secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

スピード2(V)

2008-11-16 09:54:25 | 映画(さ)
評価点:22点/1997年/アメリカ

監督ヤン・デ・ボン

「どこが、スピードですか?」

ジャック(キアヌ・リーブス)と別れたアニー(サンドラ・ブロック)は、新しい恋人アレックス(ジェイソン・パトリック)に誘われて、豪華客船での旅行に出掛ける事にした。
楽しい旅行のはずが、突如船が揺れ始め、全員退船するようにとの緊急の放送が船内に流れる。
不信におもったアレックスは、操舵室に向かったところ、何者かが船を乗っ取ったことを知る。

先日、テレビでやっていたのを、初めてみた。
真剣に見ていたわけではないが、おそらくもう二度と見ないので、思い切って書くことにした。

▼以下はネタバレあり▼

前作も、映画館で観ることはできなかったが、ビデオを持っているくらい、大好きな作品である。
前作については詳しくは述べないが、話題になった作品でもあり、また評価が高かった作品でもあるため、この「2」にも期待が高まってしまう。
結論から言えば、残念ながらこの「2」は「ワイルド・スピード」のように、一作目の良さをなくしてしまったところに成立している。
しかも、これまた「ワイルド・スピード」のように、続編として見なかったとしても、完成度は低い。
やはりイケメンのキアヌ・リーブスではなく、髪の毛に哀愁が漂うジェイソン・パトリックでは、どうしても力不足なのかもしれない。

前作の良さといえば、スピード感、閉鎖感、危機感の三つだった。
スピード感は、いうまでもなく、乗り物をモティーフにした怖さ。
そこに乗り物という閉鎖的な環境で展開される物語。
そして、観客の誰にでも訪れそうだ、という日常に根ざした危機感である。

スピード感は、公開当時から言われていたように、船であるために、感じられない。
スクリューにロープを巻きつけるシーンや、タンカーに激突する寸前のシーンなど、スピード感がある場面もある。
しかし、表題にあるような「スピード」感は感じられない。
どうしても大きな乗り物であり、波以外に障害物がないため速さの基準がない。
よって、「スピード」というより、「ポセイドン・アドベンチャー」や、「タイタニック」に雰囲気が似ている。
要するに、アクション映画ではなく、パニック映画である。

そして、閉鎖感。
確かに閉鎖的な環境下で物語が展開する。
しかし、本当に船だけで物語が展開するため、逆に閉鎖感がなくなっている。
外部からの視点がないのである。
しかも、犯人が内部にいるため、閉鎖感はあるが、「船は沈まない(=犯人が沈ませない)」という保障が保たれている。
閉鎖的な環境でありながら、そこに緊迫感が欠如しているのである。

そして、日常に根ざした危機感の欠如。
僕に言わせてみれば、これが一番大きかった。
前作では、誰の身にも起こりそうな事件だった。
ルールが単純で、しかも、誰もが一度は乗った事のある「バス」。
ここに楽しめる大きな理由があったのだ。
しかし、本作は豪華客船。観客のどれだけが乗った事があるだろうか。
乗っている人間も、お金持ちばかりである。
その状況は非常に特殊であり、感情移入しにくいのである。

とはいうものの、前作から何も受け継いでいないというわけではない。
アニーの活躍や、犯人が一人で起こした事件であるということ、また、その動機が非常にゆがんだものであること、などである。
しかし、そんな継承はどうでもよかったのである。
映画を楽しむために、重要な要素ではなかったのだ。
(キアヌのジャックがいないのなら、コンセプトだけを共通にして、全く違う人物で構成する事もできたはずだ。)

それでも違う物語として楽しめれば、全く問題はなかった。
しかし、この作品はそれもできない。
全体的に緊迫感がない。
先ほど言ったように、乗った事もない豪華客船を縦横無尽に走り回ったところで、状況がつかみにくい。

また、犯人やそのほかの登場人物の心理が読めないことも致命的だった。
犯人は、設計技師で不当な解雇をねたみ、犯行に踏み切った。
しかし、実際は金を盗むという単なるこそ泥に陥っている。
もともと、犯人は一人であるから、犯人と主人公たちとの対話が欠かせなかった。
しかしそれもないので、単なる間抜けで迫力に欠けるという犯人像しかイメージできない。

船長が殺害されるときの、船長のバカっぷりもいただけない。
固定されたライトでガツンガツンされているのだから、そこから動けばいいのに、と思ってしまう。
バカ正直に、落とされるまでその場を動かなかったのはなぜなのか。

そして、クルーたちの心理状況もわかりにくかった。
主人公に対してあまりに態度が硬かったり、非協力的であったり、また、後半になって急に協力的になり始めたりと、その心理が描けていない。

しかし、僕がもっと「駄目だこりゃ」と思ったのは、物語の最後である。
タンカーに追突することは、すんでのところで避けられた。
港の建物を壊しまくったあとの、「被害が少なくてよかった」という腕の折れたクルーの台詞は、果たして状況が理解できているのかとオツムを疑いたくなるにしても、それはタンカーに突っ込まなくてよかった、と理解すればなんとか理解できる。
しかし、その後、犯人とともにタンカーが爆発してしまうのは、解せない。
確かに、ハリウッド的には大きな爆発を起こさないといけない。
しかし、タンカーを爆発させるという事は、石油が海にばら撒かれるということである。
しかも主人公たちは、15分ほど前までは、それを必死に止めようとしていたのである。
にもかかわらず、あっさり爆発させてしまうヤン・デ・ボン監督の感性を疑う。

アニーとアレックスは、めでたしめでたしで終っているが、僕にすれば、まったくめでたくない。
そのあと、誰がその石油を拾うのだろうか。
あれほど努力して追突をさけたのは、主人公たちの乗る船が爆発させないためだけだったのか。
この爆発でカタルシスを得させようとした製作陣の感性は、イカレているとしか言えない。
(前作も意味なく爆発したが、それとは比べ物にならないほど大きな問題をはらんでいるだろう。)

また、アレックスだけでなく、アニーを演じるサンドラ・ブロックも好きになれない。
彼女の演じる役はどれも、彼女を「お姫様」にしたてあげている。
「私ってかわいいでしょ」「私っていい女でしょ」という彼女のナルシストぶりが映画からにじみ出ている。ような気がする。

とにかく、非常に、しょーもない映画である。

(2004/6/14執筆)

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