secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

プロジェクトAⅡ(V)

2009-08-08 00:32:39 | 映画(は)
評価点:73点/1987年/香港

ジャッキー・チェン

気負いすぎたか、わかりにくい。

1900年代初頭、清王朝の転覆を企む革命派の若者たちは、香港を舞台に活動資金を集めていた。
そんななか、ロン(ジャッキー・チェン)は前回の功績がたたえられて、署長を任せられるようになる。
前任のザン署長は、署員を懐柔し、賄賂を受け取ることを容認していた。
指名手配犯であるフーはそのため、のうのうと街を牛耳っていた。
それを知ったロンは、すぐさま自らフーの逮捕に向かう。
以前までの部下しかその作戦に協力しなかったため、危うく返り討ちに遭うところを、水上警察によって何とか救われる。
金づるを失ったザン元署長は、ロンを何とか失脚させようと、革命派たちを取り込もうとするが……。

プロジェクトA」の続編。
完全な続編になっているため、前作を見た方が楽しめるだろう。
ただ、つながりがあるのは数人の人物と、前作でやっつけられた海賊の残党のみなので、見なくても話じたいは理解できる。

注目すべきは、この映画の舞台設定が1900年代初頭であることを、ようやくこの作品で知ったことだ。
清王朝の転覆、なんていう設定は、前作では全く問題にされなかったので、設定が現代だと思っていた。
(前作の批評を読み返しても、勘違いしているかどうかよくわからないので、そのままにしておくけど。)
中国のそのあたりの心理状況や政治的な香港の意味合いなどは、ちょっとよくわからない。
そのため、この映画よりも、前作の方が日本人にとってはわかりやすいだろう。
革命派、といわれても、感情移入しにくいのは仕方ない。

アクションについてはかなりのパワーアップ。
Mっ気たっぷりのジャッキーを楽しもう。

▼以下はネタバレあり▼

先も書いたように、清についての革命と保守の争いがコンテクストとして用意されている。
その意味で、前作よりも、かなり政治的な要素が強い。
そのためだろう、「木曜洋画劇場」(今は水曜にやってるけど)の登場回数も、前作に比べて極端に少ない。
僕はほとんど見た覚えがなかった。

全体的な印象は、「気張りすぎた」という感だ。

特にアクションを魅力あるものにしようとして、イマジネーションが爆発している。
だが、肝心のドラマ部分や勧善懲悪の展開などが、感情移入しにくいために、前作よりも熱くはなれないだろう。
手錠をされた状態で、ばたばたと敵と格闘していくシーンなどは、この作品以降の、ジャッキーのアクションの原型とも言える。
見ていて、本当に体がうずうずしてくるのは、さすがと言わざるを得ない。
当時の香港の街並みを余すところなく引き出した舞台設定や、格闘シーンは、カンフーアクションを世界に売り出したことを十分に理解させる。

一方で、いきなりフルスロットルから始まるアクションのオンパレードで、途中からすこし上長気味に映ってしまう。
要するに、くどいのだ。
階段を駆け上るようなテンションの上がり方ではなく、息苦しくなるほど、ずっとアドレナリンが出ている。
だから、おもしろいはずなのに、後半から観客がばててしまう。
気張りすぎたのだ。

また、社会的、歴史的コードが複雑な印象を与える。
おそらく、香港映画を強く意識したために、革命という要素を入れたかったのだろう。
だが、革命派の若者が敵と味方を行き来するために、物語への移入の度合いはそがれてしまう。
ザンとの闘いも中途半端な印象を受けてしまい、徒労感を持つ。
それもこれも、ザン以外の人間たちの哲学がいまいち僕にはつかみにくかったからかもしれない。

これも、やはり気張りすぎたのだ。

コメディ部分も息苦しさを感じる。
アクションと物語双方ともにパワーアップさせたために、どうしてもコメディを見せる尺(時間)が短い。
だから、どうしても大味で、くどい見せ方しかできなくなっている。
その代表が、前回の海賊が登場する一連のシークエンスだ。
警察官がもっとも悪かった、という部分を浮き彫りにするために登場してきた彼らだが、いちいちくどい。
そして、もはやドリフかと思わせるくらいに、陳腐だ。
古い作品だから仕方ないし、香港だから、と割り切れる部分も多々あるのだが、いかんせんしつこい。
仕舞いにはほとんど笑えなくなってしまう。

これもやはり気張りすぎたのだろう。

前作のヒットによって予算が上がったからだろうか。
気張りすぎもよくないのだと思わせる作品に仕上がっている…。

それにしても、悪役のザン署長は、イ・ビョンホンに似ている。
僕のイ・ビョンホンのイメージはほとんどないので、これによって悪徳警官のそれになってしまいそうだ。
そういえば、もうすぐ公開の「G・I・ジョー」に敵役のニンジャで出演している。
敵で、しかも全然関係のないニンジャ役って。
それならまだ悪徳警官のほうがましなのか……。

いや、彼とはザンは全く関係ないんですけどね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ポリスストーリー(V) | トップ | トゥモローワールド »

コメントを投稿

映画(は)」カテゴリの最新記事