評価点:53点/1986年/アメリカ/95分
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
私にとってはこの映画はずっとトラウマだった。
科学者のセス・ブランドル(ジェフ・ゴールドブラム)は、一人研究室に籠もり、転移させる研究を成功目前まで控えていた。
記者のベロニカ(ジーナ・デイヴィス)は、彼と知り合い、その研究が画期的なものだと確信する。
元恋人で上司のボランズ(ジョン・ゲッツ)に報告しても取り合ってくれず、次第にセスに惹かれていく。
生物を転移させることに成功したセスは、勢いから自分を転移させようとポッドに入る。
しかしそこにはハエが一匹混入していた。
小学生の頃だったとおもう。
テレビでやっていたか、近所の兄ちゃんだったかのビデオで見て、飛び上がるほど恐かったのを覚えている。
以来、ホラーと言えばこの「ザ・フライ」もしくは「バタリアン」だった。
Amazonプライムで見つけたので、再生ボタンを押してみた。
年を取るというのは楽しくないのだということを改めて突きつけられる結果となったわけだが、今でも十分いやな気持ちにさせられる。
▼以下はネタバレあり▼
変身譚の典型だと思う。
一人の男が、研究のために自己を改造してしまう。
はじめは楽しい感じがしていたが、次第に自分が「ハエ」になっていくことに気づき、絶望する。
この映画のショッキングな点は、カフカ「変身」のように、突然ではなく、次第に変化していくということだ。
その過程はおぞましく、なかなかにグロテスクな映像になっている。
この映画は、見せるホラーと言って良いだろう。
ホラーにも怖さを演出する方法はたくさんある。
その中で、見せないことによって見る側の恐怖を煽るタイプのものがあるが、この作品は、見せることで恐怖を煽る。
腕が溶ける、耳が落ちる、歯が抜ける。
もう子どもにとっては、まさにトラウマレベルである。
少しずつ映像技術が発達してきた時代の80年代後半でも、これほどの描写は特筆すべきものがある。
しかも、融合されてしまうのは、ハエだというから救えない。
だが、この映画が名作であるにも関わらず、どこかしらの哀愁やユーモアが漂っているのは、ところどころコメディになるからだろう。
主人公のセスも、暗い陰湿なキャラクターではなく、どこか変人で変態、根が明るいところがある。
だから、俺の変身ぶりを記録しろ、といったり、「ブランドル・フライ」の博物館を作ったよ、と変身を楽しんでいるふしがある。
その意味では、「スペル」がこの流れを継いでいるといるかもしれない。
(いや、共感してもらえるとは思っていませんが。)
映画としては、物語性が弱く、人物もきちんと描けていない。
ホラーだが、憎むべき相手や倫理観をくすぐるような部分がないので、完結性が弱く感じられてしまう。
具体的には、自由奔放で自分勝手な主人公が、ただハエとなって墜ちていく物語にすぎない。
元恋人の上司が腕をとかされるが、そこまでのルサンチマンが彼にあったとは思えない。
物語としても、因果応報や勧善懲悪の結構になっていないこともあって、スリルや怖さが映像以上に引き出されることはない。
よくテレビで放映されている「ザ・フライ2」のほうが、物語としての流れは整理されている印象を受ける。
少し残念なところだ。
だが、残酷描写を嫌う現代のテレビや映画の状況を考えれば、本当に気持ち悪いし恐い作品だ。
いつか、物心ついたところで息子と一緒に見たい。
なんてね。
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
私にとってはこの映画はずっとトラウマだった。
科学者のセス・ブランドル(ジェフ・ゴールドブラム)は、一人研究室に籠もり、転移させる研究を成功目前まで控えていた。
記者のベロニカ(ジーナ・デイヴィス)は、彼と知り合い、その研究が画期的なものだと確信する。
元恋人で上司のボランズ(ジョン・ゲッツ)に報告しても取り合ってくれず、次第にセスに惹かれていく。
生物を転移させることに成功したセスは、勢いから自分を転移させようとポッドに入る。
しかしそこにはハエが一匹混入していた。
小学生の頃だったとおもう。
テレビでやっていたか、近所の兄ちゃんだったかのビデオで見て、飛び上がるほど恐かったのを覚えている。
以来、ホラーと言えばこの「ザ・フライ」もしくは「バタリアン」だった。
Amazonプライムで見つけたので、再生ボタンを押してみた。
年を取るというのは楽しくないのだということを改めて突きつけられる結果となったわけだが、今でも十分いやな気持ちにさせられる。
▼以下はネタバレあり▼
変身譚の典型だと思う。
一人の男が、研究のために自己を改造してしまう。
はじめは楽しい感じがしていたが、次第に自分が「ハエ」になっていくことに気づき、絶望する。
この映画のショッキングな点は、カフカ「変身」のように、突然ではなく、次第に変化していくということだ。
その過程はおぞましく、なかなかにグロテスクな映像になっている。
この映画は、見せるホラーと言って良いだろう。
ホラーにも怖さを演出する方法はたくさんある。
その中で、見せないことによって見る側の恐怖を煽るタイプのものがあるが、この作品は、見せることで恐怖を煽る。
腕が溶ける、耳が落ちる、歯が抜ける。
もう子どもにとっては、まさにトラウマレベルである。
少しずつ映像技術が発達してきた時代の80年代後半でも、これほどの描写は特筆すべきものがある。
しかも、融合されてしまうのは、ハエだというから救えない。
だが、この映画が名作であるにも関わらず、どこかしらの哀愁やユーモアが漂っているのは、ところどころコメディになるからだろう。
主人公のセスも、暗い陰湿なキャラクターではなく、どこか変人で変態、根が明るいところがある。
だから、俺の変身ぶりを記録しろ、といったり、「ブランドル・フライ」の博物館を作ったよ、と変身を楽しんでいるふしがある。
その意味では、「スペル」がこの流れを継いでいるといるかもしれない。
(いや、共感してもらえるとは思っていませんが。)
映画としては、物語性が弱く、人物もきちんと描けていない。
ホラーだが、憎むべき相手や倫理観をくすぐるような部分がないので、完結性が弱く感じられてしまう。
具体的には、自由奔放で自分勝手な主人公が、ただハエとなって墜ちていく物語にすぎない。
元恋人の上司が腕をとかされるが、そこまでのルサンチマンが彼にあったとは思えない。
物語としても、因果応報や勧善懲悪の結構になっていないこともあって、スリルや怖さが映像以上に引き出されることはない。
よくテレビで放映されている「ザ・フライ2」のほうが、物語としての流れは整理されている印象を受ける。
少し残念なところだ。
だが、残酷描写を嫌う現代のテレビや映画の状況を考えれば、本当に気持ち悪いし恐い作品だ。
いつか、物心ついたところで息子と一緒に見たい。
なんてね。
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