語ろう! 宝塚とかジョジョとかガッチャマンとか。

まさかのここに来てヅカオタ状態、日々叫んでおります、ほかにジョジョ、初代ガッチャマン等好きです。
管理人 Masayo

歌唱のみでの勝手な判断ですが、北翔さんのトート。

2015-04-19 23:23:39 | 北翔海莉
CDでは聴いていたのですが、MUSIC PALETTEでの「闇が広がる」は面白かった。
わたくしの勝手な判断ですし、比較できるほど宝塚の「エリザベート」を観ているわけでもないのでご了承ください。

トートは何人ものトップスターによって演じられ、それぞれが持ち味を生かした役を作り上げて人気を博して来た。

わたくし観たことがあるのは姿月さんと、昨年の明日海さん。
姿月さんのトートはかなり前に一度観たきりで、経年変化かつ記憶もあやふやですが、パンチの利いたツンデレな感じだったかなあという印象です。
明日海さんは美しくて冷たい印象の中に、熱い恋心を抱いた青年といった雰囲気がありました。
日頃可愛らしいイメージもある明日海さんが、冷酷な表情で目をギラッとさせる演技がかっこよかったです。

さて、歌だけで聴く限り、北翔さんはもちろん、とても上手い。そして、難しい「表現」面でもかなり本物に近いと思います。
理解度が高いということですね。
「愛と死の輪舞」では、これ楽譜だとハ長調なんですが、後半転調するのが嫌らしいというか微妙に辛いというか。
超低音から入り、かなり苦しい高音まで裏声にせずに歌いとおすのはかなりの技量が必要で、苦しい音階になっても裏声に抜くに抜けない男声の苦しさ、これを耐えきって歌い上げられるのは歴代トート役のみなさんも大変だったろうなと思います。

北翔さんの声は低音もよく響き、苦しいはずの高音もなめらかかつ余裕で歌えています。が、楽々かもしれないけど、うまく気持ちが籠っているので、なんとなく歌えましたになっていないのがさすがの演技力です。
演じる人の声質によって役が決まるオペラやミュージカルと違い(特に女性の場合は裏声は姫系ヒロイン、地声は庶民または不幸なヒロイン)、宝塚は声質がどうであれ、トップはその役になってしまうので、個人の音色によってかなり役の雰囲気が変わりますね。
北翔さんの声は明るくソフトなソプラノだと思いますが、仕事柄低い声もよく鳴るし、裏声は役では使わないので高すぎることはないように、「男声レンジ」を「いい役」「悪い役」等見事に使い分けていらっしゃる。

では、トートはどうなのか。「死」という抽象的かつ絶対の存在、でも人間ではないのでどうにでもなるし、掴みどころも無い。過去をお手本にしてもいいけど、型にはまると形骸化する危険もありと。
難役ですねえ。

死が悪だとは思いませんが、こと「対シシィ以外の人」には、トートは物事が悪く向く用にフィクサーのように罠をしかけて立ち回る。 フランツとの結婚は予定外にせよ、幸せなはずの結婚式に現れてお前は俺のものだとシシィを翻弄し、ハンガリー独立を煽って、結果ルドルフを追いこんで死に追いやる。シシィを手に入れるために、手下を使ってフランツの不義を企て、ルドルフを亡き者にし、シシィが人生に絶望するようにひたひたと進める。

でも、トートはうっとうしくてストーカーだけど、シシィのことは愛しているんですよ、彼なりに。 でも全然いう事聞かない相手なので待つしかないと。
北翔さんは、「愛と死の輪舞」では、やりすぎず、でも周囲を支配するような、シシィを絡め取るような甘い声で柔らかく迫って来ます。さじ加減絶妙だと感じます。
感情を入れ過ぎず、霧のようにふわぁっと立ち込めて、気が付けば囚われているような感じ。

一転して「闇が広がる」では、これは映像があるのですが、演技が少しついていて、かなり怖い。 つららを打ちこまれるような冷たさと恐ろしさがある。
トートにとってルドルフなんて、シシィを手に入れるための駒ですから、いいように弄んで突き落して死んじゃえ的な、ひどい扱いをするための存在で、悩むルドルフをいいように煽って祭り上げようとする。
低音で攻め立てながら、王座に座れ、お前が皇帝だ、お前ならハプスブルクを救えると畳み掛けて行く。 出来るわけがないと嘲笑いながら、引きずって行くような邪悪さ。ここは邪悪でいいんだと思います。
シシィに対するようにひたすら待っていることなんてしない、手っ取り早く死なせてシシィが絶望すれば自分のものになるかなと画策。
でもルドルフが死んだ時にシシィが死なせてと言っても自分を愛してないからヤダとか言ってて、めんどくさい閣下。

まあそれはそれで。

歌に戻ると、トートは主旋律、ルドルフは低音パート、声の高い低いで支配する、されるが決まっているような作りなんじゃないかと。
上から押さえつけてくるようなド迫力のトートにルドルフは従うしかない。
トート役になる人が、敵役や悪役をやっているといないとでは、このあたりに違いが出て面白いでしょう。 悪い役経験が少ないと、ちょっと平板になるかもしれませんね。
人を陥れて楽しむようなサディスティックさがあると、相当迫力が出るでしょう。

北翔さんは新人公演時代に悪役や敵役を多くこなし、吸血鬼役もやったんでしたっけ、また、本公演でもおいしい敵役をされていて経験豊富。

全ては自分の手のひらで転がしているんだっていうのがすごく伝わる歌唱と演技で、ユニークでした。

やはりここでもポイントは支配力。 北翔さんの圧倒的な声と、猛禽類のごとく獲物を掴む迫力で、ルドルフは食い尽くされてしまうでしょう。
星組で上演されると想像すると、ルドルフは礼さんが似合うと思います、と勝手なキャスティング。

「愛と死の輪舞」では甘かった北翔さんの声は「闇が広がる」では、獲物を捕らえて離さない強さで押してくるし、低くて怖い。同じ人が歌っているとは思えない表現の違いです。

ついでにどこかで「最後のダンス」も聴きたいな。 これまた悪悪で来るだろうし。前半はタレーラン風「気品ある悪さ」で迫ってくると思います、ふふ。

というわけで、勝手な講釈失礼致しました。


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