音楽以上のもの。

けさ、ジムに行く支度をしながら、「題名のない音楽会」を観ていました。フジ子・ヘミングさんがゲストで、いつもの演奏会っていう形式ではなく、インタビューと演奏映像とが混じっている構成でした。波乱万丈な人生を送って来られたフジ子さんですが、その演奏は端正で美しく、気負いが無い。いつもピアノを慈しむように弾いていらっしゃるなぁと思います。ズバズバと語る言葉も歯切れ良くて好きです。そんなフジ子さんが、若かりし日に、バーンスタイン氏の援助を受けてリサイタルを開くことになっていたのは知っていたのですが、直前に風邪を悪化させてしまい聴力を失うという悲劇にみまわれてしまったんですよね、ああ運命って残酷。バーンスタイン氏と自分の間には音楽以上に通じ合うものがあったと語るフジ子さん、「音楽が上手に出来るだけではだめ、それ以上のものがなくては」とは、それを知る者だけが語ることの出来る言葉なんだなぁと思いました。
はっと思ったのが、現実の世界ではないにせよ、ファントムとクリスの関係もそうだったんだろうなと。同じ魂と感性を持つふたりは、だからこそおたがいを音楽の天使として知り得たんだろうなと思いました。クリスがファントムに惹かれてやまなかったのは引き合う魂ゆえだし、ファントムを恐れたのは、彼を受け入れてしまったら、自分の心にある闇を認めなくてはならなかったからかもしれませんね。
うまく表現出来ないけれど、ケミストリーとは選ばれた者たちにのみ感じられる、通じる現象なのでしょう。理屈じゃない、言葉じゃない、出会ってしまうものだから。