外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

中国旅行(5) ウイグル自治区の印象

2012-07-14 18:36:54 | ウイグル・中国

民族衣装姿の、ウイグル人の美少女



「中国旅行(1) あらまし」で書いたように、私の中国旅行の主目的は、ウイグル自治区でウイグル人の暮らしぶりを観察することだった。
上海のインパクトがあまりに強かったため、そちらのほうは幾分かすんでしまったことは否めないが・・・。

「ウイグル人の印象は?」と聞かれたら、「見かけはトルコ人みたいなのに、お箸を使って食事をし、ウイグル語と中国語を話す人たち」と、私は答えるだろう。
トルコ系の民族だけあって、ウイグル人の顔立ち、体型、行動パターン、生活習慣などは、かなりトルコ人に近いように思えた。
だから、ウイグル文化を目の当たりにしても、トルコで数ヶ月暮らした経験のある私にとって、特に新鮮な驚きはなかったといえる。
ただ、彼らが箸を自在に操って麺類を食べている姿をみるにつけ、「ああっ、この人たち一見トルコ人なのに、箸使って食事してる~!」と不思議な気持ちになったものだ。
箸を使用する習慣は、中国支配の影響かもしれないけど。
ウイグル人が中国語を話すのは、もちろん学校で強制的に習わされるからである。
だから、ウイグル人はみんなバイリンガル。
英語を話せる人は少ないので、私が外国人だとわかると、みんなこう聞くのだった。
「中国語は話せますか?」
話せません。


ウイグル人男性は民族衣装ではなく、普通の洋服を着ているが、緑色のウイグル帽をかぶっているのが特徴的だ。
おかげで中国の他の都市で見かけても、「あ、この人ウイグル人だ!」とすぐわかる。
女性はというと、サイケデリックな模様の、極彩色の民族衣装を身につけている人をたまに見かけたが、たぶんお祝い事の時だけ着るのだろう。
普段は男性と同様、洋服を着て過ごしているようだ。
ヒジャーブで髪を被っている人は少ないが、中には髪だけではなくて、頭部全体をすっぽり被っている人もいて、多様である。

ウイグル自治区には、漢人も大勢住んでいる。
これは中国政府による、自治区への漢民族入植政策の結果である。
カシュガルはいまだにウイグル色が濃厚だが、それでも漢人の姿はいたるところで見かけたし、ウルムチにいたっては、入植があまりにも進んでいて、ウイグル人は狭いウイグル人地区に追いやられてしまった、というかんじだった。
漢人とウイグル人の衝突を警戒してか(あるいは、ウイグル人の独立運動を取り締まるためか)、警察のパトロール隊がいたるところで目についたし、ウルムチ・カシュガル間の国内線では、セキュリティチェックが異様に厳重だった。

カシュガルに到着した日、夜中の2時頃、誰かがホテルのドアを激しくノックする音で目を覚ました。
ぐっすり眠り込んでいるところを起こされて、何がなんだか分からない状態でドアを開けたら、そこには警官が数人立っていた。
早口の中国語で何か言っている。よくわからないが、どうやら身分証明書を見せろと言っているようなので、パスポートを渡した。
受け取った警官は、こちらが外国人だとわかって当惑した様子で(外国人が泊まるようなホテルじゃなかったので)、パスポートをめくりながら、どこかへ携帯で問い合わせていたが、結局無罪放免という結論になったようで、パスポートを返して立ち去った。
ドアを閉めて様子を伺っていると、彼らはほかの部屋のドアをひとつひとつ叩いて、泊まり客の身分証明書をチェックしているようだった。
やがて廊下に甲高い叫び声が響き渡ったので、ドアを開けて覗いてみると、寝ているところを起こされて憤懣やるかたない、といった風情の若いウイグル人女性が、警官に食ってかかっている。
どうなるか気を揉んだが、警官たちはあまり相手にせず、あっさり別の階へ移動していった。
あたりがすっかり静まったあとも、私はしばらく眠れなかった。
あれは一体なんだったのだろう。



人民公園をパトロールする警官たち




ウイグル人はこのまま、自治区とは名ばかりの漢人支配地域の、そのまた片隅に追いやられて、ひっそり暮らすしかないのだろうか?

