今日の俳句
「懸大根紙飛行機のぶつかりぬ」 阿部静雄

紙飛行機なんて忘れていました。
「紙切れを飛ばす」という単純な遊びなのに飽きないのは、
一度として同じ軌跡を描かないからでしょう。

紙飛行機というモノを通して、見えないはずの“風”を見ているのでしょう。

もっとも最近は紙飛行機を障害物なく最後まで、飛ばせてあげられる広いスペース自体がなくなってしまいました。
“風”ものびのび吹いていられないということですね。




受け入れること

2005-11-06 05:27:44 | 今日の俳句
「今日できることは今日して冬支度」 阿部静雄

この句が大好きです。
その日の都合、天気、体調まですべてを受け入れている感じがするからです。
流れに逆らわず、環境を受け入れ、目の前にあるできることを淡々とこなす・・・
毎日そんなふうに過ごせたらいいものです。
阿部静雄さんの俳書展を横浜で開催しています。素朴でとても分かりやすい俳句です。お近くの方はぜひお立ち寄りくださいませ。


「受け入れる」ことの対極にある「立ち向かう」ことについて深く考えることが昨晩ありました。
NHKテレビの「サイボーグ技術」に関する番組です。事故などで失った人体の機能を機械に行わせようとするもの、つまり「人間と機械の融合」です。
その領域は“脳の調整”にまで広がっているそうです。
“調整”から“操作”への一線を越える日が来ないことを祈るばかりです。

俳句のカテゴリーを追加しました

2005-11-05 12:48:23 | 今日の俳句
大好きな俳人 阿部静雄さんの俳句をご紹介しながら
つれずれに思うことを綴ってゆきたいと思います。

「越の山ひと雪ごとに仕上りぬ」 阿部静雄

生まれ故郷の新潟県小千谷では11月ともなると、寒い日には雪もちらつきます。
金倉山(山古志方向に見える山)に3回目の雪が降ったら根雪(春まで消えない雪)になると父母から教えられて育ちました。
根雪になれば4月まで雪に閉ざされ、ただじっと春待つだけの5ヵ月間です。

中越大震災から2度目の冬が、もうそこまで来ています。


【 阿部静雄 】
昭和10年 新潟県小千谷市生まれ、小千谷市在住。
昭和32年目崎徳衛に師事。平成2年 有馬朗人主宰の「天為」に創刊同人として加わる。平成6年俳壇の芥川賞といわれる「第40回角川俳句賞」受賞。平成7年「第8回村上鬼城賞」平成12年「第2回俳句朝日賞準賞」など賞歴多数。永遠のテーマでもある故郷を一貫して詠み続ける。