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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ザ・ロック(V)

2008-10-13 19:46:20 | 映画(さ)
評価点:90点/1996年/アメリカ

監督:マイケル・ベイ

数々の戦役を戦い抜いてきたアメリカの英雄ハメル准将(エド・ハリス)は、武装蜂起を決心する。
自分たち兵士たちが、受けてきた扱いを訴えるために、アルカトラズ島にある刑務所に立てこもる。
一方、化学専門のFBI捜査官のグッドスピード(ニコラス・ケイジ)は恋人と楽しんでいるときにいきなり呼び出されてしまう。
訓練だと思っていた彼に告げられたのは悪魔の化学兵器のVXガスが奪われ、人質を取り立てこもっているという事実だった。
ザ・ロックという監獄を攻略するために国家が闇に葬り去ったネイサンを呼び付ける。
司法取引を持ち掛けるFBIにネイサンは巧みに脱走を試みる…。

最も好きなアクション映画の一つ。
ビデオを借りてすぐに買いに行った映画だ。
その頃はまだDVDが普及していなかったからだ。
見直すとかなり劣化していたのでDVDに買い替えを検討中だ。
ニコラス・ケイジのアクション映画の中でも何度も見直してしまうものは少ない。
やはり何度観ても飽きないのは完成度の高さに理由があるのだろう。

何より、役者がすごくかっこよく撮られていることが、好感が持てる。
まだ見ていない人は是非見るべきだと思う。

▼以下はネタバレあり▼

この映画の物語の軸は、ニコラス・ケイジにはない。
ニコラス・ケイジのアクション映画でありながら、彼は単なる視点人物にすぎない。
エド・ハリス扮するハメル准将の姿こそを描きたかったのだ。

冒頭で数々の戦場の断末魔を回想しながら、ハメル准将は決意する。
武装蜂起することで、今まで蹂躙されてきた兵士たちの無念を晴らそうと。
だから、冒頭にあえて、印象的に、そのエピソードをもってきたのだ。
この映画の成功、それはそのスタンスをずっと保ち続けたことだ。

見た瞬間になぜか「カイル」と叫びたくなる役者マイケル・ビーンが映画の序盤でいきなり殺されてしまう。
それはあまりに残酷で、あまりに悲惨で、あまりにも鮮烈な最期だ。
僕はこの映画を支えているシーンは、このシーンだと思っている。
この海兵隊の無残な死で、ハメル准将は、「お前たちのせいでまた兵士が死んだ」と告げる。
この海兵隊の一方的な戦いによる死は、ハメル准将がこれまで見てきた兵士の無駄死にと全く同じだったのだ。
無理な作戦を国がたて、国に殉教する覚悟で臨んだ兵士たちが何も知らずに死んでいく。
死んでしまった兵士に対する扱いは、英雄としてではなく、黙殺という尊厳のかけらもないものだった。
つまり、ハメルは自分たちの行動により、また幾人かの兵士を死に追いやってしまうのだ。

この矛盾した感情を瞬時に理解したのは、他ならぬ英国諜報部員として雇われアメリカ政府に幽閉されていた男、ネイサン(ショーン・コネリー)だった。
ショーンは、一度捕まったのち、脱獄する。
その際一目散に逃げようと、グッドスピードの止めるのも聞かない。
彼は読んだのだ。
ハメルという男は軍人で、国を守るべき軍人がどれだけ追い込まれようとも、民間人を無碍に攻撃することはない。
すべてはブラフ、はったりで、そしてやがて政府軍によって島もろとも爆撃されてしまう、と。

ここにハメルという男の悲しみがある。
一貫性ある行動のすべては、何とか戦死した兵士たちの魂を解放したいという一途な思いだ。
だからこそ、僕たちはそこに感動し、アクション映画として「消費」される以上の深みを感じるのだ。

もちろん、ハメルを演じたエド・ハリスの功績はすごい。
彼を見ていると、職人役者だと思ってしまう。
僕はどことなく王貞治に似ているように思うのだが、それは思い過ごしかもしれない。
とにかく、徹底的に「敵」を描くことが、この映画の色あせない所以だろう。

アクション映画としても秀逸だ。
閉鎖性のある設定の前に、キャラクター紹介という位置づけの導入部分で、やり過ぎだろうと思わせる、カーアクションを見せる。
これによって、ショーン・コネリーの切れるキャラクターと、集中したら天下一品のニコラス・ケイジという対比が感覚的に理解できる。
それでいて、甘いグッドスピードは、ネイサンの娘とのやりとりで割ってはいる際は気を利かせる。
その甘さが命取りになるのだが、ネイサンとの心のつながりが一つできたのだ。

痛快なのは、政府と軍人というテーマに、この二人が仲介することで、「正義」を示したことだ。
政府の闇に包まれた機密を忌み嫌いながらも、それでも「ハメルの行動」は間違っていることを示す。
これ以上ないできに感じさせるのは、この二人の異端者が、微妙なパワーバランスの中で答えを示したことだ。

僕は見るとやはり心に残る台詞がある。
「俺たちは海兵隊だ。国に命を捧げると誓った。武器を捨てることはできない。」
「俺たちは上から狙っているんだぞ! 投降しろ!」
「できない!」
というやりとりだ。
ここにはお互いがお互いの志を持った、非常に複雑で、悲しい現実がある。
僕たちは、兵士たちへの尊敬と感謝の念を忘れてはいけないと思う。

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