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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

Mr&Mrsスミス

2009-05-10 11:11:00 | 映画(ま)
評価点:72点/2005年/アメリカ

監督:ダグ・リーマン

二大映画スター競演による、脳天気映画。

ごく普通の美男美女の夫婦。
だか、彼らは夫婦でカウンセラーに通うほど、夫婦仲が冷え切っていた。
なぜか。
妻のミセス・ジェーン・スミスは語る。
「だって秘密のない夫婦なんてないでしょ?」
彼らは2人とも、お互いには秘密で、殺し屋をしていたのだった。
それも一流だから大変。
だが、お互いが同じ標的を狙っていることがわかり、2人は殺し合うはめになってしまう。

この冬期待のお馬鹿映画の一本。
二大スターが共演、ということが目玉になっているのではなく、この2人が、本当に夫婦になってしまうかも、という点を併せて、期待したくなる「目玉」なのである。
だって、結婚と言うことになれば、どうかんがえても、この映画のようになるのではないか、と期待に胸ふくらむじゃあ、ないですか。

なにはともあれ、失敗することのない程度の完成度はある。
デートや暇つぶしにはもってこいの映画なのである。
見ていない人は、どうぞ。
ポッタリアンでなければ、こちらを僕はおすすめしたい。
 
▼以下はネタバレあり▼

この映画の大きなポイントは、「普通」ということだ。
「普通の夫婦」「普通の家庭」「普通の人間」ということが、全面に押し出ている。

例えば、名前。
映画ファンや、アメリカに詳しい人ならすぐにわかることは、「スミス」が非常に多い名字だということである。
日本と名字の意味合いが違うアメリカにとって、スミスという名は、一般人の代名詞とも言うべき名字である。
しかも、その2人のファーストネームは「ジョン」と「ジェーン」。
僕は思わず吹き出しそうになった。
ジョンは、名前がなかったらとりあえずつけとけ、という程度の一般的な名前だし、GIジェーンでもあるように、
ジェーンも同様、非常にありきたりな名前なのだ。
この2人にこの名前を付けたのは、明らかに、ふたりがいかにも一般人ですよ、ということを強調するためであろう。

それだけではない。
二人の性格の違いが、一般人を揶揄しているところが多い。
たとえば、二人の武器の隠し場所。
夫は、車庫の地下室。
妻は、キッチンのオーブンの中。
趣味でおもちゃや釣りのロッドを大事にしまっているお父さんと、台所にへそくりを隠すお母さんを想像せずにはいられない。
夫は、おおざっぱで適当なところがあり、妻は、計画通りに実行できないことが許せないタイプ。
お互いを尊重しあっているが、相容れないところがあり、負けず嫌い。
この対比が、今のアメリカの夫婦の典型になっている点がおもしろい。
殺し屋という現実離れした設定を、見事に感情移入させる対象できた理由は、この卑近なまでに抽象化、典型化された夫婦像にあるだろう。

この映画を見ながら思いだしたのは、「トゥルー・ライズ」という映画だ。
シュワちゃんのアクション・コメディである。
「トゥルー・ライズ」では、夫の方だけが特殊任務に就いているという設定だが、この「Mr&~」のほうは、二人ともが秘密を持っている。
二つの映画の違いは、おそらく、夫婦像が大きくかわってきた証だろう。

だから、彼らがお互いを標的としなくてはならなくなったという時、二人の殺し合いは、あたかも夫婦げんかをしているようなほほえましさだ。
殺し合いをしているのではなく、命がけで真剣に夫婦げんかをしているのだ。
現実に行っていることと、レベルの低さという落差は、笑いにつながり、そのまま、現実的な夫婦げんかを彷彿させることになる。
つまり、現実とは逆なのである。
殺し屋どうしの真剣の殺し合いを滑稽に見せることで、現実のささいな夫婦げんかを、実は大変な殺し合いなのだと、皮肉っているのだ。
だから、夫婦やカップルで見に行ったら、爆笑と苦笑いの連続だろう。

この現実離れした設定と、卑近さがこの映画の肝になっている。
だから映画のテーマは、あくまでも「普通の夫婦」なのである。
映画の最大の見所は、ラストの二つの組織からねらわれるという、アクション・シーンではない。
中盤にある、夫婦げんかのシーンだ。
夫婦がお互いに尊重し合い、そして夫婦としてやっていくための通過儀礼を描いた映画なのだ。

だから、映画の終盤になると、ほとんど目的を失う。
お互いが殺し合う理由が無くなり、一つの目標に向かって合意すると、もう戦う目的が抽象化(肥大化)されてしまい、一気におもしろくなくなる。
ラストなぞ、現実的に目的解決できるはずのない敵と戦いを繰り広げてしまう。
お互いの組織を相手に、二人が勝てる手はないのだ。
だが、映画は円満で終わる。
「十段階で表すと、10だ」

この映画は、殺し屋という仮面をかぶった夫婦げんかの映画なのだ。
夫婦が仲直りしてしまえば、もう、何も描くことなどない。
その色があまりに出過ぎたため、アクション映画としては、中盤からラストに欠けて消化不良な感は否めないだろう。

だが、その設定のうまさや、筋のわかりやすさ、テンポの良さ、陳腐でシンプルなことを丁寧にやってのけた出来には好感が持てる。
何より、噂の二人が、タイムリーな映画で競演したことは、ポイントが高いだろう。

それにしても、完璧なカップルだよな~。

(2005/12/17執筆)

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