外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

2019年チュニジア・トルコ・イタリア旅行記(36)~イタリア南部バジリカータ州への旅・アリアーノ観光編~

2020-12-12 07:03:52 | イタリア

 

 

またしばらく更新をサボっているうちに、もう12月も半ばに近づいた。なんと、もうじき年末じゃないか。う~む、この旅行記、今年中に書き終わるんだろうか。あとちょっとなんだが。来年に持ち越さないようにがんばらなければ。

 

というわけで、今回はバジリカータ州アリアーノを訪れた時の話の続き。前回は、町をうろうろして猫だまりを見つけて満足し、一休みするために宿に戻ったところで終わっていた。

 

宿に戻ってベッドに横になり、夕食まで眠るつもりでうとうとしていた時、天啓に打たれたかのように不意に目覚め、「はっ!私はわざわざアリアーノまで猫を見に来たんじゃなかった~!せめてカルロ・レーヴィの家には行っとかなくちゃ!」と思い立ち、むくりと起き上がって、急いでまた出かけることにした。日が暮れるまでにカルロ・レーヴィの家にたどり着かなくては。彼が流刑先のアリアーノで暮らしていた借家が保存されていて、今は博物館になっているはずなのだ。夕方なのでもう閉まっているかもしれないが、せめて外から眺めるくらいはしなければ申し訳ない(誰に)。

 

スマホで場所を調べ、そちらに向けて渓谷沿いの道を歩いていたら、彼の本に出てきた「狙撃兵の墓(溝)」(Fosso del Bersagliere)の案内板に行き当たった。

 

 

19世紀のイタリア統一直後、南部でブリガンテ(brigante=山賊)らが新政府に対する抵抗運動を繰り広げた時期に、北部のピエモンテから来た狙撃兵が投げ落とされたという渓谷だ。

 

 

そのそばの広場でまた猫を発見したので、ついつい写真を撮ってると、小柄なおじいさんが話しかけてきて、「猫を撮ってるのか?向こうの家にも何匹かいるよ」と教えてくれた。

 

 

要所要所に猫がいる

 

 

教えられた家に行ってみたものの、周辺に猫は見当たらなかった。広場に戻っておじいさんにその旨伝え、これからカルロ・レーヴィの家に行くのだと告げたら、彼は急に真顔になり、「カルロ・レーヴィの家か。よしわかった」と力強くうなずいて、手でついて来いという合図をして歩き出した。頼んでいないのに案内役を買ってくれた彼を少し不審に思ったが、結局素直に着いていくことにした。彼は道中、町の建物などについて色々説明してくれた。

 

 

これは、アリアーノの伝統的な建築様式の住宅「目のある家」(la casa con gli occhi)

 

 

家の正面が人の顔の形をしていて、目と鼻と口がある格好になっている。悪い精霊を怖がらせて遠ざける効果があると信じられていたらしい。

 

 

こちらの家も、窓が目のようになっている。

 

 

カルロ・レーヴィの胸像がある広場に着いた。もう夕暮れ時だ。

 

 

彼の著作「キリストはエボリで止まった」に出てくる場面を地元の高校生が描いた壁画を通りかかる。

 

 

 

まもなく、カルロ・レーヴィの家(博物館)にたどり着いたが、案の定閉館していたので、外側から眺めるだけ。

 

 

すっかり修復されて、一見普通の住宅にしか見えないが、かつてここの屋上でカルロが絵を描き、夜は暖炉の炎の前で風の音を聞きながら、孤独をかみしめていたのだ。

 

 

夕闇と沈黙がしだいに濃くなり、周囲の谷を包み込む様子がたいそう良かった。

 

 

しばらく1人で風景を眺めながらぼんやりしていたい気分だったが、おじいさんがいるのでそういうわけにもいかない。彼は私を従えて、また町の中心部に戻り始めた。

 

 

 

 

歩いている途中で、年配のイタリア人の4人組の旅行者が近寄ってきて、カルロ・レーヴィの家はどこかと質問したので、おじいさんは彼らを案内するためにまたカルロの家に戻ることになった。「あなたも、もう一度一緒に来なさい」と言うので、行きがかり上私も付いていく。

 

おじいさんは、カルロの家の他にも、かつての「ポデスタ」(ファシスト政権下で任命された自治体の長)の家や司祭の家などを回ってくれ、最後に皆と握手して別れた。この日の私の印象では、アリアーノの住民は「フレンドリーだが、余所者とはある程度距離を取り、ほどほどに親切」というイメージだったが、このおじいさんの親切はその範疇をはるかに超えていた。

 

イタリア人の4人組は、ローマとサルデーニャ在住の年金生活者の夫婦2組で、以前からの友達で一緒にイタリア国内をあちこち回っているとのことだった。女性の1人がカルロ・レーヴィの読者で、彼女が提案してみんなでアリアーノを訪れることにしたらしい。

