secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

バンブルビー(V)

2020-08-18 09:41:22 | 映画(は)
評価点:73点/2018年/アメリカ/114分

監督:トラヴィス・ナイト

原点回帰、あるいは予定調和。

惑星サイバトロンでは、オートボットと、ディセプティコンが争っていた。
劣勢だったオートボットのアプティマスプライムはB-127に地球に行くように命じて緊急ポッドに乗せた。
1987年、地球ではチャーリー(ヘイリー・スタインフェルド)が18歳になる誕生日に、誰からも祝ってもらえずに意気消沈していた。
新しい父親になじめず、疎外感を持つ中、行きつけの部品屋から動きそうもない黄色いビートルを譲ってもらう。
なんとか直して、家に持ち帰ったビートルだったが、急に形を変えてロボットになったのをみて、チャーリーは驚く。

「トランスフォーマー」の主要人物のバンブルビーのスピンオフ作品。
公開当時、見に行こうとしていたが、時間が合わずにそのままになっていた。

それまではとりあえず見ていたが、シリーズ作品の最後になる、「最後の騎士王」は見ていない。
(わざわざ見るほどの価値があるとは思えなかったため)

スケールが大きくなりすぎた「トランスフォーマー」シリーズの、原点回帰のような作品。
私は常々人間が闘う余地のなくしたCG戦争は、全く面白みはない、と言っていたので、ようやくその意味を制作陣は理解したようだ。
もうすでに本編がある程度やり尽くした感があるので、お約束の連続にはなるが、そこそこ楽しめるだろう。
それでも私はもっとうまく(大事に)このシリーズを扱ってほしいと思うのだが。


▼以下はネタバレあり▼

多くのトランスフォーマーが出てこないので、キャラクターが散逸されずに物語はスリムになった。
そのぶん、1人1人のキャラクターに掛けられる時間が増えたので、結果物語は深みのあるものになった。
日常との連続性がなければ、こうした荒唐無稽な話はついていけない。
そのファクターとして選んだのが、アメリカの車文化と、音楽(ラジオ)の文化だ。
アメリカ人であれば、より話にのめり込みやすいものになったことだろう。

チャーリーは父親を亡くして自信をなくしてしまった18歳の女性。
車が好きだが、お金がなく、車を買うことができない。
新しい父親と、母親、弟は新しい生活に順応しているが、チャーリーはお父さん子だったため、うまく家族になっていない。
そこで出会ったのが、話すことができないトランスフォーマーのバンブルビーである。

音声機能を奪われて話すことができないが、チャーリーにラジオを付けてもらって話すことができるようになる。
メモリも失われており、自分がなぜここに来たのか、はじめは理解できていない。
二人ともゼロからのスタートとなり、シリーズを知らない観客も、話しについて行けるようになっている。

黒人のメモも、母親の新しい恋人のロンも、憎めないキャラクターが目立ち、全体としておっとりとした物語になっている。
深刻さよりもコメディの要素が強く、そのあたりも本編とは違った雰囲気にしたいという制作者たちの思惑が透けている。

ただ、世界観を生かし切れなかった印象が拭えない。
地球(ていうかアメリカ)に降り立つまで車を知らないはずのオートボットが、すでにサイバトロンで地球の自動車をモデルに走っている。
時系列が過去に戻ることもあり、このあたりの描写は非常に重要だったはずなのに、そのあたりが曖昧になっている。
べつに車でも問題ないのだろうが、それならもっと「あり得ないデザイン」の車にしておいたほうが良かった。
私は冒頭からのこの描写に一気に期待値が下がってしまった。

バンブルビーが家を壊したり、アメリカ軍が敵の言いなりになった後、味方になったり。
シリーズの世界をそのまま踏襲しただけの、ステレオタイプの展開ばかり。
常に新しい何かを描こうとするマーベルと比べるとどうしても見劣りしてしまう。
トランスフォーマーのシリーズが、飽きられてしまったのは、こういう「新しい角度から大きな物語を描く」という脚本家やプロデューサーがいなかったからだろう。
マイケル・ベイのイマジネーションもここまでか。

原点回帰。
それは良い意味でも、悪い意味でも、「結局ここしかなかった」という予定調和のようなモノなのかもしれない。
それにしても、アメリカはまだまだ車社会を懐古主義的に大事にしているし、音楽もどこまでもアナログにこだわりたいらしい。


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