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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

フレンチ・ラン(V)

2019-07-01 16:30:28 | 映画(は)
評価点:74点/2016年/イギリス・フランス・アメリカ/92分

監督:ジェームズ・ワトキンス

現代社会の「敵」はだれだ?!

フランス、パリでスリを生業にしている男リチャード(マイケル・メイソン)は、ある日女性から紙袋をすった。
しかし、その中には女性が置きそびれた爆弾が入っていた。
知らなかった男は、袋をゴミ箱に捨て、去ったところで爆発する。
驚いた男は立ち去ったが、そのゴミ袋はテロ計画の一端だった。
予期せず関与してしまった男が、フランス警察と、パリを秘密裏に監視していたCIA当局から追われてしまう。

アマゾン・プライムで見つけた作品。
他にも列を成して私を待ち構えているが、とりあえず観てみた。
知らない映画の方が、興味をそそられるので、まだ批評にしていない名作もあるが、さくっと観た。

出ている人間は、私にとってはあまりよくわからないので、本当に知りたい人はどこかのサイトで確認して欲しい。
キャスティングや監督が特に有名でなくても良い作品は撮れる、そういう作品だ。
(あ、有名なのかもしれないけれども)
日本の映画でも、これくらいの説得力ある映画は撮れるんじゃないかと思ってしまう。
だれが首相役をやっても良いけれど、同工異曲の作品が多すぎて、もはや魅力を失っている。
という邦画への愚痴はさておき、観ていないなら、観る価値はあると思う。

▼以下はネタバレあり▼

スリ、汚職、デモ、テロというまさに現代のパリを象徴するキィ・ワードを列挙するとこの映画が出来上がる。
非常におもしろいし、シナリオのアイデアがよい。
あらを探せばきっと見つかるし、それを見つけてしまったら魅力が失せてしまうかもしれないが、それでも良品だろう。

スリがすった鞄が、テロリストの爆弾だった。
ここまでは、ありうる話で、ここからがおもしろい。
その爆弾が実は汚職警官たちによって計画された、銀行強盗の話だったという点は非常にうまい。
これに、よくある話のパターンの一つで、日常ではつまはじきにされている者が、一つに事件でいちゃくスターになる、そういうパターンを掛け合わせた映画だ。
窓際族の刑事が事件を解決したり、平の会社員が会社を救ったりするパターンの一つだ。

スリはパリでは社会問題になるほど深刻で、ルーヴルにはわざわざ入場料を払ってスリに来る犯罪者がいる。
入場料を払っても、すれる金額が大きいということだ。
また、テロが頻繁に起こるようになってから、それに伴うデモもまた一層活発になった。
フランスは市民革命が行われた国で、特にパリは沢山の広場がある。
これは広場であって、公園ではない。
広場は国が用意した計画された場所ではなく、人々が自然発生的に集まってくるそういう場所だ。
(何かで読んだ気がするか出典はわすれた。)

民主主義の一つの醍醐味ともなっているデモは、フランスの魂といってもいい。
だから、意図して扇動されたら誰もが参加するだろう、そういう熱気がある。
そういう記号性をしっかりと把握して作られたシナリオである。
本当の悪は、悪徳警官であり、これがまたいかにもフランスらしい。

悪徳警官達が、CIAのブライヤーをみて、「あいつはプロですよ」と焦っている姿が笑える。
5億ユーロというとてつもないお金を、何のリスクもなく手に入るともくろんだ彼らは、一人のスリに濡れ衣を着せようとする。
しかしそれを、監視していたCIAが暴き、助ける。

アメリカのCIAがいかにもスーパーマンのような扱いがすこし気に障るが、しかたがない。
小悪が大悪党を捕まえていくという展開は、とても小気味が良い。

アクション映画の「敵」が想定しにくくなった現代において、こういう映画をみると可能性がまだまだあると実感する。
日本も、同じ主人公が紅茶を注ぐような映画だけではなく、もっと面白い作品は撮れるだろう。
アイディアが生まれる日本映画業界であってほしい。


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