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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

サウンド・オブ・サイレンス(V)

2008-10-12 23:48:09 | 映画(さ)
評価点:63点/2001年/アメリカ

監督:ゲイリー・フレダー

マイケル・ダグラス主演のサスペンス。

精神科医のネイサン(マイケル・ダグラス)は、友人の精神科医にある患者を診てほしいと、呼び出される。
少女はあらゆる精神科医の分析でも解明できないほど複雑な症状だった。
翌日、目覚めるとネイサンは自分の娘が誘拐されたことに気づく。
犯人は、娘の命と引き換えに、今日中に少女から6桁の数字を聞き出すように要求する。
病院に向かったネイサンは、依頼してきた友人も、恋人が人質に取られていたことを知る。

マイケル・ダグラスという人を映画の中でみると、なぜかミステリアスで、どこかサスペンスの匂いが漂うから不思議である。
この映画も、ダグラスが主演しているということだけで、すでに続きがみたくなるようなシリアスさがある。

▼以下はネタバレあり▼

ミステリーとしてはなかなか良い出来にしあがっていると思う。
いくつかのプロットを示しておいて、どんどんそれがつながっていくという過程は、見ている方としても、かなりそそられる展開だった。
また、出てくる女性がみんな美しい。
さらわれる主人公の娘、妻、そして事件のキーを握る少女。
彼女たちの美しさに、物語はもっとミステリアスで、どこか「怖い」世界につつまれてく。
ほかのミステリーではあまり感じないが、この映画ではその美しさが充分に利用され、計算され、描かれている。

身を守るために敢えて精神病を装う少女。
ダイヤを手に入れられなかった強盗団。
発見される謎の死体。
少女が口を閉ざす六桁の数字。
あらゆる符号が、あらゆる謎が提示され、また、娘を人質にとられるという絶体絶命感は、ひきつけられる展開である。

しかし、惜しい点がいくつかある。
一つは、展開がすこしヨメヨメなところ。
謎が提示され、速い段階で事件の全貌が読めてしまう。
謎の提示の仕方がよかっただけに、事件の全貌がわかるまでもっと引っ張ってもよかった。
また、冒頭のダイヤを盗みそこなうシーンは、小出し小出しにして、断片化してみせたほうが、先が読めなかった気がする。
冒頭というインパクトある場所に配してしまっては、どうしてもそれを意識してしまうし、身構えて見てしまう。
最後の最後まで六桁の数字の意味を明かさなかった点以外は、ほとんど読めてしまう。
その数字の意味も、展開上は、どんなものでもよかった気もする。
これは少し痛いところである。

もう一つは、閉鎖感である。
僕が最も好きな展開が、この閉鎖感である。
「ダイ・ハード」にしても、「ザ・ロック」にしても、「エイリアン」にしても、
閉鎖的な環境で起こる事件は、かなりそそられる。
この映画も、ひみつを頑なに守る少女と娘を誘拐された精神科医という構図で、閉鎖感ある展開を予想したのだが、実際には、少女はすぐに連れ出されてしまう。
また、会って二日しか経っていないのに、病気がウソであることを見抜いてしまう。
何年も秘密にしていたことが二日で明かされてしまうのだ。
もちろん、展開上、仕方がなかった感はある。
しかし、絶体絶命の中、困難なやりとりをする、という非常においしいモティーフを捨ててしまうのは、非常にもったいない気がする。

そして最後に、犯人像である。
精神科医の恋人を人質に取り、殺してしまうというほどの徹底振りをみせる犯人。
そのあたりのプロ意識は、敵として好感がもてる。
しかし、誘拐した家の上に本拠地を構える、というおバカな発想はなぜなのか。
いくらキレるといっても、子どもにそれを見抜かれてしまうというのは、やはりプロとして不合格である。
少女に数字を言わせるために、やたらとまどろっこしい方法をとっていたが、誰かを送り込み、ダグラスのように、連れ出してしまえば事足りたはずである。
病院に忍び込み、隠しカメラを設置する余裕はあっても、連れ出すことはできなかったというのは、ちょっと、ね。

さまざまなプロットをしこみ、緊迫感ある展開にもっていったことは、サスペンスとして充分に楽しめる作品にした。
しかし、もう少しひねれば、もっと良い作品になったのではないか。

邦題については、明らかに損をしている。原題どおりでよかった気がする。
確かに雰囲気は言い当てている気はするが、誤解を生むタイトルであることも確かだ。
実際に話さなかったのは、ごくわずかな時間だし。

(2004/3/29執筆)

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