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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ナイト&デイ

2010-10-31 20:03:28 | 映画(な)
評価点:79点/2010年/アメリカ

監督:ジェームズ・マンゴールド

キャメロン・ディアスに完璧に感情移入できる。

父親が完成できなかったGTOのパーツのためにカンザスに行っていたジューン・ヘイヴンス(キャメロン・ディアス)は、偶然出会った謎の男ロイ・ミラー(トム・クルーズ)と同じ飛行機に乗り合わせた。
甘い台詞を吐くロイにめろめろの彼女は、機内のトイレでおめかしして出てくると「パイロットが死んだんだ」と告げられる。
あまりの唐突さに笑いを堪えられない彼女だったが、乗客が全員死んでいるのを見てパニックに陥る。
終止穏やかな口調でなだめるロイに対して、気が動転する彼女が次に気づくと、自宅に戻っていた…。

バニラ・スカイ」以来のトムとキャメロンの共演作品。
ここ最近、洋画でみたいものが少ない中で、唯一と言えるほどのエンターテイメント作品だろう。
(勿論「エクスペンダブルズ」もあるんですけどね)
3時10分、決断のとき」の監督がメガホンをとり、スパイ映画に挑戦した。
これまで数多くの作品に出演し、日本でも人気の高い2人がどのような映画を作ったのか。

第五回「M4」会(映画をこよなく愛する4人の映画鑑賞会)で鑑賞した。

▼以下はネタバレあり▼

この映画の最大のポイントは、2人のキャラクター設定であったことは言うまでもない。
いままで様々な映画に出演してきた2人が、スパイ映画を撮るとなって、マンネリズムは避けられない。
どのようなキャラクターでも、「既視感」はぬぐえないだろう。
その中で、どんなキャラクターをみせるのか。
結論から言えば、これまでのキャリアの積み重ねを上手く利用したキャラクター造形だったといえる。

あり得ない状況に2人が追い込まれて、キャメロンが驚きパニックになっている間に、トムが冷静にそれを切り抜けるという展開だ。
キャメロン・ディアスが素人まるだしのリアクションをとることで、日常にいる人間が非日常に引き込まれるギャップを上手く表現している。
たまたま乗り合わせた機内にイケメンが乗っていて、ゲットしようとしたら、なんと乗客全員が死んでいた。
という、ありえない設定でも、「もしあり得たとしたら」と想像させるには十分なキャラを演じている。
だから観客は完全に感情移入できてしまう。
観客は当然、2人の出演する映画をよく観ているわけで、あり得ない状況をすんなり「観客として」同化できる。
これはシュワちゃんが昔「ラスト・アクション・ヒーロー」でやってのけたメタ・フィクションだ。
この映画の脚本は2人のキャリアに立脚したうえで練られている。
当然、「ミッション・インポッシブル」のトムや「マスク」のころからのイケイケ姉ちゃんのキャメロンも意識されている。
だからこそ、この映画は驚くほど感情移入しやすい作品になっている。

特に中盤でトムがスペインの武器商人アントニオと繋がっている下りでは、映画をどの方向にもっていきたいかが一瞬見えなくなる。
本当にトムが悪人なのか、善人なのかわからなくなる。
これはそれまでにキャメロン・ディアスに完全に感情移入できているからに他ならない。
だからこそ、彼の真意が分かったとき、驚くほどのカタルシス(=浄化作用)を得ることができる。
また、その真意がすばらしく良い。

両親に死んだと伝えている代わりに、こっそり彼らを見守っている。
何かあったらすぐに対応できるように監視し、逐一自分のケータイに情報が届く。
宝くじに当たったと偽って、「仕送り」も欠かさない。
ロイはどこまでも「ナイト」であり、紳士的な態度で自分のすごさや強さをアピールすることはない。
その優しさを知ってジューンは彼を追い求めるようになるのだ。
その展開は、お決まりでありながらも、その偉大なる優しさのために、ほほえましささえ感じる。
運転手が死んで、代わりに運転させられているジューンに必死で語りかけるロイは、まさに騎士なのだ。

そして、物語の収まり方も、非常に心地よい。
先に指摘した「動きあり」というケータイのアラームの意味や、「いつか」という夢の話、電池が熱くなるという危険性など、すべての要素がすんなり落ち着くところに落ち着く。
その感覚はやはりコメディ要素の高いこの作品では非常に重要だった。
どこまで安心感の中で物語を楽しめるという快感。
これまで多くの作品が世に出されてきたが、これほどうまくまとまった映画もなかなかない。

言うまでもなく、アクションも無駄にすばらしい。
どこかのアクションスターが勢揃いするアクション映画では何が起こっているのか分からなかったが、こちらはきっちりと状況を捉えやすいようにアクションしてくれる。

キャストのキャリア、シナリオ、映像。
チープな映画だが、入念に仕組まれている。
本当に心地よい映画だった。

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