中国からの独立は彼らの悲願だろうが、その日は一生こない、と私は思う。
ウイグルやチベットが中国からの独立を果たす日、それは中国崩壊の日である。つまり、ほとんどありえない。
しかし、いずれ中国全体で民主化運動が盛んになり、その波にのって、ウイグル人もより多くの権利を手にする可能性はある。
これがおそらく彼らにとって、最良のシナリオだろう。

ウイグル人自身は漢人による支配をどう思っているのか、自分たちの民族の将来についてどう考えているのか。
語学力不足のせいで質問できなかったのが、とっても心残りである。


顔を完全に被ったウイグル女性



郊外のバザールで、羊を売る男たち



民家のドア



アパック・ホジャの霊廟 中央アジアっぽい骨太な建築



羊肉屋



写真は全部カシュガルで撮影したものです。

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5 コメント

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Zhenさんへ (michi)
2020-02-17 03:35:48
大半の漢族の人たちは、政府のウイグル政策を否定しないのですね。日本人の多くも自国が過去に中国や韓国等で実行した非人道的な行為に目を向けず、未だにヘイトの対象にすらしているし…トルコの世論はアルメニア人虐殺を事実として認めないし、ミャンマー人もロヒンギャ迫害を正しいことだととらえている人が多そうです。子供の頃から刷り込まれてきた固定観念等から抜け出すのは難しいのかもしれません。学識や見分の広さは無関係に思えます。

私自身も日本の植民地政策について詳しくは知らないので、勉強しなきゃいけないな~と思います。なかなか余裕がありませんが・・・
返信する
michiさんへ (Zhen)
2020-02-16 14:51:36
コメへの返信ありがとうございます。
おっしゃられる通り、今の中国政府のやっていることは、許されることではありません。ところが、中国の人口の9割を占める漢族の人たちは、政府のやっていることが、とんでもないことだと思っていないようです。海外生活の経験もあり、見識のある漢族の友人でさえそうなのです。中国という国が、民主化したとしても、継続する可能性の高いことなのです。とても悲しいことです。
また、過去に日本帝国がやっていきたことと、良くも悪くも似ています。日本語を強要したように漢語を強要した半面、税金を投じインフラを整備しています。反日本帝国をアイデンティティにしている現在の中国共産党政府が、日本帝国と同様の植民地政策をとっているのですから。
申し訳ありません、政治的な堅い話になって。
返信する
Zhenさんへ (michi)
2020-02-16 02:56:59
漢族側からのウイグル・少数民族への歴史に根差した恐怖感には思い至りませんでしたが、中国政府が行っているウイグル人の土地の占領、漢族入植政策、100万人単位で強制収容所に閉じ込めて、民族としてのアイデンティティを消そうとする試みを正当化することは到底出来ないと思います。少数民族迫害を行っているのは中国政府だけではないし、日本政府も過去に残酷なことをやってきましたが。
返信する
ウイグルについて (Zhen)
2020-02-13 18:35:49
昨年(2019年)もカシュガルほかウイグル自治区に行きましたが、中央政府の統制、弾圧は、年々厳しくなり、胸を痛めることが多々ありました。
また、昨年から中央政府の弾圧が、日本でもマスコミに取りあげられるようになり、「ウイグル人可哀そう、中国政府、漢族酷い!」といった論調が日本でも語られます。
ただ、漢族側から見たウイグル、少数民族への視点が欠落しています。圧倒的な数の漢族ですが、過去に元(モンゴル族)、清(満州族)といった少数民族に全土を征服された経験をしています。この恐怖の経験は、DNAレベルにまで刷り込まれていると思います。その恐怖感は、少数に飲み込まれた経験のない日本人には、理解しがたいのかもしれません。そうでなければ、万里の長城のような巨大な建造物を人力で作らないでしょ。
返信する
何を知ってる? (urumuqininn)
2013-08-28 14:39:32
責任なしに嘘ばっかりの記事をやめなさい。
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