 

彼らも私の宿の下のリストランテで夕食を取る予定だというので、一緒に行くことになった。

 

 

リストランテの名前は「目のあるロカンダ(宿屋兼食堂)」(La locanda con gli occhi)

 

 

前述の「目のある家」(la casa con gli occhi)と同じく、建物の窓部分が目のようになっているのだと思われるが、建物全体の写真を撮っていないので確認できず・・・

 

 

内装は民芸調 

 

 

イタリア人の夫婦たちはプリモ(1皿目)とセコンド(メイン)の両方を取ったが、私はプリモだけにして、ワインはシェアした。私たちの他の客は、若い男性の外国人旅行者1人だけだった。彼は先に食べ終わって席を立った際、私たちのテーブルに近づいて、英語で「僕はイタリア語は喋れないけれど」と前置きをしてから、「ブオナッペティート!」(Buon appetito 「美味しく召し上がれ」)とひとこと言って微笑み、立ち去って行った。

 

 

この辺りの郷土料理、カヴァテッリ(cavatelli)というパスタのトマトソース。プリモは皆これを頼んだ。

 

 

パスタは手打ちで、もちもちした触感で美味しかったが、トマトソースとチーズはごく普通だった。

 

 

 

 

彼らは穏やかで話しやすい人たちで、日本に興味があるらしく、色々質問された。私の方も、イタリアの当時の政府についてどう思うか、原発には賛成か反対かなどと、ここぞとばかりに質問した。彼らは反原発、反サルヴィーニ(極右政党「同盟」の党首)ということで、非常に話が合った。私の翌日のバスや電車のことも心配してくれた。

 

彼らとフェイスブックで友達になってから、自分の分を清算してもらって(10ユーロ)別れ、早めに階上の宿に戻ってシャワーを浴び、マテーラからペットボトルに詰めて持ってきたワインを飲んでくつろいだ。

 

アリアーノではやたらに猫に出くわし、猫に導かれて出会ったおじいさんに連れられて町を歩き、その時に知り合った人たちと夕食を共にしたわけだ。猫に導かれた1日だったと言えるだろう。そもそも今回は、旅の始まりのチュニジアからずっと、猫と酒に導かれて進んできた気がする。そんな旅も、あと少しで終わり。最後までしっかり楽しみたいものだ。

 

 

(続く)

 

 

 

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4 コメント

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Michiさん (Zhen)
2020-12-14 22:39:10
待ってましたよ!
しばらく更新がなかったので、ご多忙なのかな、と思っていました。僕の日記へリアクションを頂いていたので、具合が悪い訳じゃないのかな、と都合よく考えていました。

旅先のホテルで、寝坊したり、昼寝したりも悪くないのですが、やはり、「今しかできないことをやるべし!」と思うものですよね。

それにしても、Michiさんの旅には、出会いがあり、素晴らしい!

続き、楽しみにしています。
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Zhenさんへ (Michi)
2020-12-16 18:43:16
お待たせしました~

私は生産性が低い上、時間の概念が薄いため(目覚めてから起きるまで2時間くらいかかる)、更新をサボると1か月なんてすぐ過ぎてしまう・・・

旅先でもホテルでゴロゴロしがちですが、やはりそれなりに行動しなくてはいけませんね。出会いはありますが、突っこんだ仲になれないのは、性格的なものかも~

Zhenさんのブログもいつも楽しみに拝見しています。頑張ってらっしゃいますね~実は私はコメントを書くのが苦手なので、今後あんまり書かないかもですが、いつも応援しています。

それでは、これからもよろしくお願いします。(^▽^)/
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Michiさんへ (Zhen)
2020-12-17 23:05:43
ブレッシャーかけたみたいで、ごめんなさい。
軽く読み流してください。
生産性なんて、どうでもいいことですよ。
人生を楽しめるか、に尽きます。
それに僕は、頑張っていないですよ。
頑張っていると、疲れて、それで終わり。
書きたくて、書いているだけです。
だからMichiさんも気分に任せてください。
もちろん、Michiさんの日記は楽しみだし、コメントは死ぬほど嬉しいですが、リアクションの「いいね」でも十分に嬉しいです。
しつこくて、すみません。
コメントにムリしないでください。
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Zhenさんへ (Michi)
2020-12-19 13:43:37
優しい言葉を、ありがとうございます~お言葉に甘えて、無理しません。っていうか、無理できない性格で・・・

生産性は、自分でももう少し上げたいので(やりたいこと・やるべきことが色々あるのに全然出来てない)、それなりにがんばろうと思います~

Zhenさんの旅行記も楽しみにしてます~
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